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第51回シンザン記念

  • 2017年01月11日(水) 18時00分


天候に恵まれなかったことが本当に残念

 今年もシンザン記念に行ってきた。5冠馬シンザンの名前を取って夏に浦河町で開催されるシンザンフェスティバル(馬イベント)にて、毎年選出されているミスシンザン(2名)が、このシンザン記念表彰式に臨席しプレゼンターを務めることから、フェスティバルに関わる私たちも同行するようになった。

 真冬のこの時期、北海道の空港は天候悪化による欠航のリスクを抱えており、近年は金曜日に出発するのが通例になった。今年も同様に、浦河を出発したのは6日朝である。

シンザン銅像前でのミスシンザン

シンザン銅像前でのミスシンザン

 今回、京都競馬場に行くことになったミスシンザンは鎌田美緒さん(21歳)と村下由香理さん(23歳)の2人。昨春のフェスティバルにて前任者よりバトンを受け継ぎ、今年夏まで大役を務める。ともに地元の銀行に勤務しており、京都競馬場は初めて訪れる。

取材を受けるミスシンザン(右:鎌田美緒さん、左:村下由香理さん)

取材を受けるミスシンザン(右:鎌田美緒さん、左:村下由香理さん)

 ミスとしての仕事は土曜日から始まる。午前9時に競馬場入りし、午前中に日刊スポーツ社の取材を受けるのが恒例だ。というのは、シンザン記念に同社が社杯を提供しているからで、正式名は「日刊スポーツ賞シンザン記念」となっている。

 鎌田さんは実家が牧場で(昭和牧場)、姉の結衣さんも2年前にミスシンザンを務めて京都に出張している。姉はかなりの競馬通だったが、美緒さんの方はそれほど競馬には詳しくない様子であった。しかし、取材前に結衣さんからアドバイスをもらい、「ペルシアンナイトが本命。その他では浦河産のメイショウソウビとエテレインミノルを応援します」と答えていた。

 もう一人の村下由香理さんの方は、「競馬場には初めて来ましたが、広々としていますね」と驚いた様子で、「ディープ産駒のアルアインを本命にして、そこから浦河は夏イチゴの生産が日本一なので、7、2、1、5番(なついちご)に流します」と“予想”を披露していた。

 京都入りした金曜日とレース前日の土曜日は、ともに良く晴れて穏やかな天候に恵まれたが、8日日曜日は、本州南岸を低気圧が発達しながら東に進んできたために、あいにくの雨になってしまった。毎年、シンザン記念当日はほとんど晴れか曇りしか記憶がないほど、これまでは天候に恵まれていたが、ついに今年はその幸運も尽きて、朝から降り出した雨は、昼が近づくにしたがって雨脚が強くなり、午後には北風も強まって横なぐりの冷たい雨になった。

 馬場もそれにつれてどんどん悪化し、午後3時45分のシンザン記念発走の頃には完全な重馬場に変わった。各馬が悪化した馬場状態に難渋する中、このレースを制したのはリーチザクラウン産駒のキョウヘイ。8番人気ながら高倉騎手が後方最内を進み、出走馬の中でただ1頭36秒台の末脚を爆発させて、1分37秒6のタイムでゴールした。

レースはキョウヘイが末脚を爆発させて優勝

レースはキョウヘイが末脚を爆発させて優勝

 2着はタイセイスターリー(武豊)、3着は1番人気のペルシアンナイト(M.デムーロ)であった。例年1分34秒台あたりで決着することが多いことを考えると、いかに今年の馬場状態が悪化していたかが分かる。

雨の中の表彰式

雨の中の表彰式

 雨はずっと降り続き、ミスシンザンがプレゼンターを務める表彰式も、雨の中、傘をさしてもらって行なわれた。今年は、ことシンザン記念に関しては、天候に恵まれなかったことが本当に残念に思う。気温も低く、寒かったので、いつもの年ならばウイナーズサークルの近くは人垣ができるのだが、今年は閑散としていた印象だ。

シンザン記念口取り

シンザン記念口取り

 さて、翌9日月曜日。ミスシンザンにとってこの日だけが自由になれる日である。ここ数年は、舞妓体験をすることが多い。前日とはうって変り、幸いにも天候が回復してくれたので、予定通り舞妓に“変身”して京都の街を散策できたのは幸いであった。

ミスシンザンの舞妓体験(右:村下由香理さん、左:鎌田美緒さん)

ミスシンザンの舞妓体験(右:村下由香理さん、左:鎌田美緒さん)

 何かと批判の的になることもあるミスコンだが、京都競馬場で行われるシンザン記念に、浦河から毎年ミスシンザンを派遣するのが恒例になっており、それを楽しみにしておられる方々もいるだろう。私も何人ものカメラマンたちから「今年はどんな子たちですか?」と必ず問われる。それだけ彼らもまた興味を持ってくれているのであろう。

 さて、最後に優勝したキョウヘイについて。周知の通り、この馬はオーナー瀬谷隆雄氏によれば、若くして亡くなった知人の子息の名前がつけられたとのことで、ストーリー性のある馬だ。このまま無事に春のGI戦線に向けて活躍してくれると嬉しい。やはり、競馬にはこうした“物語”が必要だなと改めて感じた。ファンもまたそうした思い入れのあるヒーローの出現を待ち望んでいると思われるからだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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