スマートフォン版へ

新しい主役たちの時

  • 2016年12月29日(木) 12時00分


一頭、一頭が語りかけてくるもの


 東の空が濃い紫から水色に変わると、葉を落とした樹々の間から光が数条サッと流れてくる。身が引きしまる寒気のなか、リンとした朝を迎える。新しい年を迎えるとは、こんな気分になるのに等しい。凍るような大地に足をふまえて、祈るような顔、一条の光がからだを真紅に染めると思わず身ぶるいし、こぶしを固くにぎりしめる。

 夜明けの空には、未来が見えるのではないか。いやそうではなく、人の心を映す透明の幕が張られているのか。賢い馬がそこで待っていたら、訊(たず)ねてみたい。馬に人の言葉が通じないのは分かっているが、その眼で語る馬の心が理解できないのが寂しい。寒気の中に立つ寒立馬の心は、実は自分の心より遥かに豊かそうに思えてならない。レースで見る馬は、ほんのわずかなものでしかない。本当は、もっと知っておくすべを持つべきなのだろう。眼で語り、そのからだで話す相手を、どれだけ受けとめているか。何か心に期するものがわいてくる。腕を組み顔をあげると、思い直した心の中に新しい知恵が。暗雲に一すじの陽がさしこんで、一陽来復、禍(わざわい)転じて福をなすのだ。春を迎える力強い再出発への道がひらけてくると思えるのだ。

 有馬記念で世代交代を演じたサトノダイヤモンド。これに続く新しい波が起こるとき、どれだけ、その波にのっていけるか。もっと知っておくすべを持っているかどうかにかかる。これは、ひとつのチャンスととらえられる。この一年、明らかに進化してみせたモーリスがターフを去ったいま、確実に新しい主役たちの時がくる。その一頭、一頭が語りかけてくるものを、どれだけ受けとめられるか。それは、自分なりの知るすべを持つことから始まる。明けて、新しくクラシック戦線に名を連ねる若駒たちの躍動する姿を見るのも楽しい。頭で知ることも大事だが、やはり、身をもって知ることが何よりも大事で、その得難い体得の機会を大切にしたい。それには、どれだけ馬たちと対面するかだ。自分に語ってくれるものを自分の宝物として、この胸に抱いていきたい。

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

すでにお気に入りに登録しています。

登録済

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング