熱視点/島田明宏

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いよいよ絆がオンエア

2017年03月18日(土)12時00分

注目数:36人


 今週末、スプリングステークスでサトノアレス、阪神大賞典でサトノダイヤモンドと、2頭の大物が始動戦を迎える。

 どちらも里見治オーナーの所有するディープインパクト産駒だ。

 3月12日の競馬が終了した時点で、ディープ産駒の重賞勝ちは、カデナによる弥生賞だけ。昨年はマカヒキの弥生賞優勝がディープ産駒による重賞8勝目だった。この出遅れをどう取り戻していくのか。そうした視点からも注目したい。

 今週木曜日発売のスポーツ誌「ナンバー」の「ダービー馬を探せ!」という短期集中連載で、昨年につづき、私が書き手の1番手としてダービー候補について記した。ピックアップしたのはカデナである。これもディープ産駒で、オーナーは、1991年12月に松永幹夫騎手(当時)らと香港で初めて会った前田幸治氏だ。

 カデナが弥生賞を勝ったあと、表彰式を終えた前田オーナーに「ダービーですか」と訊くと、「もちろん」と力強く頷いた。「もちろん」のあとには、「勝つつもりだ」「勝てると信じている」といった言葉が略されていたことは言うまでもない。

 前田オーナーは、武豊騎手が2010年春の落馬負傷をきっかけに勝ち鞍が少なくなった時期も変わらず騎乗を依頼し、「頑張れよ」「腐るなよ」と声をかけつづけた。12年秋には米国ブリーダーズカップターフでトレイルブレイザーに騎乗するチャンスを与え、武騎手に、世界を当たり前のように飛び回っていたころの感覚を取り戻させた。それが翌春のキズナによるダービー制覇につながったと言っていい。

 その前田オーナーが、中竹和也調教師と福永祐一騎手に、ダービーを勝たせるために託したのがカデナである。

「勝ちたい」と願って勝てるものではないとわかっていても、これだけ勝負運を持っているオーナーなら、またドラマを演出してしまうのでは、と思ってしまう。

 福永騎手にとって、今年も参戦が叶えば19度目のダービー挑戦となる。もし勝てば、柴田政人騎手(当時)と並ぶ「最多挑戦回数初勝利」となる。

 まれに、ポンと勝ってしまう騎手もいるが、武騎手でさえ10回、横山典弘騎手と加賀武見騎手(当時)は15回、河内洋騎手(当時)でも17回目にしてようやく手にしたほど、「競馬の祭典」を勝つのは難しい。野平祐二騎手(当時)、田原成貴騎手(当時)といった名手でさえ、勝てないまま鞭を置いた。ほかのレースとは異なる、ダービーだけの勝ち方は確かにあるようだが、あまり特別視しすぎても上手くいかない。が、そこに近づく方法は間違いなく存在し、今、福永騎手は、オーナーのバックアップを推進力に加え、あと少しで手の届くところまで来ている。今年は、ヒリヒリするような緊張感を鞍上と共有しながら、ダービーのスタートを迎えることになりそうだ。

 来週はいろいろと忙しくなる。

 20日、月曜日は、ひょっとしたらソウルスターリング級かも、と言われているファンディーナがフラワーカップに出る。

 その日の午後6時10分から6時44分まで、NHK総合テレビで、ドラマ『絆〜走れ奇跡の子馬〜』のメイキング番組が放送される。NHK公式サイトによると、番組タイトルは『役所広司と新垣結衣が、福島の馬と触れ合う〜特集ドラマ「絆」の舞台、相馬を訪ねて』となっている。「出演者ほか」として私の名前がある。「ほか」というのは、どう考えても私のことで、先日応えたインタビューから、おそらく数十秒だと思うが、放送されるようだ。

 そして、23日、木曜日の午後7時30分からは『絆〜走れ奇跡の子馬〜』の前編、翌24日、金曜日の午後7時30分からは後編が、いよいよオンエアされる。ネタバレになると困るので、なるべくコメントしないようにしているのだが、映画のようなスケールで、原作を読んだ人も、読んでいない人も没頭できる、素晴らしい作品に仕上がっている。先日の記者試写では、何人もの記者が泣いていた。

 時間は前後するが、24日の午後2時から、新橋のGateJ.で『草野仁のGateJ.+(プラス)』の公開収録がある。ゲストは藤田菜七子騎手と根本康広調教師なので、ものすごい数のお客さんが来るだろう。藤田騎手をテーマとしたクイズをつくらなくてはならないのだが、どんな話が飛び出すか、そちらも楽しみだ。
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コラムニストプロフィール

島田明宏
島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊ギャロップ、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。趣味は読書と読売巨人軍の応援。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。最新刊はテレビドラマ原作小説『絆〜走れ奇跡の子馬』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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