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フェアリーSで初重賞制覇!3歳世代目白押しの奥村武厩舎を直撃

  • 2017年02月21日(火) 18時00分
奥村武師1

3歳世代に注目馬目白押しの奥村武調教師を直撃!




苦労もありますけど本当に楽しいです


赤見:今年の3歳世代は注目馬目白押しですが、まずはフェアリーSを勝ったライジングリーズンのお話から聞かせて下さい。馬にとっても厩舎にとっても初の重賞制覇、おめでとうございます!

奥村:ありがとうございます。すごくいい馬たちを預けていただいたので、本当はもっと早くに結果を出さなければいけなかったんですけど、それでも1つ勝つことができて嬉しいですし、ホッとしました。

ライジングリーズン

フェアリーSを制し厩舎に初重賞制覇をもたらしたライジングリーズン(撮影:下野雄規)


赤見:当日は10番人気でしたけれども、自信のほどはいかがだったんでしょうか?

奥村:やれる手ごたえは感じていましたけど、実際勝ち切ってくれた時はびっくりしました!レースの流れもすべて上手くいったし、丸田騎手も馬を信じて強気に乗ってくれました。追い切りでもいい動きだったんですけど、外枠を引いて丸田騎手とは「ついてないな」って話していたんですよ。それでもゲートをポンと出てくれて、いいところを取ってから控えるという形が取れたことが大きかったですね。4コーナーで強気に動いた時には「もしかして?」と思いましたけど、それでも4,5頭外を回っていましたから、どうかなっていう気持ちもあって。そこから勝ち切ってくれて、やっぱり強いなと思いました。

赤見:デビュー前から期待が大きかったと思いますが、ここまでの経緯を教えて下さい。

奥村:この馬は体質が弱かったので、デビューするまで時間がかかってしまったんです。実際のデビューは9月だったんですけど、もともと牧場でも仕上がりが早い組で乗り込んでいて、5月に一度入厩したんですよ。でも暑さで夏負けしてしまって…。もう一度牧場に戻って仕切り直ししたんですけど、デビュー週の追い切りで再び夏負けして…。

 2回も失敗してしまったので、9月の新馬戦に向けても相当慎重に進めていったんです。特に立ち上げは慎重に、軽めの追い切りを2週してみて、「これなら乗り越えられるぞ」と思ってハードに鍛える組と一緒に調教するようになりました。1本2本キツい追い切りが足りないかなという状況で新馬戦でいい勝ち方をしてくれたので、やっぱり力あるなと。

 今はチューリップ賞とアネモネSを両にらみで調整しています。今後の課題というのは速い上がりの勝負に対応できるかというところですね。あとはテンションが上がりやすいところもあるので、今後さらに大きな舞台で結果を出すためにはその辺りの落ち着きも大事になってくると思います。この馬はスピードもあるけどパワーもあるんですよね。近親にブルーコンコルドがいますし、ゆくゆくはダートの可能性も考えていくつもりです。この先が本当に楽しみですね。

赤見:続いては1月7日に寒竹賞を勝ったホウオウパフュームについて伺います。セレクトセールで5千万円を超える高額で落札された馬ですけれども、ここまで期待通りにがんばってくれていますね。

奥村:初めて見た時から「これは!」と思いました。馬格があって体のバランスがいいし、皮膚が薄くて綺麗な馬だなと。血統的にもいいですから、高くなるだろうとは思ったんですけど、小笹芳央オーナーに買っていただいて本当に感謝しています。デビューに関しては、ハーツクライの女馬で体も大きいし、緩いところがあるので、オーナーと相談してゆっくりじっくり育てていこうと考えていました。大目標はオークスで、そこに向けてゆったりとしたローテーションで挑みたいと。ここまで上手く運んでくれて、思い描いた通りに来ています。

 性格は前向きで真面目なんですよ。余計なことはしないし、品があるんですよね。カイバ食いもいいんですけど、一度使うと堪えるみたいで、まだ体力が追いついてきていない状況です。身が入ってきたら相当走れると思うので、それまで鍛えながらも壊さないように慎重に進めます。この後はフローラSからオークスの予定です。

ホウオウパフューム

ホウオウパフュームは「初めて見た時から『これは!』と思いました」(撮影:下野雄規)


赤見:新潟2歳S3着だったイブキはいかがですか?

