◆休養期間にエネルギーをつくり出す
目標が達成できるかどうか、それは簡単にはわからない。ただ、そこに向っていくだけの力があるかどうか、それは努力次第といえる。力をつける、これまで様々な場面でやってきた筈だ。それから先は、運命に委ねるしかない。童話「星の王子さま」のサン・テグジュペリは、「人生に解決なんてない。ただ、進んでいくエネルギーがあるばかりだ。そういうエネルギーをつくり出さねばならない。解決はその後でくる」と記している。
なにが一番大切かを示しているが、目標を前にどう準備をしているかを見るのに、競馬では、休養期間をとってきた馬に、特に注目してきた。そこには、関係者の意志がはっきりあらわれていることが多いからだ。
桜花賞という大舞台出場という目標をかかげてのぞんだカラクレナイは、3ヶ月という休養の間に、十分に戦う力をつけていた。1400米を鋭い末脚で連勝した後「ソエを治して調教では十分に乗り込みができて、体にも幅が出た」と松下武士調教師は言っていた。フィリーズレビューのパドックでは、明らかに成長が感じられ、あれだけテンションの高くなる馬が実に落ちついて回っていた。目標に向っていくエネルギーを、この休養期間につくり出していたのだった。
牝馬に限らないが、時に休養は大きな成果を生むものだが、中山牝馬ステークスを勝ったトーセンビクトリーも、4ヶ月の休養明けだった。馬体重が自己最高の476キロだったが、「この休養中にしっかり食べるようになり、トレーニングが十分できるようになった」と角居調教師は強調していたが、この先の目標ヴィクトリアマイルに向け、こちらもエネルギーをつけていた。
大きなタイトルを前に、必らずこうした馬が登場するものだが、2歳女王ソウルスターリングも、チューリップ賞の勝利を3ヶ月ぶりの実戦でつかんでいた。もっともこちらは英気を養っていた方だが、いずれにせよ、前々から気にしてきた休養明けの牝馬が、ここにきて勝ち続けている。その休養に、個々の馬にどんな意味があったのか、それを考えるのも競馬の楽しみのひとつだ。