“ヤスタカローテ”でNHKマイルC狙うモンドキャンノ/吉田竜作マル秘週報
◆スプリングSから直行でNHKマイルCへ
「マツクニローテ」という言葉をご存じだろうか? 現在は「松田」と表記される松田国英調教師だが、開業してからしばらくは「松田国」で通っていた。これを略して「マツクニ」。そのマツクニ厩舎の代表馬クロフネ、キングカメハメハが日本ダービーへ、毎日杯→NHKマイルCという、これまでにない斬新なローテーションで臨んだことから「マツクニローテ」なる言葉が生まれた。キングカメハメハで見事、春の変則2冠(NHKマイルC&ダービー)を達成。後にディープスカイ(昆厩舎)も、このローテで臨み、同じく変則2冠馬に輝いている。
以前、松田調教師がこのローテのメリットを「(ダービーまで)長い距離を走らないで済むので、馬にそこまで負担がかからない」と同時に、「(NHKマイルCで)東京の長い直線を経験できる」と説明していたと記憶している。
関西馬にとってNHKマイルCから中2週でダービーへと臨むのは「再度の東京遠征、それもGIを2度走ることが負担になる」との声もあろうが、そこは元気な若駒たち。勢いで乗り切ってしまうのだろう。
もちろん、王道が「皐月賞→ダービー」なのは変わりないが、「マツクニローテ」のような路線ができることで、様々な選択肢が増えることは、サラブレッドにとってもマイナスにはならない。何より違う路線を歩んできた馬がぶつかった方が、頂上決戦のダービーがより盛り上がる。競馬ファンにとっても、いいことなのではないか。
今週は皐月賞トライアル・弥生賞が、その2週後にも同じくトライアルのスプリングS(3月19日=中山芝内1800メートル)が行われる。関西馬にとっては本番まで中5週とゆったりと間隔が取れる前者の方がより「王道感」はあろうが、かといってスプリングSがステップレースとして弥生賞に劣るわけではない。(中3週と)詰めて使った方がいい馬もいれば、距離による消耗をとどめたい陣営もいるだろう。どちらも有力なステップには間違いないが、それはあくまで皐月賞トライアルとしての話。今回、スポットを当てるのは、これまでとは全く異なる使い方をスプリングSでする馬だ。
朝日杯FS2着馬モンドキャンノを管理する安田隆行調教師は「皐月賞へ向けたクラシック登録はしていませんし、仮に勝つなり、権利を取るなりしても、皐月賞には行きません。スプリングSから直行でNHKマイルCへ向かいます」と高らかに“新路線”を宣言した。もちろん、これには合理的な理由がある。
「トライアルのニュージーランドT(4月8日=中山芝外1600メートル)とNHKマイルCではコース形態上の違いからも、直結しにくい。中山マイルは枠の内外で大きな有利不利が出てくるし、レースの流れも東京のマイルとは異なる。(1800メートルの)スプリングSの方が道中でペースが落ち着くところも出るから、流れはより近くなるし、ローテーション的にもゆとりができますからね」(安田調教師)
モンドキャンノはキンシャサノキセキ産駒だけに、さらなる距離延長がどうかという問題もあるが…。これにも明るい見通しを立てているようで、「(初のマイルだった)朝日杯では我慢が利いた走りを見せていたし、折り合えば最後はすごい脚を使ってくれるのはわかった。(1800メートルのスプリングSなら)中山での4つのコーナーで折り合いもつくでしょうし、そうすれば距離関係なく、あの脚が使えると思うんです」
このチャレンジが成功するようなら…。“ヤスタカローテ”が新たに確立すると同時に、今後はスプリングSに参戦する馬のタイプも変わってくるかもしれない。