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類まれな傑物ソウルスターリングを産み出した藤沢和雄厩舎の技術革新(辻三蔵)

  • 2017年03月07日(火) 18時00分


◆外厩優先の時代に一石を投じるように

 昨年の最優秀2歳牝馬ソウルスターリングが今年初戦のチューリップ賞を快勝。デビューからの無傷の4連勝で阪神ジュベナイルFに続く、重賞制覇を飾った。

 勝ち時計の1分33秒2は昨年、シンハライトが記録したレースレコード(1分32秒8)に次ぐ、史上2番目の好タイム。過去にチューリップ賞を勝った馬で走破時計が1分34秒を切ったのはウオッカ(1分33秒7)、シンハライトの2頭だけ。のちにウオッカが日本ダービー、シンハライトがオークスを勝ったように、時計面からは距離延長に問題がないことを示唆している。

 気になるのは前述のウオッカ、シンハライトが桜花賞で2着に敗れていること。両馬ともに、チューリップ賞で同タイムで走っていた2着(クビ差)のダイワスカーレット、2着(ハナ差)のジュエラーに逆転負けを喫している。

 しかし、ソウルスターリングはチューリップ賞で2着ミスパンテール以下を2馬身突き放している。阪神ジュベナイルFで1馬身1/4差2着だったリスグラシューとの着差を2馬身半差まで広げている。当面のライバルだと思われたリスグラシューを完封したことで、二冠制覇の可能性は高まった。

 ソウルスターリングは美浦トレセンに在厩したまま、桜花賞に向かう。関東馬が美浦トレセンに在厩し、桜花賞を勝ったのは2006年のキストゥヘヴンまで遡る。関東馬は2010年にアパパネ、2013年はアユサンが桜花賞を制しているが、いずれも栗東トレセンに滞在していた。

 2008年以降、桜花賞での美浦トレセン調教馬の成績は[0-1-2-40](複勝率7%)。近年では1番人気に推されたルージュバック(2015年9着)、メジャーエンブレム(2016年4着)が期待を裏切っており、美浦在厩馬にとって試練の日々が続いている。

 もし、ソウルスターリングが無敗で桜花賞を優勝した場合、2004年のダンスインザムード以来、13年ぶりの快挙になる。ダンスインザムードはソウルスターリングと同じ藤沢和厩舎に所属し、美浦トレセンで在厩調整を行っていた。

 ソウルスターリング自身、阪神競馬場への長距離輸送は2度経験済み。阪神ジュベナイルFの直前追い切りは美浦坂路で単走調教だったが、チューリップ賞では帰厩時期を早めて攻め強化を図っていた。

 放牧先の山元トレセンから2月1日に帰厩。1カ月半の在厩期間でウッドコースと坂路を併用して調教を12本消化。美浦ウッドコースの直前追い切りでは併せ馬でシッカリ追っていた。同じ休み明けのリスグラシューが2月14日に帰厩したことを考えれば、美浦トレセンでの調教量の多さでライバルを圧倒していた。

 藤沢和厩舎は外厩優先の時代に一石を投じるように在厩期間を長めに取り、厩舎力で勝負している。担当する厩舎スタッフも馬と接する時間が長くなることで体調管理のノウハウを掴み、好結果につなげている。

 最近の藤沢和厩舎はウッドコースの追い切りで2頭併せを2列縦隊で行い、変則4頭併せの形を取っている。後方追走から「馬なり」で同時入線するには相当な体力を用いる。しかもゴール板を過ぎた後、加速を促すので時計以上に負荷が掛かっている。時代の先端を行く「馬なり調教」で進化を遂げている。

 藤沢和厩舎の技術力を結集したソウルスターリングの連勝記録がどこまで伸びるのか、期待せずにはいられない。

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