今週デビュー新人騎手の中からスターが誕生する予感/トレセン発秘話
◆“花の33期生”の称号
中央競馬における人の年度替わりは3月。そう、今週から5人の新人騎手が希望を胸に東西でデビューを迎える。中央だけで戦った昔と違い、いまや公営や外国のすご腕ジョッキーが勝負を挑んでくる時代。トップにのし上がるのも、並大抵ではないが…。
「下馬評通りなら、今年デビューの33期生は相当に面白いんじゃない?」
こう話すのは武藤雅くんの父・武藤善則調教師。この弁が“親バカ”でないことは、卒業生を褒め倒した競馬学校・亀井校長の言葉が証明する。さらに興味深いのは関東からデビューする他2人も父が騎手である点。「刺激し合えるライバルが同期にいるのは幸運」と武藤師が話すように、横山典弘騎手の息子・武史くん、木幡ファミリーの三男・育也くんも腕達者と評判の新人だ。
「最近は“花の○期生”という言葉がないですよね。僕らがそう言われれば最高です」
デビュー目前となった雅騎手に目標を聞くと、こんな声が返ってきた。彼は競馬学校を2度目の受験で合格。「待った1年は無駄じゃなかった」と語る通り、江戸崎総合高校1年時に乗馬で全日本準優勝のキャリアを誇る。きっと本番に強いタイプだろう。さらに「(長女の)彩未は芸能活動しているだけあって笑顔がうまいが、以前の雅は写真を撮っても笑顔も見せない。その性格が変わったのがあの一年。周りからかわいがられるようになった」と武藤師。若いころの辛苦は時に人を大きく成長させる。
「小学生までは本気でプロを目指してサッカークラブ4つを掛け持ち。父の現役時代は記憶にないし、騎手を意識したのも乗馬を始めた中学から。それでもサッカーで鍛えた下半身だけはずっと自信がありました」
本人がこう語るように、きれいな騎乗フォームは決して名前負けしていない。父もそこを買っており、デビュー週に勝負馬(グリッタードリーム=日曜中山2R3歳未勝利(牝))も用意した。
「もちろん幸先いい出だしが理想だが、騎手は3年目までが勝負。オレは新人賞を取って2年目に37勝して、3年目に遊んじゃった。しくじり先生役はつらいけど(笑い)、それじゃダメと雅には言ってある。競馬に関しては何も言わないけど、そこだけはね」(武藤師)
親子鷹で狙うのは、まずは父と同じ新人賞のタイトル、そして“花の33期生”の称号。「自分を含めて同期はみな負けず嫌い。これからもそんな関係が続く」と雅騎手。武豊の座を継ぐスター騎手が、今年のデビュー組から生まれる? 例年以上にシ烈な新人賞争いがスタートする。(美浦の宴会野郎・山村隆司)