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キタサンブラックから遠く離れて

  • 2017年03月30日(木) 12時00分


キタサンブラックの上手な負かし方。

#1 最後の直線に向いたときにキタサンブラックから2馬身以内。
#2 直線に向いたら、キタサンブラックより0.3秒くらい速い上がりを使う。
#3 キタサンブラックに横付けすることなく、キタサンから遠く離れて追う。キタサンと自身の間に1頭馬を挟むのも悪くない。
#4 以上が、すべて上手くいくとクビ差勝てる。

#1と#2について。

直線に向いてもなかなかバテないキタサンを差すには、4角を回って直線に向いたときに1馬身〜2馬身以内にはいたい。いくら上がりで0.5秒以上速くても、後方にいすぎると間に合わない。

直線に向いたときに3馬身〜4馬身くらいの差からクビ、ハナ差捕えたマリアライト(3馬身くらい)とドゥラメンテ(4.5馬身くらい)の例はある。この2頭は上がりで0.5秒(マリアライト)、0.7秒(ドゥラメンテ)キタサンを上回った。しかも、#3をちゃんと守っていた。とはいえ、理想はあくまでも2馬身以内。直線に向いて1馬身くらいだった有馬記念のサトノダイヤモンドが理想に思える。

#3について

ただ上がりが上回ればいいってもんじゃないことを天皇賞春のカレンミロティックが教えてくれた。
カレンミロティックは4角回るまでキタサンの背後にピタリとつけ、直線に向いて、馬体を合わせるように横付けして、抜け出した。しかし、そこからキタサンブラックのもうひと踏ん張りにあい、ゴール前で差しかえされた。

京都大賞典のアドマイヤデウスも上がりで0.2差キタサンを上回っていた。直線に向いた時の位置はキタサンブラックのすぐ後ろ。キタサンブラックとラブリーデイの間を抜けてきたけど、クビ差及ばず2着だった。

間を抜けてくるということはキタサンブラックへの接近を意味する。実際、横付けになっていた。つまりキタサンブラックの闘志を掻き立ててしまい、抜かせてもらえないということだ。レース後、武豊騎手が「着差以上に余裕があった」とコメントしていたけど、きっとそういうことなんだろう。

キタサンブラックは馬体が合わさるともうひと踏ん張りする。
宝塚記念では、マリアライトとキタサンブラックの間にラブリーデイがいた。ラブリーデイがキタサンに並びかけるとキタサンはもうひと踏ん張りして、ラブリーデイを突き放した。そのラブリーデイの外からマリアライトとドゥラメンテはやって来た。

ラブリーデイとの叩き合いを終えたあとに、その向こうから、馬体を離してマリアライトとドゥラメンテが襲ってきたので、クビ、ハナ差負けてしまったのかもしれない。再度闘志を掻き立てる時間もなかったのかもしれない。

有馬記念のときもキタサンブラックとサトノダイヤモンドの間にゴールドアクターがいた。ゴールドアクターの追撃を退けた、その向こうからサトノダイヤモンドが襲い掛かってきた。で、キタサンブラックはクビ差負けてしまった。

つまり、キタサンブラックに勝つには直線に向くときにはなるたけキタサンブラックの近くにいて、直線に向いたら、できるだけ馬体を離して、遠くから差す必要があるということだ。

遠くから差すということは、1頭で抜け出せる活力が必要ということだ。それはなかなか骨の折れる芸当だ。だから、キタサンブラックとの間に1頭挟むのは有効なのかもしれない。まずは内の馬にキタサンブラックと叩き合ってもらって、その馬がバテたところを差せるからだ。しかもキタサンブラックの視界からも消えられる。
(キタサンブラックにとっても、横の馬との叩き合いを蹴散らして、ひと息つくヒマもなく、その向こうから別の馬に出現されるのはやっかいだろう)

以上、#1〜#3が上手くいくと、クビ差勝てる。

で、思う。
改めて感じる。

キタサンブラックを負かすのは大変だ!

そこまでやってもクビ差勝ちだよ!

と。

以下は、キタサンブラックがディフェンディング・チャンピオンと認識されたであろう4歳になってからの成績。

産経大阪杯
1着アンビシャス    2-2-2-2 2人気 33.4 
クビ差
2着キタサンブラック  1-1-1-1 5人気 33.6
3着ショウナンパンドラ 5-5-5-3 4人気 33.3 
4着ラブリーデイ    7-7-5-6 1人気 33.4   

武豊はテン乗りだった。横山典はキタサンブラックの騎乗経験があった。
キタサンは58キロで、アンビシャスは56キロだった。その差が大きかったと思うけれど、直線で、2頭の間には馬1頭分くらいの開きがあった。横山典騎手が、馬体が接近しすぎないように追っているようにも見えた。


天皇賞(春)
1着キタサンブラック  1-1-1-1 2人気 35.0
ハナ差
2着カレンミロティック 3-3-3-3 13人気 34.8
3着シュヴァルグラン  9-9-11-9 3人気 34.5

キタサンブラックとカレンミロティックは馬体を合わせて叩き合っていた。産経大阪杯のアンビシャスとは接近度が違った。接近しすぎて、キタサンブラックの闘志に火をつけてしまい、差し返されたように見える。

