競馬白書/長岡一也

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人知の及ばぬところにある夢の実現

2017年01月12日(木)12時00分

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初々しい初花ということば


 どことなく初々しさがある初花(はつはな)ということば。古今和歌集の四季折々の歌の中に「谷風に解(と)くる氷のひまごとにうち出(い)づる波や春の初花」というのがある。春というと、今では花の咲き乱れる三月、四月を思い浮かべるが、古今集の世界は旧暦だったから、今でいえば立春のころになる。正月は新春というから、旧暦の春におきかえれば、この歌に早春の透明感がよくとらえられていることがわかる。

 いずれにせよ、春の歌がこうした新春の歌から始まっているということだが、新春競馬といえば、いつも東西の金杯から始まる。まさに新春の風物詩なのだが、いっそう心が浮き立つように感じられるのも、正月だからだ。今年は、ツクバアズマオーとエアスピネルが一番人気に応えて幸先よいスタートを切った。競馬にとっても、多くが支持した馬が勝ったのだから、何よりだったというべきだろう。

 中山金杯は、時折、その先に大きな栄光の道が開けることがある。ここから一年の掉尾を飾る有馬記念の舞台にとどくことがあり、そういう夢を抱ける馬の一頭にツクバアズマオーはなれたということだ。京都金杯はマイル戦だから、勝ったエアスピネルには、クラシックから解放されて明け4歳になったこの一年の目標がはっきり見えてきた。どこに真価を見い出すか、期待する現実が目の前にあるということだ。

 新春競馬を勝つことの意味は、心浮き立つ思いに、この時期だからこそ強くなれるということにあるが、一方で、早春の花がそっとひらきはじめる季節だからこそ、初々しい初花ということばにぴったりなのが、フェアリーSとシンザン記念だ。明け3歳馬だから、まだどう咲くかは未知数。だからこそ、人の予知しにくい結果が待っていた。だが、フェアリーSのライジングリーズンにしろ、シンザン記念を勝ったキョウヘイにしろ、実は、大きな第一歩を踏み出したのだ。人知の及ばぬところにある夢の実現。やがてのどかな陽ざしが差すころにその蕾をふくらませるのだ。今は初々しい初花が、やがて春の主役になれるかもしれない。
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コラムニストプロフィール

長岡一也
長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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