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ホッカイドウ競馬の競馬番組要綱

  • 2017年03月01日(水) 18時00分
昨年の北斗盃を制したスティールキング

昨年の北斗盃を制したスティールキング


3歳3冠路線をより強くアピールできれば

 今日から3月。まだ北国では春の訪れを実感できない気候だが、それでもだんだんと日照時間は長くなり、日の出も早くなった。そろそろ産駒誕生と種付けが本格的に始まり、牧場にとって今月から3ヶ月間は忙しさのピークとなる。

 さて、今年のホッカイドウ競馬の開幕は来る4月18日(火)が予定されており、11月9日(木)までの全80日間の開催計画である。すでに2月17日現在で、門別競馬場には513頭の2歳馬が入厩し、鋭意調教中という。今月18日からは、能力検定も開始されるとのことで、いよいよ開幕に向けて人馬の動きが慌ただしくなってきている。

 昨年、馬券売り上げが好調に推移したホッカイドウ競馬は、18年ぶりの200億円突破を果たし、前年比120%の大健闘であった。

 その流れを受け、今年は、競馬番組にもいくつか改善点が見られる。まず2歳は、昨年まで1〜5組に分割していたクラス編成を1〜3組とし、最上位クラスの平場及び特別戦の1着賞金を45万円から70万円に、65万円から100万円にそれぞれ増額した。また出走手当も1万円〜2万円を上乗せした。

 ただし、認定競走に関しては昨年と同様で、年間113競走。9レース実施される重賞は250万円〜500万円の1着賞金で、フレッシュチャレンジ競走(55レース)が150万円、アタックチャレンジ競走(35レース)が80万円の1着賞金である。

 ホッカイドウ競馬は、毎年、春先に出走頭数が揃わず、週2日開催、1開催4日間の編成を余儀なくされるのが悩みの種だ。その主たる要因は、3歳以上の古馬の絶対数が不足していることによる。冬期間、他の地方競馬に遠征している道営馬たちが、春の開幕とともに北海道に戻ってくるケースはそれほど多くなく、それぞれの遠征先でそのまま春のシーズンを迎えてしまうことが多いために、いわば慢性的な在厩馬不足の状態が近年の最大のネックになっている。

 2歳馬こそ、例年同様にかなりの多頭数が入厩しているものの、これらは、未だ調教過程にあり、開幕時に臨戦態勢の整っている馬は、ごく少数だ。したがって、開幕当初は、注目度こそ高いが、昨年を例にとっても実質的に1日1レースずつしか組めなかった。

 主催者はできるだけ早期からの出走を促したいところだが、現場の方がそれについて行けない事情がある。4月からレースに出られる2歳馬は限られており、昨年も、開幕日(4月20日)のスーパーフレッシュチャレンジ競走(1着賞金300万円の豪華版である)には8頭がエントリーしていたが、直前に2頭が出走を取り消して6頭立てで実施された。

 その翌日は2歳戦が組まれておらず、次の週になって2日間で計3レースの認定戦が組まれたが、いずれも8頭立てながら出走取り消しが出てしまい、全頭揃わずに終わった。気候条件の厳しい北海道では、2歳馬を4月デビューさせるにはかなり無理をしなければならないのが現状だ。

門別・田中厩舎のゲート練習風景

門別・田中厩舎のゲート練習風景

 充実した層の厚い2歳戦が売りのホッカイドウ競馬とはいえ、各馬の出走体制が整ってくる6月頃までは、古馬、とりわけ3歳馬に頑張ってもらうのが理想である。ホッカイドウ競馬でも、3冠を頂点とした3歳のレース体系が整備されており、中央の皐月賞に相当する「北斗盃」が、開幕日に実施されることになっている。ダービーに相当する「北海優駿」は6月1日の予定である。

 この3歳3冠路線をより強くアピールできると良いのだが、トライアルもなしにいきなり開幕日に3冠のうちの1冠目が実施されるのは、やはり不自然に映る。しかも、すでに発表されている競馬番組概要によれば、3歳路線に関しては賞金の増額が明記されていないので、前年から据え置きなのだろう。北海優駿が500万円、北斗盃が300万円の1着賞金では、これを目標に素質馬が集まってくるとはとても思えない。3歳馬に関して要綱で明記されているのは、「前年度の2歳認定馬で、ホッカイドウ競馬所属で11月以降のJRA特指競走に出走した馬」が、第4回開催(6月上旬)までの間にホッカイドウ競馬で出走した場合に、奨励金を交付する、という条項のみ。これに該当する3歳馬が果たしてどれくらいいるのか分からないし、だいいち奨励金がいくらなのかも明らかにされていない。それよりも、いっそ3冠レースだけでも賞金を大幅増額した方がよほど吸引力になると思われるのだが。

 3歳以上の古馬戦に関しては、道営スプリントとノースクイーンカップの2重賞のみ、300万円から500万円に1着賞金が増額される旨発表されているが、それ以外は記述がないのでたぶん据え置きだろう。その分、古馬に関しては、全てのクラスで出走手当の増額が図られているが、それとて金額は微増にとどまる。売り上げ20%増の恩恵が、今年の競馬番組にどのように反映されているのか、これだけでは何とも分からないというのが率直な感想だ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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