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種牡馬展示会ピーク

  • 2017年02月15日(水) 18時00分
レックススタッド展示会全景

レックススタッド展示会全景


競争が激しい種牡馬の世界

 先週7日の社台スタリオン展示会を皮切りに、週の変わった13日(月)より日高でも日替わりで種牡馬展示会が開催されている。

 まず13日は、新ひだか町静内地区の3場が時間をずらしての開催であった。午前9時よりJBBA静内種馬場、そして10時にアロースタッド、11時半にレックススタッドという順である。この3場合同開催は、関係者にとってもありがたい話で、慌ただしいが一度にまとめて見学できるメリットがある。

 まずJBBA静内種馬場。今年は2頭の新種牡馬が導入されており、真っ先にお披露目された。以前JBBAは、前年度から繋養されている古株の種牡馬たちをまず引き出し、新種牡馬を最後に展示するのが通例であったが、3場を時間差で巡回しなければならない関係者に配慮して、今は一番先に登場させるようになった。

JBBA静内種馬場展示会全景

JBBA静内種馬場展示会全景

 クリエイターII(父タピット、4歳)とマクフィ(父ドバウィ、10歳)は、それぞれ200万円、220万円の種付け料となっており、受胎確認後の支払いではなく、前払いで不受胎時もしくは流産や死産、産駒が生後30日以内に死亡した時にその種付け料を返還するという条件だ。

クリエイターII

クリエイターII

マクフィ

マクフィ

 一部の超人気種牡馬を除いては受胎確認後の支払いか、翌年産駒誕生後の支払いが主流となっている今の生産界にあって、これは生産者にとってはかなり厳しい条件だが、それでも「シーズン途中でも配合申し込みに応じる」とアナウンスされていたのは、時代に合わせる方針に変化してきているということか。かつてJBBAの種牡馬は前年秋に配合申し込みを受け付け、書類審査を経て配合する牝馬を“選定”していたほどだから。

 続いてアロースタッドに人々が移動した。アロースタッドでは、今年5頭の新種牡馬がお披露目された。クリーンエコロジー(父キングカメハメハ)、ダブルスター(父シニスターミニスター)、トーホウジャッカル(父スペシャルウィーク)、ペルーサ(父ゼンノロブロイ)、リヤンドファミユ(父ステイゴールド)の5頭である。

トーホウジャッカル

トーホウジャッカル

ペルーサ

ペルーサ

 当初アロースタッドでは、新種牡馬の管理調教師が展示に際して一言ご挨拶する予定も組まれていたが、この13日は小倉競馬の代替開催と重なってしまったことから、北海道入りできず、急きょメッセージだけ代読される一幕もあった。

 アロースタッドに繋養されている種牡馬はこの5頭を含め全30頭。先のJBBAには9頭が繋養されているのでここまでで計39頭になる。

 この日、最後に展示会を開催したのは、アロースタッドから南に500mほど移動したレックススタッド。ここには、周知の通り、今や日高にいる種牡馬の中では文字通りの“大将格”とも言うべきスクリーンヒーローが繋養されている。モーリスを筆頭に産駒の活躍が目覚ましいことから、人気が一気に高まり、今年はついに種付け料が700万円にまで高騰した。殺到する配合申し込みを捌くには、こうするより他なかったのだろうとは思うが、700万円ともなると中小牧場ではなかなか手を出せない価格ではある。

“大将格”スクリーンヒーロー

日高の“大将格”スクリーンヒーロー

 そして、レックスには、今年新たに3頭が種牡馬としてお披露目された。フランス、香港でG1レースを制したエイシンヒカリ(父ディープインパクト)、そしてハクサンムーン(父アドマイヤムーン)、ゴールスキー(父ネオユニヴァース)である。

エイシンヒカリ

エイシンヒカリ

 この3頭を含めて、レックススタッドには22頭がスタンバイしており、静内地区3場で合わせて61頭の種牡馬がこの日、展示されたことになる。

 一部を除くと、どの種牡馬にとっても、いかに配合牝馬を確保するかが大きな課題で、そのために、各陣営とも様々な知恵を絞る。アロースタッドの新種牡馬リヤンドファミユは、初年度産駒が1歳秋まで売れ残っていた場合には、責任を持ってどんな馬でも1頭100万円で買い取ります、とアナウンスされていたし、生まれた産駒は全馬必ず牧場に見に行きます、と予告するオーナーもいた。

 2016年度に、我が国で繋養された種牡馬は232頭。うち北海道に214頭、さらに日高には178頭が繋養されていたとのデータがある。一方、種付けした繁殖牝馬は、全国で9490頭。うち北海道が9275頭。日高では7475頭である。

 先週、展示会を開催した社台スタリオンが、そのうち4300頭以上の繁殖牝馬を集めているので、残り5000頭余を他の種牡馬で分け合う計算になる。この数字を見ても、いかに種牡馬の世界の競争が激しいかが分かる。とりわけ、初年度にできるだけ多くの牝馬を集め、産駒の絶対数を確保し、競馬で成績を上げられなければ、種牡馬としての評価が上がらない。

 来週、もう一度種牡馬展示会について触れる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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