第二のストーリー 〜あの馬はいま〜/佐々木祥恵

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武幸四郎騎手とのコンビで京成杯制覇 ローマンエンパイア17年の生涯

2017年02月07日(火)18時01分

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ダイタクバートラムやポートブライアンズと仲良しのセイコーライコウ


 2014年のアイビスサマーダッシュ(GIII)に優勝したセイコーライコウが、およそ7年に渡る競走生活にピリオドを打ち、ホーストラスト北海道にやって来たのは、昨年の7月31日だった。

 到着したその日には、6月にホーストラストに来たばかりで向かいの馬房にいたローマンエンパイアと鼻づらを合わせ、興奮することなく大人しく挨拶をしていて、新入り同士、交流をはかっていた。

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▲昨年7月に入厩した時のセイコーライコウ(提供:ホーストラスト北海道)


 ただ当時取材した時に「慣れてくると本来の性格が出てくるので、(最初の)印象が変わるかもしれないですね」という、ホーストラスト北海道の酒井政明さんの言葉が常に頭のどこかにあり、セイコーライコウのその後が気になって仕方なく、今回の取材と相成った。

 セイコーライコウは、2007年3月9日に、父クロフネ、母ファインセイコーの間に、北海道日高郡の明治牧場で生まれた。2009年7月に美浦の鈴木康弘厩舎からデビューし、3戦目で未勝利を勝ち上がった。翌年7月の3歳500万下で2勝目を、12月には1000万下のハッピーエンドPで3勝目を挙げると、年明けの1600万下のサンライズSでも優勝してオープン入りとなった。

 2連勝の勢いのまま臨んだシルクロードS(GIII)では、ジョーカプチーノから0秒3差の4着と重賞でも通用する力があることを示した。だがその後2戦したのちに、脚部不安のために休養に入る。

 およそ2年1か月振りに、2013年6月のテレビユー福島賞(1600万下・6着)で復帰してからは、順調にレースに出走し続け、2014年4月の船橋S(1600万下)に勝って再びオープン入りを果たすと、新潟の千直のオープン特別の韋駄天Sにも優勝。夏の新潟の名物レース、千直のアイビスSDでは1番人気に応えて重賞勝ちを収めた。

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▲2014年のアイビスSDで重賞初制覇(撮影:下野雄規)


 2015年2月一杯で鈴木康弘調教師が定年のため、セイコーライコウは新規開業の竹内正洋厩舎へと転厩となる。アイビスSD以来、勝ち星は挙げられなかったが、GIのスプリンターズS(鈴木康弘厩舎時代・7着)をはじめ、重賞やオープン特別では上位に名を連ね、短距離路線で長く活躍した。

 9歳まで現役を続け、昨年6月19日の函館SS(GIII・14着)を最後に、ターフに別れを告げた。通算成績は37戦7勝だった。

 オーナーと竹内調教師が相談の上、第二の馬生を過ごす場所を決め、竹内師自らホーストラスト北海道に連絡を取ったと聞く。開業してすぐにやってきたオープン馬のセイコーライコウは、竹内師にとっても思い出深い1頭となったようで「重賞の舞台に立つことができてありがたかったです」と、当時の取材で話をしていた。

 北海道に移動する前に美浦近郊の牧場で去勢手術を受けた同馬は、状態が落ち着いた7月30日に茨城県を出発。翌31日午前5時頃に無事ホーストラスト北海道に到着した。

「ライコウより少し早く来たローマンエンパイアと仲が良いのかと思っていたら、基本的にはあまり仲良くなかったんですよね(笑)。ローマンがライコウの後について歩いていたのですけど、ライコウはそれがイヤだったみたいで怒ったりしていました(笑)。ライコウには仲良しの馬ができたんですよね。ポートブライアンズという馬なのですけど、ライコウがポートについて行っている感じです。

 ポートは少し痩せているので、ほかの馬より1食多くあげていて、ポート1頭だけ馬房に入る時間帯があるんですよね。その時はライコウが鳴いて寂しがっています。ポートもそれに応えて返事をしていますし、それを聞いたライコウがまた鳴いたりしていますね。ポートも1頭でいるタイプだったので、仲良しができて良かったなと思います。ポートの方がライコウよりだいぶ年齢が上なのですけど、多分気が合ったのでしょうね」

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▲額のハート型の星がお揃い、ポートブライアンズ(左)とセイコーライコウ(右) (提供:ホーストラスト北海道)


