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2017POG取材近づく

  • 2017年03月15日(水) 18時00分
レヴァンテライオンPOG取材時立ち写真

レヴァンテライオンPOG取材時立ち写真


今年もどんな馬と出会えるか楽しみ

 3月中旬になり、今やすっかり春の風物詩になったのが、POG取材である。

 今年も概ね来週から一気に取材が開始される。すでにいくつか大手の育成牧場では合同取材日が決まっており、各媒体とも取材のための人員確保に大忙しだ。

 ここ数年の傾向を見ていると、年々、取材日程が前倒しされて来ている。以前ならば、4月中旬を過ぎてもまだ猶予があったが、近年は、中央競馬の新馬戦スタートが早まったことに伴い、各媒体とも関連本の発売をそれに合わせて早めるようになってきた。

 POGは全国に無数のグループが存在しており、それぞれ独自のルールで「仮想馬主ごっこ」を楽しむお遊びだが、多くが新馬戦スタートから翌年のダービーまでの期間を設定しており、その間に、各々が指名した“所有馬”の、実際の競走成績で優劣を争う。仕上がりが早く、早期デビューができてすぐに勝ち上がれる馬も人気だが、それ以上に、2歳秋以降、翌年春のクラシック戦線に乗って行けるような素材の方がより注目される。昨今の例でいうと、ノーザンファーム生産のディープインパクト産駒が人気の頂点にいて、だいたい性別を問わず争奪戦になる。

 6月から新馬戦が始まるとなると、どの馬を指名するかを検討し始めるのは、それよりずっと早く、大型連休あたりからになろうか。指名馬はドラフトによって決定されることが多いようで、そのための参考書が必要になり、POG関連本はそうしたファンのニーズに応えるべく発売されている。

 総じて競馬の世界でも今は紙媒体が苦戦を強いられていると伝えられるが、そんな中にあってPOG関連本は、数少ない「計算できる刊行物」なのだそうだ。それぞれ一定部数を発売してきた実績から、今年も昨年同様の体制で臨む媒体が多い。

 ただ、取材を受ける育成牧場の側にとってみれば、あまり歓迎できない部分もある。取材は、各育成牧場の在厩馬の一部について、立ち写真と各馬の特長、アピールポイントなどを聞き出すことになるが、馬の選択は牧場任せで、まずこれがかなり知恵を絞る作業になるらしい。馬主や調教師によっては、POG関連本に取り上げられることに難色を示す人もいるし、また、極端に特定の馬主や厩舎に偏ってしまうのも避けたい。したがって、まんべんなく、バランスのとれた選択をして取材対象馬をリストアップする必要がある。

 そうして、各育成牧場からPOG関連本用に推奨馬を挙げて頂くことになるわけだが、媒体によっては、紙面の都合上、取材した馬を必ずしも全て掲載できない場合がある。また、育成牧場によっては、取材そのものを受けてもらえないケースも現にある。

「本当は、多くがまだ調教過程にあり、今の段階で走るかどうかなんて判断できない。また、育成牧場にいる時には凡庸な印象でも、厩舎に入ってから大きく変わったり、夏を過ぎてからグンと成長して見違えるような馬になる場合も多い。なので、軽々しく、『この馬は走りますよ』なんて口にできない。もちろん手がけている馬はみんな期待していますけど」と慎重な姿勢の育成牧場も多い。

 そこを何とかお願いして、各育成牧場にご協力頂いているのがPOG取材の最前線にいるライターやカメラマンたちだ。

 各育成牧場を回って取材を進めても、せいぜい私たちに分かるのは、馬体のバランス、血統の良し悪しくらいのもので、後は騎乗スタッフや育成責任者などの“感覚”に頼る他ない。そもそも2歳3月〜4月の時点で将来を占うのはほとんど不可能にも思える。

 ただ、それでも、ファンは「自分が発掘した1頭」を何とかして見つけ出そうとする。たとえ血統がそれほど良くなくとも、地道に走り続け、3歳春に頭角を現してくるような馬を探すために、関連本を熟読する。写真があればもちろん判断材料として最大限に活用する。したがって、できるだけ晴天に撮影したきれいな立ち写真が掲載されるようにしたいとは考えている。

 一連の取材が終わるのは、だいたい4月11日〜13日にかけての産地馬体検査の頃。そして大型連休前には各媒体とも発売にこぎ着けるという日程だ。今年もどんな馬と出会えるか楽しみにしているのと同時に、できることなら、そろそろ日高の生産馬の中からファンの視線をくぎ付けにするような逸材が誕生して欲しいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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