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躍進を目指す馬たちが春を告げる一戦/名古屋大賞典

  • 2017年03月29日(水) 18時00分


地方馬の活躍が目立つレース


 早いものでもう3月も終わりですね。3月30日(木)名古屋競馬場で行われる『第40回名古屋大賞典(JpnIII・1900m)』は今年度のダートグレード競走を締めくくるレースであると同時に、ここをきっかけに躍進を目指す馬たちにとって新しい春を告げる戦いです。

 歴代優勝馬にはスマートファルコン(2009年)、エスポワールシチー(2011年)、ニホンピロアワーズ(2012年)、ホッコータルマエ(2013年)、アウォーディー(2016年)らビッグネームがずらり。名古屋大賞典の後に躍進しGI・JpnIホースとなった馬も多く、重要な位置付けのレースと言えます。

 1998年の第21回よりダートグレード競走に格付けされて以降、地方馬の勝利は2002年のトーホウエンペラーと2003年のマルカセンリョウの2頭だけですが、2着にはマルブツブルボン(1998年)、ゴールドプルーフ(1999年、2000年)、マルカセンリョウ(2004年)、ムーンバレイ(2007年)、アルドラゴン(2008年)、3着にはブラウンシャトレー(2001年)、テンリットル(2004年)と、地方馬の活躍が目立つレースです。近年はJRA勢の上位独占が続いていますが、果たして今年は?!

 今年の出走馬をご紹介する前に2002年の勝ち馬、岩手のトーホウエンペラーについて簡単にお話ししましょう。

 トーホウエンペラーは父ブライアンズタイム、母レインボーブルーの牡馬で1996年生まれ。JRAに競走馬登録されたものの体質が弱く、未出走のまま岩手競馬へ。ようやくデビューできたのは1999年の大晦日のことでした。デビュー戦で勝利を挙げた後は翌2000年6月まで9連勝を挙げますが中央馬との交流戦、東京カップけやき賞でウインマーベラスの4着に敗れ連勝は途切れてしまいます。8月のフレンドリーカップ2着を経て11月のさざんか賞、雪椿賞と連勝し、12月にはトウケイニセイ記念2着、大晦日の桐花賞を制し重賞初制覇。デビューからわずか1年で岩手のトップホースへ仲間入りをいたします。

 2001年、5歳になったトーホウエンペラーはシアンモア記念で重賞2勝目を挙げた後、果敢にダートグレード競走に挑戦。初めての遠征でしかもGI初挑戦となった帝王賞はマキバスナイパーの5着でしたが、その後エルムSで2着、青藍賞1着、マイルCS南部杯2着と安定した成績を残します。そして当時新潟競馬で行われていた朱鷺大賞典を制し、ダートグレード競走初制覇。さらに浦和記念2着の後、暮れの大一番・東京大賞典で優勝、GI制覇を果たしその年のNARグランプリ年度代表馬に輝きます。

暮れの大一番でGI初制覇を果たしたトーホウエンペラー(写真は2001年東京大賞典優勝時、撮影:下野 雄規)


 2002年、年明け初戦のフェブラリーSは5着でしたが、その後に出走した名古屋大賞典では圧倒的1番人気に推されます。マイネルブライアン、プリエミネンス、カチドキリュウらJRA勢を相手に快勝。名古屋大賞典がダートグレード競走に格付けされてから初めて地方馬による勝利を挙げました。

 その後、帝王賞5着、ブリーダーズGC3着、青藍賞1着の後には前年2着だったマイルCS南部杯1着。それも同じ岩手所属のバンケーティングとワンツーフィニッシュを決め地元岩手のファンに感動を与えました。その後はJCダート6着、東京大賞典の8着を最後に引退。前年に続き2002年もNARグランプリ年度代表馬に選出されました。引退後は種牡馬となり、クレイアートビュン(2008年埼玉栄冠賞、2010年マイルグランプリ)、トーホウオルビス(2011年被災地支援つばさ賞)など活躍馬を出しました。岩手競馬ファンのみならず、地方競馬ファンにとっても忘れられない1頭です。

59kgを克服できるかどうかが鍵のオールブラッシュ


 お待たせしました。それでは今年の名古屋大賞典の注目馬をピックアップしていきましょう。

 筆頭はオールブラッシュ。前走の川崎記念では鮮やかに逃げ切り、3連勝でJpnI制覇。サウンドトゥルーの末脚を完封した走りは本物で、地方競馬場でのレース適性の高さを示しました。名古屋競馬場は初めてですが、馬も鞍上のルメール騎手も自信を持って臨んでくるでしょう。59kgを克服できるかどうかが鍵となります。

