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ここもゴールドアリュール産駒か?ワンミリオンス/エンプレス杯

  • 2017年02月28日(火) 18時01分


JRAのGIホースを撃破したトーセンジョウオー


 3月1日(水)、川崎競馬場で行われる『エンプレス杯(JpnII)』。実力とスタミナが要求される2100mで戦われる牝馬の長距離重賞。今年で63回目を迎える歴史あるレースで、JRA勢も参戦可能となった1995年にはあのホクトベガが18馬身差の圧勝劇を演じ、翌年も連覇。その後もファストフレンド、レマーズガール、ラヴェリータ、ミラクルレジェンドら多くの名牝を輩出しています。2015年2016年を連覇したアムールブリエが引退し、今年は絶対的な存在が不在。どの馬にも魅力がある混戦模様と言っていいでしょう。

 近年ではJRA勢が上位を占めていますが、2005年プルザトリガー、2006年ローレルアンジュ、2007年トーセンジョウオーと地方所属馬が3年連続で勝利したこともあるレース。ここで、豪華メンバーが揃う中、トーセンジョウオーが制した2007年のレースを振り返りましょう。

DGに魅せられて

▲2007年のエンプレス杯優勝時のトーセンジョウオー


 1番人気はフサイチパンドラ。前年2006年に3歳でエリザベス女王杯を制したGIホース。前走はジャパンCでディープインパクトの5着という芝のトップホースが初ダートでの参戦。

 2番人気は2004年の覇者、7歳のレマーズガール。2005年が3着、2006年が2着、この年が4回目の挑戦でしかも引退レース。前年はクイーン賞をはじめ重賞3勝と勢いもあり、注目を集めていました。

 3番人気は前走・TCK女王盃で重賞初制覇を果たしたサウンドザビーチ。トーセンジョウオーは4番人気。他にも2005年のJBCクラシックで3着に健闘した愛知のレイナワルツ、2005年関東オークスを制した川崎のテンセイフジ、400kgそこそこの小柄な馬体で各地の交流競走で活躍していた笠松のクインオブクインも参戦していました。

 JRA在籍時に関東オークス、マリーンC、スパーキングレディーCを制していたトーセンジョウオーは、船橋・川島正行厩舎に移籍して3戦目。鞍上は当時大井所属のリーディングジョッキー・内田博幸騎手。

 レースは、川崎コースを良く知る人馬のコンビで、トーセンジョウオーが逃げてそのまま快勝。1.1/2馬身差の2着が終始2番手で進んだフサイチパンドラ。初ダートでこの成績は立派。追い込んだサウンドザビーチが3着でした。

「ここ2戦(クイーン賞2着、TCK女王盃2着)と比べると一番いい状態だった」と川島調教師(当時)。2100mを走り終えた直後から息が戻り、平然としていた姿を見て「さすが、大物」と感じたことが思い出されます。

 続くマリーンCも快勝し、その後は埼玉新聞杯、2008年のスパーキングレディーCも勝利。2007年と2008年のNARグランプリ最優秀牝馬を受賞。引退後は母となり、ディープインパクトとの娘・トーセンセラヴィは昨年暮れの東京シンデレラマイルを制しました。

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▲東京シンデレラマイルを制したトーセンセラヴィ、ジョウオーの強さは娘に受け継がれた(撮影:武田明彦)


 ここに名前を挙げた馬たちはみな母となり産駒に命を繋いでいます。いずれその子供たちが戦う姿に夢を馳せて牝馬限定重賞を観戦するのもひとつの楽しみ方です。

3連勝で重賞制覇、勢い目覚ましいワンミリオンス


 さあそれでは今年の出走馬たちをご紹介しましょう。

 ワンミリオンスがTCK女王盃でホワイトフーガらを蹴散らし、重賞初制覇を飾ったのは記憶に新しいところ。ダートグレード競走初出走、地方競馬も初めて、1800mも初と初物づくしを克服しての勝利。1000万下、1600万下から3連勝中。

 父は先日急逝したゴールドアリュール。ゴールドドリーム(フェブラリーS)、エピカリス(ヒヤシンスS)、ステップオブダンス(ユングフラウ賞)ら産駒の弔い合戦が続く中、ここでも最有力候補と言っていいでしょう。

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▲TCK女王盃優勝時のワンミリオンス、ゴールドアリュール産駒の快進撃が続くのか(撮影:高橋正和)


 去年のレースでは直線外に持ち出しアムールブリエの2着に迫ったヴィータアレグリア。続くマリーンCで重賞ウイナーの仲間入り。スパーキングレディーC4着、クイーン賞9着とここ2走不振が続いていますが、今回森泰斗騎手と初コンビで巻き返しなるか注目です。

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▲マリーンCで重賞初制覇のヴィータアレグリア、森騎手とのコンビで昨年2着の雪辱を(撮影:高橋正和)


 昨年9月のレディスプレリュードでホワイトフーガを破ったタマノブリュネット。前走・TCK女王盃では5着とワンミリオンスに完敗しましたが、ルメール騎手とのコンビでこちらも巻き返しに期待。

 2歳時から大活躍したタイニーダンサーは中央移籍後3戦目で関東オークスを制覇。その後は古馬との対戦で勝ち切れないレースが続いていますが、成長した姿を見せるには快勝した関東オークスと同じ舞台で争われる今回が最適。

 ブランシェクールはダートグレード競走初挑戦。地方競馬も初。前走・中山の1000万下では直線抜け出して楽勝。TCK女王盃を勝った時のワンミリオンスを彷彿とさせる存在。

 地方勢から注目はリンダリンダ。前走・TCK女王盃ではワンミリオンスの3/4馬身差2着。4コーナーを先頭で回り、直線では内ワンミリオンス、外ホワイトフーガと3頭で手に汗握る大接戦を演じ、上位と力差が無いことを証明しました。2月21日に地方競馬通算2000勝を達成した吉原寛人騎手と再びのコンビで、打倒JRA勢を狙います。

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▲TCK女王盃出走時のリンダリンダ、吉原騎手と再びコンビで打倒JRA勢(撮影:高橋正和)


 伝統のエンプレス杯を制するのはどの馬か。連勝中のワンミリオンスをはじめとする4歳勢が台頭するのか。ヴィータアレグリアが昨年2着の雪辱を果たすのか。2007年のトーセンジョウオー以来となる地方馬による制覇なるか。注目ポイントの多い混戦ムードの一戦。今年のダート牝馬戦線を占う意味でも興味が尽きません。

※次回の更新は3月13日(月)18時。高知で行われる「黒船賞」のコラムをお届けします。



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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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