 写真にもある通り、形は少し違うがハート型の流星を持つ2頭が、引き合ったというのもまた面白い。

「ライコウは時々気分転換なのか、ダイタクバートラムのところにも寄っていくんです。バートラムは基本1頭でいることが多い馬なので、ライコウはそばに行っては怒られていますけど(笑)。見ているとポートとバートラムの間を行ったり来たりしていますね」

 以前竹内師は「年齢を重ねていましたし、自分の世界を持った馬でした。俺に逆らうなみたいなところもあって、先生みたいな存在でもありました」と現役時代のライコウを評していたが、ホーストラスト北海道においても、ライコウとほぼ同世代の馬たちが放牧地の雪の中をはしゃいで走り回るのをうるさいと一喝して、自分より年上の馬たちと一緒にいるような大人びた一面を見せている。

ローマンエンパイア、最後の産駒が誕生予定


 一方、セイコーライコウより1か月ほど早い6月27日にホーストラスト北海道の一員となったローマンエンパイアは、種牡馬を引退して移動してきただけあって、最初は怖い馬だったという。

「こちらに到着した時に、馬運車から飛び出して来る感じでした。しばらくは馬房から出す時も飛び出してくるので怖かったんですよ。それがある時を境にやらなくなりました。これは他の馬にもあることなのですが、馬自身が納得をするのでしょうかね、ある時期を境にスッと大人しくなることがあるんですよね。ローマンはかじる馬だと聞いていて、最初はやはりかじっていましたけど、それもなくなりましたしね」(酒井さん)

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▲昨年6月に入厩したローマンエンパイア、最初は怖い馬だったという(提供:ホーストラスト北海道)


「ローマンは年齢のわりには元気一杯で、いろいろなものに興味もあって、それが高じてエイシンキャメロンに怒られたりもしていました(笑)」(酒井さん)

 仲間たちと一緒に放牧を謳歌し、順調な第三の馬生を送っていたかに思えた。ところが10月29日、ローマンエンパイアに異変が起きる。疝痛を起こしたのだ。獣医師の診察を受け、痛み止めを打った。何とか助けようといろいろと手を尽くしたが、翌10月30日の朝、天に召された。享年17歳。検体の結果、死因は何らかの要因により胃酸過多になり、自分の胃を溶かしてしまったことによる胃の破裂だった。

 ローマンエンパイアといえば、2002年の京成杯での同着で勝利や、調教師試験に合格し、ジョッキー引退を控えている武幸四郎騎手とのコンビが印象深い。

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▲ヤマニンセラフィム(内)と同着で優勝した2002年の京成杯(撮影:下野雄規)


 重賞勝ちは京成杯だけだったが、出遅れながらも向こう正面で先頭に立って逃げ切った形の新馬戦や、道中殿から進み、4コーナー手前からスパートして2着馬に5馬身差をつけて勝った2戦目のさざんか賞など、個性的なレース振りで観るものを魅了し、たくさんのファンを持つ馬でもあった。

 種牡馬生活では種付け頭数が決して多いとは言えなかったが、種牡馬としてのラストイヤーとなった昨年はターフマジョリックに種付けをしており、今年最後の産駒の誕生が予定されている。

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▲ローマンエンパイア、スポンサーさんからもらった無口をつけて(提供:ホーストラスト北海道)


 ローマンエンパイアの血は、細々ながらも子供に受け継がれようとしている。亡き父を彷彿とさせる個性的な走りを披露してくれることを期待したい。

 そしてセイコーライコウは、四季折々、自然豊かな北海道の地で、ポートブライアンズやダイタクバートラムらお気に入りの仲間とともに、ライコウらしい第二の馬生を謳歌していくことだろう。

■放牧中のセイコーライコウとローマンエンパイア(提供:ホーストラスト北海道)


※セイコーライコウは、見学可。スポンサーも募集中です。

ホーストラスト北海道
〒045-0024 北海道岩内郡岩内町字野束463番地の1
TEL : 0135-62-3686
FAX : 0135-62-3684
E-mail : umauma-p.c@hotmail.co.jp

http://www.horse-trust.jp/hokkaido.html

ホーストラスト北海道 Facebook
https://www.facebook.com/horsetrusthokkaido

3月〜4月、及び8月10日〜20日以外、見学可。

見学の際は必ず事前に連絡をお願いします。
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コラムニストプロフィール

佐々木祥恵
佐々木祥恵
北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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