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スピード出世でスプリント界の頂点に立ったセイウンコウセイ

  • 2017年03月30日(木) 12時00分


◆自分の信念に従って走らせることに専心した幸騎手

 全く迷いがなく、思い定めたとおりに事が運ぶ。ただ前に進むだけでいい。こんな痛快な場面に遭遇することは滅多にない。どうしようかと迷い、そうしながら刻々と時がすぎて、少しも何にも事が運んでいない、こんな辛い日が続くと、誰だって考えるのは止める。こんなとき、自分のことではなくとも、痛快に事が運んでいく姿を見せられれば、一緒にその運気にのっていきたくなるものだ。

 初勝利から約1年でGI馬に上りつめたセイウンコウセイは、テン乗りの幸英明騎手の馬へのイメージが良かったことでこの勝利を呼び込んだともいえる。前向きで素直な馬、こう感じていた幸騎手は、上原調教師から「こういう渋った馬場は得意だから」と聞いていたことで、レースにのぞんだときの迷いはなかったのが大きかった。好スタートを切り、無理せず4番手の好位につけ、ずっといい手応えの中、残り400米過ぎで先頭のシュウジをかわすときは馬なり。内めでロスなく立ち回ってせり合う3頭に対し、悠々と馬場の外めから進出し、2着レッツゴードンキに1馬身以上の差をつけて差し切ったのだから強かった。あれこれ迷わず、これがセイウンコウセイの競馬と思い定められたのは、テン乗りで、自分の信念に従って走らせることに専心できたからだった。

 初勝利まで7戦も要したひ弱な若馬が、一度勝利してからはぐんぐん成長し、その才能を伸ばしていったのだから、ここまでの道のりは、まるで高松宮記念のレース振りそのものであったといえる。スピード出世でスプリント界の頂点に立ったが、今年の4歳馬は強い。フェブラリーステークスでは、同じ4歳のゴールドドリームが勝っていたし、世代間の強弱というのが本当にあるのかと、改めて考え直したくなった。

 若い馬には、強くなっていくときには勢いがあり、こういうときには戦う側には迷いがない。それこそ思い定めたとおりに戦ってくるから、吉と出たときは一段と目ざましく、目に映る。その痛快な場面に接して、それに少しでもあやかることができたらといつも思ってしまうのだ。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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