奥村:この馬もかなり早い段階でうちに来ることが決まったんですけど、初めて見た時にいい馬だと思いました。肉付きがいいし、馬格があって骨量がありそうなのに、それでいて軽い動きをするなと。例えるならゴムまりみたいな感じで。ただ前走の京成杯はちょっと負け過ぎました…。久しぶりでプラス10キロだったんですけど、体は成長分なので想定内。ただ、走るフォームのバランスが若干前にあるように感じたんですよね。そこは久しぶりで体よりも気持ちが前に行っていたのかもしれません。1度使ったことでガス抜きはできましたし、ひょっとしたら距離なのかとか、使いながら修正していきます。

イブキ

イブキは「例えるならゴムまりみたいな感じ」(撮影:下野雄規)


赤見:1月8日の新馬戦を勝ったヴォルタはどうですか?

奥村:ゲートで気難しいところがあって、デビューするのに時間がかかってしまったんです。でもスピードもあるし、いきなり結果を出してくれました。距離はもってマイルかなとは思いますが、芝の部分でのダッシュもよかったので、今週芝を使う予定でいます。

ヴォルタ

ダート1200mの新馬戦を制したヴォルタは、今週芝で出走予定(撮影:下野雄規)


赤見:10月に新潟で新馬戦を勝ったリカビトスはどんな状態ですか?

奥村:今は美浦に戻っていて、3月12日の芝のレースに向けて調整しています。上のコルコバードもそうなんですけど、早い時期からいいっていう感じではないんですよ。前向きでコントロールの利く馬で、調教でもレースでも「待て」ができるんです。距離の融通は利きそうだし、相当な素質の持ち主なので、秋には大きいところにチャレンジしたいですね。今は慎重にゆっくり育てています。

赤見:ショウナンカンプ産駒のショウナンアエラはいかがですか?500万でもすぐ勝てそうなレースぶりでしたけれども。

奥村:前走のレース後、本当に軽い症状ではあるんですけど膝を骨折してしまったんです。まだ体の成長はこれからの馬なので、この休みを有効に使って、治療しながら成長を待ちたいですね。まだき甲も抜けていない状態なんですけど、それでこれだけ走るので、先々が本当に楽しみです。

赤見:こうして挙げていくとものすごいラインナップですね。

奥村:本当にオーナーの方々のお陰です。それに、師匠の国枝栄調教師の後光がかなりあります。国枝先生には感謝してもし切れません。調教師として4年目になりますけど、自分で自分の点数をつけたら0点だと思っています。まだまだ結果を出し切れていない馬もたくさんいて、アパパネの下(シーソルティキッス)やローレルゲレイロの下(キタサンメジャー)も勝てていないですし。これだけいい馬たちを入れていただいて、勝ち鞍も足りないし、重賞での成績もいまいちですから…。

赤見:相変わらずご自身に厳しいですね。重賞を勝って初めてスタートラインに立てたと仰っていましたけれども、その真意は?

奥村:もちろん1頭1頭で見ればそれぞれ目標が違いますし、どこのレースを勝っても嬉しいんですけど、厩舎単位で考えた時に何が達成かといえば、それはGIしかないと思うんですよ。だって普通のスポーツファンはGIくらいしか見ないですからね。そこで活躍して初めて世間に評価されるんじゃないかと思っています。

赤見:では、目標はズバリ?

奥村:GI制覇です!もちろん、簡単だとは思っていませんが、そこを狙えるだけの馬たちを預けていただいているので、結果を出さないといけないと思っています。今厩舎の雰囲気もすごくいいですし、こうやって好きな仕事をさせてもらって、苦労もありますけど本当に楽しいです。しっかり結果を出せるよう、厩舎一丸となってがんばりますので、応援よろしくお願いします。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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