フェアリーSの不名誉な歴史に終止符を打つくらいの活躍を
外の15番枠が嫌われたことも重なり10番人気にとどまった
ライジングリーズン(父ブラックタイド)が、中団の外から鋭く伸びて快勝。3戦【2-0-0-1】となった。
これで1月の中山に移った2009年からのフェアリーSは、各年の馬券に関係した一番人気薄の馬を並べると、「10、11、7、14、10、10、11、10、10」番人気の伏兵が快走したことになった。まるで10(11)番人気馬のためのレースである。
桜花賞につづく路線のマイル重賞ではあっても、トップクラスの期待を受ける馬が出走した12月の「阪神JF」からわずか1ヶ月後。まして、劣勢のつづく関東所属馬が中心のレースとあって、桜花賞との結びつきは希薄なことで知られる。
2009年のフェアリーSを勝ったジェルミナル(父アグネスタキオン)が、ブエナビスタ、レッドデザイアの3着したのがただ1回の桜花賞との関連(オークスも3着)であるから、今年の勝ち馬ライジングリーズンも、2着
アエロリット(父クロフネ)ともに評価は上がりにくい。ましてそのジェルミナルは、関西の藤原英昭厩舎の所属馬で、阪神JFは2番人気で小差6着馬。このフェアリーSでは1番人気の支持だった。
だがしかし、勝ったライジングリーズンは2歳時より12キロも馬体重が増えて484キロ。長めから連続して快調教をこなし、急激に良くなっていた。15番枠から終始外を回って1分34秒7(自身の中身は59秒3-上がり35秒4)の中身も悪くない。良馬場とはいえ、雨が降り出し滑る馬場を苦にした馬がいた中での1分34秒7の勝ち時計は、この9年間で3位タイだが、現在の芝コンディションを考慮すると従来の1分34秒台前半に相当するはずである。
父はキタサンブラックを輩出し一気に評価の上がったディープインパクトの全兄ブラックタイド(父サンデーサイレンス)。さかのぼるファミリーは日本を代表する名門アストニシメント系であり、母ジョウノファミリー(父キングカメハメハ)の半兄には通算15勝(交流ダートG1を7勝)のブルーコンコルド(父フサイチコンコルド)がいる。4代母ヤマユリの半姉には1961年のオークス1着、桜花賞2着、日本ダービー3着のチトセホープ(父ライジングフレーム)が登場し、その半姉のエドヒメ(父トサミドリ)は、目黒記念1着、1958年のオークス2着、天皇賞・秋3着など。さらにその半姉ヨドサクラ(父クモハタ)は、1957年のオークス2着、菊花賞3着など。伝統のクラシックファミリーである。
だいぶ古い牝系ではないか、などと考えてはいけない。急に出現するファミリーなどありえず、牝系はみんな古典的である。ライジングリーズンの母はキングカメハメハ産駒。祖母の父はブライアンズタイム。そして父はブラックタイド。実際は、現代の最先端をいく組み合わせである。命名通り、牝系の底力があってこその上昇だろう。そろそろフェアリーSの不名誉な歴史に終止符を打つくらいの活躍を期待したい。
1番人気で2着にとどまったアエロリットは、能力アップにつながりようのないスローペースのレースが多い中、ベテラン江田照男騎手の
ツヅク(父マツリダゴッホ)の演出した厳しいペース「前半34秒7-46秒1-(1000m通過58秒0)-後半48秒6-36秒7」=1分34秒7に、内枠から2番手追走は、ちょっとつらい形だった。
前回のサフラン賞2着(中山1600m1分34秒9)から、今回は3ヶ月ぶり。陣営も認めるように、まだビシッと追えないところがあってプラス10キロの492の馬体重は、ちょっと余裕残りに映った。2番手から抜け出そうとしたが反応は鈍く、一旦は後続に飲みこまれそうになりながら、もう一回踏ん張って「58秒4-36秒4」=1分34秒8なら悪くない。
レース全体の前後半の半マイルに「2秒5」もの差が生じた差し馬向きの流れになったため、7番人気の
モリトシラユリ(父クロフネ)、11番人気の
ジャストザマリン(父ディープブリランテ)、12番人気の
アルミューテン(父スクリーンヒーロー)などに、「クビ、ハナ、クビ」差に迫られた印象は悪いが、休み明けで、1000m通過58秒4のペースで先行しながら2着なら中身は上々。桜花賞とはまったく無縁だったフェアリーS連対馬の中では、悲観する内容ではないとしたい。ライジングリーズンも、アエロリットも、あと3ヶ月、成長しつつパンチアップするとき桜花賞展望の上位10傑の7〜8番手に入って不思議ない。
人気薄で上位入線を果たしたグループの中では、アルミューテンの1分34秒9(58秒8-36秒1)の5着が、次走「フェアリーS小差5着だから…」と、500万条件で評価されそうな中では中身のある5着か。
2番人気の
キャスパリーグ(父ディープインパクト)は、惜しい2着が3回つづいた後の遠征だった。早めに桜花賞出走可能な賞金の加算を目ざしたが、遠征レースとはいえ、当日輸送なしの中山入厩で6キロ減の430キロは大誤算。表面上は好調キープに映ったが、渋りはじめた馬場を苦にしたうえ、16番枠の不利も重なってしまった。陣営も少々ムリ日程を承知の連戦だっただけに、この凡走は深手。坂下で息が上がって失速した。
3番人気の
コーラルプリンセス(父クロフネ)は、逆に最内の1番枠がもともとダッシュの良くない馬だけに大きな不利となってしまった。16頭立ての最内枠でダッシュつかずでは、そのあと馬群をさばけない。