小牧騎手が実践する新馬のセオリーとは!?
3月1週目は新馬で2勝を挙げたほか、ガンコ、ヒロシゲスマート、トルークマクトで2着するなど、馬券を大いに盛り上げてくれた小牧騎手。今回は、その新馬の2勝とトルークマクトでの激走をじっくりと振り返ります。はたして小牧騎手が実践する新馬のセオリーとは!?
(取材・文/不破由妃子)
大阪城S……あれは勝っとかなアカンわ
──3月1週目は、土日で新馬を2勝。どちらも危なげなく逃げ切りましたね。
小牧 矢作先生のところのエンパイアガール(3番人気1着)は、当日跨いだ瞬間からいいなと思った。1番枠だったし、矢作先生からも「揉まれたら弱いから、ハナに行ってくれ」という指示があったからね。ただ、エンパイアかぁ…と思って、ちょっと用心しました。
──エンパイアメーカー産駒は、そんなに難しいんですか?
小牧 うん、うるさくて有名やで。もちろん全部が全部ではないやろうけど、傾向としてゲートは悪いし、ひっくり返ったりもするし。だから、みんな警戒してるんですわ。
──そうなんですね。お母さんのローズボーは、ダートで5勝を挙げた馬ですよね。確か伊藤雄二厩舎の所属で。
小牧 そうそう。でも、そのお母さん自体も難しい馬やったんやて。金曜日の朝やったかな、調教始めのときに笹田先生(調教助手として伊藤雄二厩舎に25年以上在籍)がきて、「おい太、土曜日の新馬は気を付けろよ。お父さんはエンパイアやし、お母さんも気性が難しくて大変やったから」って。
──実際、レースに行ってみていかがでしたか?
小牧 カリカリはしとったけど、思ったより全然おとなしかった。何も変な癖を出さんとね。
──首の動きがしなやかで、柔らかい走りをする馬ですよね。
小牧 そう、すごく柔らかい。レース直後の取材でも話したけど、芝でもやれそうなフットワークやね。初戦ということもあって物見が激しくて、ずっとフラフラしていたけど、最後は余裕を持ってゴールできたから。芝かダートかも含めて、いろんな可能性がありそうな馬やね。
──日曜日の新馬は、大橋厩舎のヴァリーゲイト(9番人気1着)。この馬は、手応え以上に最後までしぶとかった印象です。
小牧 そうやね。スタートが課題の馬で、練習のときから駐立が悪かったから心配してたんやけど、本番でもやっぱり悪かった(苦笑)。でも、そこでこっちがビビったらアカンと思って一か八かで出して行ったら、それがドンピシャで決まったっていう感じやね。追い切りには乗っていないけど、いい動きをしていたし、スピードがあるね、あの馬は。
──土日を通して、「新馬戦の小牧騎手は買い」の法則を思い出しましたよ。
小牧 ああ、一時そんなふうに言われとったね。でも実際に新馬を勝ったのは久しぶりやろ? 最近は、新馬に乗る機会自体が少ないからね。
──新馬戦について、小牧さんなりのセオリーみたいなものがあるんですか?
小牧 いや、とくにないよ。ただ、新馬だけに手探りの部分が多いから、返し馬をより慎重に。そこでいかに感覚をつかめるかが勝負やからね。あとは、ゲートをスムーズに出すこと。まぁそのあたりはベテランやから。
──なるほど。3月1週目はもうひとつ、大阪城Sのトルークマクト(13番人気2着)もあっぱれでした。ゴール前で久々に叫びましたよ(笑)。
小牧 惜しかったねぇ。でもね、あそこまでいったら、やっぱり勝っとかなアカンわ。ファンにとっては穴馬を持ってきたということになるんやろうけど、逆に僕はガックリきました。
──着差が着差ですから、小牧さんにしてみればそうかもしれませんね。テン乗りでしたが、好走の要因はどう分析されていますか?
小牧 何もかもがうまくいったレースやと思う。スタートも決まったしね。もともと「外目を走らせたほうがいいよ」っていうアドバイスをもらってたんやけど、その点でも自然と外目に付けられたし。直線も包まれることなく、外をスムーズに伸びてきてね。これまで長いところを使ってきた馬やけど、1800mっていう距離も合ってるような気がした。
──最後は耳を絞っていたそうですね。
小牧 うん。でも怒っていたとかではないよ。耳を絞っていたのは、馬自身がそれだけ必死だったということだと思う。坂を上がったあたりから脚色は鈍ってきたけど、とにかく馬が一生懸命に走っているのがものすごく伝わってきたから。だからこそ、余計に勝ちたかったね。
馬が一生懸命に走っているのがものすごく伝わってきたから。だからこそ、余計に勝ちたかったね