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引退の武幸四郎騎手・長浜調教師・坪調教師にお話をお聞きしました!

  • 2017年02月28日(火) 18時00分
武幸四郎騎手1

20年間の騎手生活を終え、騎手仲間と共に写真に収まる武幸四郎騎手




武幸騎手「あっという間の20年間、ホンマに幸せ者です」


 中山記念のデムーロ騎手の好位から抜け出す見事な手綱さばき。阪急杯の幸騎手の内を突き抜けた手綱さばきは「凄い!」と身震いしました。

幸英明騎手

トーキングドラムで阪急杯を制した幸英明騎手


 阪急杯は、僕がデビューして初めて乗った重賞。ゴールを目の前にして「勝った!」と思った瞬間に河内騎手のトーワウィナーに差されていました。これが競馬の難しさと面白さだと思い知らされた1戦でした。その時の騎乗馬エイティグローには重賞を取らせることができず2着止まりのオープン馬になってしまい、今でも残念に思っています。今年の阪急杯で2着の古川騎手もアタマ差、悔しい思いをしたなー。次頑張れ!

 春は別れと出会いの季節…阪神競馬場で、3冠トレーナー長浜博之調教師、坪憲章調教師、そして武幸四郎騎手の引退セレモニーが行われました。

 最終レースが終了してからのセレモニーでしたが引退を惜しんでたくさんのファンの方が見守ってくれました。昨年も橋口弘次郎調教師・松田博資調教師・武田博調教師の引退式に参加しましたが、毎年、僕も10年前にここで引退式をしていただいたことを思い出します。細かなことは覚えていませんが、みなさんが「つねちゃん」「常石」と何度も何度も呼んでくれた声が今でも聞こえてきます。

 幸四郎騎手曰く「ここまで無事に来られて引退できることがうれしい」と…そして次のステージが決まっていることが素晴らしいと思います。

***

長浜博之調教師との談話
長浜師2

シャンプーハットのお二人に引退を労われる長浜調教師


常石 長浜先生、“ありがとうございました”。50年ってすごいですね。僕はまだ生まれていませんよ。

長浜 いくつになったんや。確か古川と一緒やな。

常石 はい。ユーイチ・和田たちと同期です。

長浜 あの期の騎手たちは、よう頑張ってるな。常石もよくやってる。これからも頑張ってな。

常石 はい、ありがとうございます。先生はラグビーをやっていたんですか?

長浜 昔の話や。ラグビーも馬も好きやな。

常石 僕もずっとラグビーしていたんですよ。大好きです。馬も好きです。

長浜 そうか、まーがんばれよ。

常石 はい、またゆっくりラグビーと馬の話教えてください。長浜先生はいつもお忙しくされていたので、なかなか取材できなくてとっても残念でした。


 引退後に是非お時間取ってくださいとお願いすると「もう話すことないよ。残務と雑用は残ってるけどなー」と最後まで冗談を言って和ませてくれる先生でした。

***

坪憲章調教師との談話
坪師1

とっても穏やかで研究熱心な坪調教師


常石 杉谷さんはご存知ですか?

 あー、乗馬クラブのか?

常石 はい、僕が今乗馬を教えていただいています。クラブ長から「坪さんもここに来てたんやで、よろしくな」と伝言されていました。

 長いこと会ってないな?乗馬上手い人やからしっかり教えてもらいや。

常石 はい、乗馬の馬がとってもいいので乗り易いし座りもいいです。先生は調教師生活を振り返っていかがでしたか?

 少し早く引退させていただきますが、無事に最後の競馬に馬を送り出せることがうれしいです。ずっと馬のことばかり考えて頭がいっぱいでした。思い残すことはありません。

常石 お疲れ様でした。また乗馬クラブへ先生と一緒に行けたら嬉しいです。

 おー!クラブ長によろしくな(にこやかに手を振ってくれました)。

坪師2

坪調教師「ずっと馬のことばかり考えて頭がいっぱいでした」


 そう言いながらも調教スタンドの2階で調教映像を見入っていました(2/22取材)。坪先生とはほとんどお話ししたことがなかったのですが、とっても穏やかで研究熱心な先生でした。

***

 そして幸四郎騎手。ファンに「もっと騎手やって!馬に乗って!」と惜しまれつつラストデーをきちんとやりこなし20年の騎手生活に終止符。3月1日からは調教師としてのスタート。開業は来年ぐらいと目標を立て、技術調教師として勉強していきます。

 取材は合同でお聞きしました。「つねちゃんの取材は、厩舎開業の時によろしくな」と言われているので、開業時の取材では裏の裏までつっこんでお聞きしたいと思っています。楽しみにお待ちくださいね。

 幸四郎騎手のコメントは阪神競馬場の中継や新聞などで十分周知されていると思いますが、僕がとっておきの談話をお知らせします。

「2月28日までは騎手です。最後までレースできっちり戦いました。阪神競馬場でデビューし引退できるのはうれしいです。調教師試験に合格した時から阪神で最後やと思ってきました。初重賞もこの競馬場なので忘れることができませんね。デビュー2日目に“オースミタイクーン”でマイラーズカップを、重賞を勝たせていただいた幸せ者です。

 父に見てもらえなかったのが残念ですが写真を持ってきましたので、いい報告ができます。母もほとんど来ない競馬場へ僕のために来てくれてうれしいですね。父の分まで喜んでくれました。

武幸四郎騎手2

武幸四郎騎手「母もほとんど来ない競馬場へ僕のために来てくれてうれしいですね」


 身長177cmと騎手の中で一番身長が高く減量に苦労もしましたが、調教師試験のほうがもっと大変でした(笑)。こんなに早く合格できると思ってなかったので嬉しいというより、勉強からやっと解放された喜びのほうが大きいです。

『ご飯行こう!』と誘われてもほとんど行かなかったですよ(笑)。レースの時も勉強してましたからね。まだまだ時間かかると思っていたんですよ。父にも相談しましたが『頑張れよ』と言ったぐらいで細かいことは言わなかったですが、ずっとそばで見てくれていました。きっとハラハラしてたでしょうね。

 これからもっと大変なことがいっぱいあると思いますから、父というより調教師の先輩として聞きたいことが山ほどあったのに聞けないのは残念ですが、騎手から調教師になった父は、たくさんの財産を僕に残してくれました。父と会話しながら、今度は僕が騎手から調教師としてこの世界につながっていられることが、一番幸せです。馬が大好きやし、馬と一緒に大きくなりましたからね。

 理想とか何をしたいとかまだまだ分かりません。これから牧場へ行き馬を見て歩き、馬を見極める目をつくっていきたいです。馬に乗らなくても下から馬を見て馬のことがわかる調教師を目指したいと思っています。僕が乗せて頂いたような素晴らしい、強い馬づくりをしていきたいです。兄(豊騎手)が乗ってくれる馬をつくっていきたいと思います。そしてファンの人たちにも楽しんでもらえるような競馬場にしていきたいです。

 レースが終わり最後に自分の鞭や鞍など道具を片付けていると今日で騎手を引退するんやなとやっと実感が湧いてきました。怪我して辞めるわけではないのでホンマに幸せ者です。あっという間の20年間でした。

 応援していただいたいろんな方々に感謝しています。これからも応援してください」

武幸四郎騎手3

騎手として最後の騎乗を終えた武幸四郎騎手、右は南井克巳調教師


***

 僕と幸四郎騎手の思い出は現役時代しかないので頼れる頼もしい大人になったなと感激しました。楽しいことも辛いことも経験してるからこそ調教師としての活躍に期待が大きくなります。取材楽しみにしています。

つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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