馬もルメール騎手も自信を持って臨んでくるオールブラッシュ(写真は2017年川崎記念優勝時、撮影:高橋 正和)


 昨年兵庫チャンピオンシップ、白山大賞典、浦和記念と重賞3勝を挙げたケイティブレイブ。その後は勝ち星に恵まれていませんが、前走・フェブラリーSも6着とはいえ大きく崩れておらず、浦和記念でクリソライトを破ったレース内容を思えば巻き返しの可能性十分。名古屋グランプリではアムールブリエの2着と名古屋競馬場でのレース経験もあります。58kgを背負いますが4歳馬の成長力に期待します。

58kgを背負うも成長力に期待のケイティブレイブ(写真は2016年浦和記念優勝時、撮影:武田 明彦)


 モルトベーネは2走前の東海Sに2か月半ぶりの休み明けで出走し、グレンツェントの1/2馬身差2着と惜しい結果に。続く前走・アルデバランSは3番手から直線で抜け出し、佐賀記念とマーチSを制している重賞ウイナー・マイネルクロップに1馬身1/4の差をつけて快勝。前走に引き続き鞍上はミルコ・デムーロ騎手。今回の斤量54kgは前述2頭と比べて魅力です。

鞍上ミルコ・デムーロ騎手、斤量54kgが魅力のモルトベーネ(写真は2017年アルデバランSゴール前、(C)netkeiba)


 そのアルデバランSで1番人気に推されるもモルトベーネの3着に敗れたピオネロ。前走・総武Sは2着と勝ち切れないレースが続いていますが、オープンクラスに上がってからも成績は安定。昨年10月のシリウスSでは直線で不利があり、逃げたマスクゾロをとらえられずクビ差2着に敗れましたが、その時一緒にマスクゾロに接近していったアポロケンタッキーはその後、東京大賞典を制覇。ピオネロも重賞タイトルに手が届く位置にいると言っていいでしょう。こちらも54kgです。

 中山のオープン特別・ポルックスSを勝ったドリームキラリ。最後は追い込み馬に詰め寄られましたが、しのぎ切って逃げ切り。3歳の12月に金沢に遠征し(加賀四湯賞・1500m)、1着の経験があり、小回りの地方競馬は相性がよさそうです。

 注目が集まる地方馬は愛知のカツゲキキトキト。昨年12月の名古屋グランプリではアムールブリエの3着、年明け1月の名古屋記念を快勝、2月の佐賀記念4着、前走・園田の六甲盃は大差の圧勝劇を演じ、4歳になった今年もダートグレード競走を賑わしてくれそうな存在。かつて2008年に名古屋大賞典2着の成績を残したアルドラゴンも六甲盃を楽勝した後に臨んだローテーション。アルドラゴン以上の成績も夢ではありません。

今年もダートグレード競走を賑わしてくれそうな存在のカツゲキキトキト(写真は2016年ジャパンダートダービー出走時、撮影:高橋正和)


 その他、大井からは昨年11月の水沢・ダービーグランプリでハイセイコー記念以来1年1か月ぶりの勝利を挙げた4歳馬トロヴァオも出走。2年連続地方競馬リーディングの森泰斗騎手を鞍上に配し、南関東クラシックで活躍した素質馬が今年の躍進を狙います。

森泰斗騎手を鞍上に配しダートグレード競走に挑戦するトロヴァオ(写真は2015年ハイセイコー記念優勝時、撮影:高橋 正和)


 川崎記念から勢いナンバーワンのオールブラッシュ。重賞3勝のケイティブレイブ。モルトベーネ、ピオネロ、ドリームキラリの新顔も加わって今年もJRA勢が上位を占めるのか?! カツゲキキトキトによる久しぶりの地方馬による勝利があるのか?! 9頭立てとは言え何が起きるかわからない激戦が予想されます。

***

 昨年4月からスタートしたコラム『ダートグレード競走に魅せられて』。早くも1年が経ちました。この連載を通じて、私自身が年間のダートグレード競走を改めて体系的に見ることができるようになり、大変勉強になりました。新年度はさらにグレードアップした内容でダートグレード競走の魅力をお伝えしていきたいと思っています。次回は4月12日(水)、船橋のマリーンC編から。皆さんどうぞ引き続きよろしくお願いいたします。



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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

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埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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