◆これからのスケールアップに期待していいだろう ここまで、1分07秒6で勝った
レッドファルクスから11着馬まですべて微差の「アタマ、クビ、クビ、ハナ、アタマ…」だった前年秋のスプリンターズSが象徴するように、現在の短距離路線の勢力図はほとんど横一線の状態だった。
渋った馬場が味方したことはたしかだが、楽々と抜け出し、2着
レッツゴードンキにこの距離では明確な着差に相当する1馬身4分の1。以下の伏兵陣には決定的な差をつけて完勝した
セイウンコウセイ(父アドマイヤムーン)は、まだまだこれからの4歳馬。昨年の秋にオープン入りして以降これで「1着、2着、1着」。馬体重が500キロに達すると同時に、発達した筋肉がひときわ目立つ素晴らしい身体に成長している。1400m級までは不安なしと思えるが、今回の距離1200mに限れば【4-2-0-0】となった。
これで1400mは【2-3-0-1】。1600m以上は【0-0-0-3】なので、距離がマイル戦に延びるのは歓迎ではないが、こと1400m以下なら、ダート戦と渋った馬場でも【3-3-0-0】であり、非力なスピード型ではない。パンチ十分。課題は、まだ1200mの最高時計が「1分07秒8」、1400mのも持ち時計が「1分20秒7」にとどまることか。昨秋のスプリンターズSは全体レベルもあって1分07秒6だったが、秋の中山のスプリンターズSは、例年だと1分07秒台前半の高速決着になることがほとんど。秋には、1分07秒そこそこの高速決着にも対応できる一段のパワーアップに期待したい。
母オブザーヴァント(父カポウティ)の半姉には、NHKマイルCを勝ったクラリティスカイなどの祖母タイキダイヤ(父オジジアン。クリスタルC勝ち馬)がいる。また、少し年の離れた半兄には外国産馬として第1回のNHKマイルCを快時計の1分32秒6で勝ったタイキフォーチュン(父シアトルダンサーII)もいる。祖母バッジオブカレッジ(その父は、近年ではエアスピネルの牝系に登場するウェルデコレイテッド)の半兄には、名種牡馬ノウンファクト(父インリアリティ)がいる名門ファミリーの出身。日本で知られるこの一族は、やや完成されるのが早い印象もあるが、セイウンコウセイは古馬になってぐんぐん良くなってきた遅咲きタイプ、これからのスケールアップに期待していいだろう。
2着したレッツゴードンキ(父キングカメハメハ)は、芝の短距離では差して良さを発揮する短距離の追い込みタイプになったため、インの3番枠はコースロスのないプラスになる可能性も、逆に前が空かないマイナスも考えられた。だが、渋った馬場になり直線はインにスペースが生じたから、稍重馬場はプラスだったかもしれない。最後にレッドファルクスに競り勝ったあたり、レッツゴードンキのほうが渋った馬場を苦にしないということだろう。
同馬の今後の課題にはセイウンコウセイとはだいぶ異なる一面があり、1200mはこれで【0-1-2-2】。スプリンターとしてはこの距離で勝ったことがないから、限界がありそうである。といって1400mのビッグレースは限られ、G1はない。春の大目標はヴィクトリアマイルになると思えるが、ここまでマイル戦では、超スローになった3歳春の桜花賞以外勝ったことがないという不思議なスピード型になりつつある。ヴィクトリアマイルでは昨年、1分32秒9の速いタイムを記録しているが、実際は差のある10着だった。
一度は巧みなコース取りで2番手に上がった人気のレッドファルクス(父スウェプトオーヴァーボード)はゴール寸前鈍って3着。勝ったセイウンコウセイとはこういう馬場に対する適性の差を感じさせたと同時に、レッツゴードンキにもパワー負けの印象が残ってしまった。中京の芝コースにはここまで【3-0-0-0】の良績があり、1200mには1分07秒2の時計があった。さらには、ダートでも勝っているから決して非力などということはないが、どちらかといえば時計勝負の軽いスピード競馬向きなのだろう。
渋った馬場は不向きを改めて示してしまったのは、
メラグラーナ(父ファストネットロック)。秋の京阪杯(重馬場の1200m)で14着に失速したのにつづき、今回も10着に沈んでしまった。520キロ台の大型牝馬ゆえ滑る馬場ではロスが大きすぎるのだろう。
こなせるのではないかと思えた
シュウジのほか、
ソルヴェイグ、
ラインスピリット、
ワンスインナムーンなど、今回は渋った馬場を敗因に挙げた馬が非常に多かった。軽快なスピード系が多いということか。
初の1200mに挑戦した8歳
フィエロ(父ディープインパクト)は、直線は馬群を割って突っ込んできたが、つまずき気味のスタートが誤算。内枠でダッシュが今一歩だったため、前半置かれる形になってしまった。