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コマノインパルスはクラシックに間違いなく合っている/京成杯

  • 2017年01月16日(月) 19時00分


◆好走馬たちに先着しているレイデオロの評価をさらに確たるものに

 1番人気に支持されたコマノインパルス(父バゴ、母コマノアクラ)が後方から大外を回って快勝し、見事に初重賞制覇。3戦して【2-1-0-0】となった。

 全体に時計のかかるタフなコンディションのため、勝ちタイムの2分02秒5「レースの前後半バランス61秒6-60秒9」も、勝ち馬の上がり35秒6も目立ったものではないが、3ヶ月後の皐月賞と同じ中山の2000mを人気に応えての快勝は、春につながる好内容だった。

 この世代の牡馬陣の勢力図はまだ形作られる途中だが、勝ち馬コマノインパルスが0秒2差の2着だった同じ中山2000mの「葉牡丹賞」を快勝したのがレイデオロ(父キングカメハメハ)。そこで0秒8差の3着だったのが今回5着のアサギリジョー(父ジャングルポケット)。

 また、この京成杯で0秒1差の3着に押し上げてきたのはマイネルスフェーン(父ステイゴールド)だが、このマイネルスフェーンは同じ中山2000mのGII「ホープフルS」で、レイデオロの0秒2差の2着馬である。

 3戦3勝のレイデオロは、同じ藤沢和雄厩舎の5戦3勝馬サトノアレスとともに、現在のところ3歳牡馬のランキング最上位グループに位置するので、コマノインパルス、マイネルスフェーン、アサギリジョーの好走はレイデオロの評価をさらに確たるものにすると同時に、自分たちも快走した「葉牡丹賞→ホープフルS」は路線の中でかなりのレベルを示していると考えることが可能になった。

 コマノインパルスの父バゴ(その父ナシュワンは、ブラッシンググルーム直仔)は、2004年の凱旋門賞、パリ大賞などを制した中距離タイプだったが、種牡馬として日本に輸入されて輩出した産駒には、総じてという概念がまったく当てはまらない。いきなり2010年の桜花賞2着のオウケンサクラ、菊花賞馬ビッグウィークというクラシック好走馬を送ったあと、短距離でなければスピードが生きないクリスマスを出したかと思えば、ダートで真価を発揮した牝馬トロワボヌール、アクティビューティの父となるなど、ランキング上位に入る種牡馬ではないが、とにかくさまざまなタイプを送り、忘れたころに侮りがたいオープン馬の父として登場するのである。

 コマノインパルスの3代母は、1991年のエリザベス女王杯を1番人気で快勝したリンデンリリー(父ミルジョージ、鞍上は岡潤一郎騎手)であり、そこにリアルシャダイを配して生まれたのが祖母リンデンジョオー。牝系の血統背景は短距離のスピード系ではない。適性の難しいバゴの産駒だが、コマノインパルスはクラシックの距離に間違いなく合っている。

 2着に突っ込んだ関西のガンサリュート(父ダノンシャンティ)は、後方からコマノインパルスとともに外に回ったのが大正解。芝状態からして、伸びないインで馬群に包まれて力を発揮できない馬がいた中、コースロスは承知で思い切りよく大外に出した好騎乗だった。クロフネの牝馬にダノンシャンティの配合はマイラータイプを連想させるが、短距離に出走させることが多い安田隆行厩舎の所属馬ながらずっと1800m以上に出走し【1-3-0-1】。今回の初の2000mも期待以上に合っていた。上がり35秒5はメンバー中トップである。名牝系出身で、祖母ブレッシング(父マルゼンスキー)は、3冠牝馬スティルインラブ(父サンデーサイレンス)の半姉にあたる。

 この日、最終レース終了後にモーリスの引退式があった。モーリスの父スクリーンヒーローは、有馬記念を制したゴールドアクターの父としても知られる。2015年の有馬記念を制したゴールドアクターの母の父は外国産馬キョウワアリシバ(父アリシーバ)。ほとんど無名に近い種牡馬で驚かれたが、「ブレッシング、スティルインラブ姉妹」の母はブラダマンテ(父ロベルト)。そのブラダマンテの半弟になるのが、キョウワアリシバである。7番人気で突っ込んできたこの時点では無名のガンサリュート。どうやら意外性に満ちていそうである。

 マイネルスフェーンは内枠のため、道中だいぶ苦しい位置取りになり、直線に向いてからはうまく追っての味を生かせたが、少し脚を余した印象もある。最初に示したレイデオロとの比較からしても、勝ったコマノインパルスとは能力互角に近いだろう。

 サーベラージュ(父ヴィクトワールピサ)、ポポカテペトル(父ディープインパクト)など内枠の人気上位馬は、直線挟まれる形で大きな不利(ロス)があったので、今回のレースは基準外だろう。キャリアの浅い馬の多頭数とあって、馬群のバラけない流れでのインは最初から不利だった。ただ、ポポカテペトルは上のマウントロブソンと同じようにエンジンが切り替わらないうちに寄られているから、これからも待つと危険なタイプか。サーベラージュはゴチャつく馬群の中で最初に下がってしまった。キャリアがあれば別だろうが、外に出すこともできず、こういうレースでイン狙いに出ざるを得ない状況になってしまったのだから、仕方がない。

 牝馬のニシノアモーレ(父コンデュイット)に注目したが、こちらは逆にずっと外を回らざるをえなかった。完敗だが、最後は上がり35秒9で坂上から差を詰めて勝ち馬と0秒6差だけ。ここでも柔らかいフットワークは目立っていたから、東京に移って再注目したい。

 ベストリゾート(父ハービンジャー)は、先行馬向きの流れに乗ったが、少々行きたがったのと、今回はやけに身体が硬く映ったのが敗因か。イブキ(父ルーラーシップ)は、素質は衆目一致だが、まだ若いうえに不器用なので、前回の1600mも適クラではなく、今回の中山コースもリズムに合わない印象があった。かなり注文のつく馬である。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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