◆新しい勢力の大攻勢が始まっている 8ヶ月半の休養明けだった5歳
タンタアレグリア(父ゼンノロブロイ)が、早め早めの追走から巧みにインにもぐり込み、初重賞制覇を達成した。4歳時の昨2016年は、天皇賞・春の小差4着などわずか3戦しかしていないので、5歳になったとはいえ、古馬の重賞路線では新しい勢力に相当する。
年が明けての古馬重賞路線は、初日の「京都金杯」が4歳エアスピネル=4歳ブラックスピネルで決まったのを出発に、「日経新春杯」も同じく4歳ミッキーロケット=4歳シャケトラのワンツー決着。
ダートの「東海S」を勝ったのは4歳グレンツェント(2着モルトベーネも5歳馬の中では新星に相当する)。そしてこの「AJCC」では、キャリアからすると4歳馬といってもいいくらいのタンタアレグリアが快勝し、わずか2頭しか出走していなかった4歳馬
ゼーヴィントと、
ミライヘノツバサが、2着、3着にがんばった。東海Sで4歳馬が勝ったのは2010年以来であり、AJCCで4歳馬が連対したのは、この10年間では2例目にすぎない。
年末の「有馬記念」で、当時3歳のサトノダイヤモンドが勝って以降、現4歳世代の大攻勢が始まっている。もともと3歳クラシックシーズンから非常にレベルの高いとされてきた世代(2013年生まれ)ではあるが、これが古馬重賞路線の充実につながると、馬券発売の行われる海外レースの大きな興味にまでつながりそうである(昨年は、ラニ、マカヒキがいたが3歳馬の海外遠征はどうしても限られる)。
勝ったタンタアレグリアの父ゼンノロブロイ(その父サンデーサイレンス)は、2004年の秋の古馬3冠「天皇賞・秋→ジャパンC→有馬記念」制覇を達成した素晴らしい競走成績を誇るサンデーサイレンスの後継種牡馬。当然、大変な期待のもとに最初のうちは200頭を上回る種付け頭数を記録しながら、ここまでGIを勝ったのは、初期の産駒サンテミリオン(2010年のオークス)と、大井のジャパンダートダービー(GI/Jpn1)のマグニフィカだけ。すでに社台スタリオンSから移動しているが、タンタアレグリアは、本格化前の昨年の天皇賞・春でも勝ったキタサンブラックと0秒3差だった。ひと回り身体の大きくなった今季は昨年以上の好走が期待できそうに思える。大跳びで、明らかに京都や東京向きのはずである。
このAJCCを2番人気で13着に沈んだのが、ゼンノロブロイ産駒の
リアファルだった。このあたりが種牡馬ゼンノロブロイの難しいところかもしれない。連続して快走する馬が少ないようなところがある。リアファルは3歳時の2015年の有馬記念でも16着(3番人気)に凡走している。今回は、中間必ずしも順調ではなかった(?)うえでの長期休養明け2戦目だったので、体調の難しさもあるが、芝で2戦大敗の中山は合わないのかもしれない。今回は能力を発揮していないのは明らかであり、評価の上がったタンタアレグリアとともに、同じ5歳の期待馬リアファルには適クラを探して父ゼンノロブロイの評価を取り戻すような活躍を期待したい。
この時期には珍しい2分11秒9は、最近10年間では最速。レース全体のバランスは「59秒6-(12秒3)-60秒0」の厳しい流れだった。2着のゼーヴィント(父ディープインパクト)は、果敢に先行する集団から一歩引くように中位の絶好位。3着ミライヘノツバサ(父ドリームジャーニー)は強気に3番手追走。2頭の4歳馬は「2-3着」を分け合うことになったが、これは挑戦者だったミライヘノツバサと、さらに脚質に幅を増そうと少し控えることに成功したゼーヴィントの道中の位置取りの差であり、2頭の現在の能力は互角と思えた。ゼーヴィントは中距離路線を歩むと思われるが、ミライヘノツバサは流れが緩めば長丁場もこなせるだろう。
直線に向いて、多くの馬が交錯するようなシーンがあり、5歳牝馬
シングウィズジョイ(父マンハッタンカフェ)はつまずいて転倒、骨折し安楽死となってしまった。前走は勝ったにも等しいエリザベス女王杯2着馬。立ち上がれないシングウィズジョイはかわいそうだった。
接触はなくても多くの馬が事故を察知した目に見えない不利もあり、着順は悪くても中身のあった馬はいるだろう。下位馬も簡単には評価を下げないでおきたい。
ナスノセイカン(父ハーツクライ)は直後で落馬があったが、力強く伸びて6着。ゴチャついた中山でも結果を出せたから、オープンで十分に通用する。
期待した
ショウナンバッハは失速して8着止まりだが、ブリンカーで強気に動いて出たわりに大きく沈んだわけでもなく、適クラでもう一回狙いたい。5番人気で4着の
ルミナスウォリアーは勝負どころでちょっと外を回るロスが痛かった。
ワンアンドオンリーは置かれる形が誤算だったか。直線はインから最後まで伸びていたが、大きく変わってきたともいいにくい。