宝塚記念 
1着マリアライト 11-11-10-6 8人気 36.3
クビ
2着ドゥラメンテ 13-13-10-9 1人気 36.1
ハナ
3着キタサンブラック 1-1-1-1 2人気 36.8

4着ラブリーデイ 7-8-5-3 4人気  36.7

ラブリーデイがキタサンブラックとマリアライトの間にいて、それがマリアライトにはベターだったように見える。あとは前記したとおり。

京都大賞典
1着キタサンブラック 2-2-2-2 1人気 33.6
クビ
2着アドマイヤデウス 3-3-3-3 6人気 33.4
3着ラブリーデイ   3-3-3-3 2人気 33.5
4着サウンズオブアース8-7-9-9 3人気 33.1

アドマイヤデウスは最内からキタサンと馬体を接近させて抜こうとした。でも前記した通り、抜けそうで抜けない。サウンズオブアースは0.5秒上がりで上回ったけど、この位置(4角回ってキタサンから5、6馬身)からではキタサンブラックと0.7秒以上の上がり差をつけないと抜けない。

ジャパンカップ
1着キタサンブラック 1-1-1-1  1人気 34.7
2馬身1/2 
2着サウンズオブアース7-7-9-9  5人気 34.5
3着シュヴァルグラン 9-9-12-10 6人気 34.4

このレースはキタサンブラックのひとり旅で独壇場だった。サウンズオブアースは4角回って4馬身くらい、シュヴァルグランは4角回って5馬身くらい。それで上がりで0.2秒、0.3秒上回ってもどうにもならない。

有馬記念
1着サトノダイヤモンド 4-3-3-3 1人気 35.5
クビ
2着キタサンブラック  2-2-2-2 2人気 35.8 
3着ゴールドアクター  3-3-3-3 3人気 35.7 
4着ヤマカツエース   9-10-13-12 8人気 35.1 

有馬記念では、サトノノブレスの戦法がサトノダイヤモンドを助けたのでは? と言われていたけど、助けたのはむしろゴールドアクターだったように思う。
最内先頭キタサンブラック、その横、やや後方にゴールドアクター、さらにその外にサトノダイヤモンドで直線に向き、キタサンブラックが横のゴールドアクターを蹴散らして、ほっとひと息突く暇もなく、サトノダイヤモンドの強襲にあった。
それでもクビ差しか負けてないんだからキタサンブラックはやっぱり強い。

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大阪杯で勝ちに行く馬
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今回は、直線に向いて、キタサンブラックと最初にやりあってくれたラブリーデイもゴールドアクターもいない。結果的に代役を務める馬が現れるかもしれないけど、そこは未確定すぎる。

つまり、ある程度先行して、なおかつ上がりで0.3秒くらいキタサンブラックを上回る脚を、馬体を離して、遠くから使えないと勝てないともいえる。

前哨戦でそんな練習をしていたと思わせるのは、サトノクラウンだ。京都記念では逃げるヤマカツライデン、2番手ガリバルディが直線に向いて内を突くのに対して、3番手にいたサトノクラウンは中から外に出して、末脚を伸ばしていた。

打倒キタサンブラックを想定しての競馬だったのか、直感的に馬場の良さそうなところを選んだのか定かではない。ただ結果的にはいい練習になったように見える。

金鯱賞のヤマカツエースも直線に向いたときには先頭から3、4馬身のところにいて、外から抜け出してきた。それが対キタサンブラック用の練習だったのかはわからないけど、外から1頭で抜けてきたのは悪くない勝ち方だ。

有馬記念では直線に向いたときにキタサンブラックから6馬身くらいのところにいて、外から内をついて伸びるもキタサンブラックからは0.3差の4着に負けた。上がりで0.7秒上回っていても勝ち負けには加われなかった。

昨年の12月の金鯱賞は直線に向いて先頭から5馬身くらいだったから、3月の金鯱賞の直線に向いて、3、4馬身は仮想キタサンブラックの練習も兼ねて、攻めたとも取れなくはない。

あとはマカヒキ。
有馬記念でサトノダイヤモンドを攻める騎乗で1着に導いたルメールはきっとマカヒキでも同じように騎乗するのではないか。その期待にマカヒキが応えられるかはわからないけど、マカヒキほどの馬に騎乗して、展開待ちみたいな競馬はできないだろう。

と、マルターズアポジー。
この馬はいつだって勝ちに行く競馬をしてるはず。有馬記念では直線に向いたときにキタサンブラックに交わされ、あっと言う間に馬群に飲み込まれたけれど、もし、2番手にロードヴァンドールがいたら直線への入り方が少し変わるかもしれない。

逃げるマルターズアポジーは置いておき、キタサンブラックよりも後ろで、勝ちに行く競馬をしそうな馬は3頭。

サトノクラウン・ヤマカツエース・マカヒキ。

この3頭とキタサンブラックが激突して、この3頭がみんな外に出したら、面白い!

いや、騎手はみんなキタサンブラックの強さの秘密を知ってるはずだから、キタサンブラックより後ろの馬全馬が直線で、外に出したらもっと面白い! 

キタサン以外はみんな大外! ワオ!

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大阪杯注目馬
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どんな馬でも勝ちに行く競馬で力が発揮できるわけではない。差しの馬が急に先行して味がなくなることも多い。しかも相手はこの1年で負けるにしても最大で「クビ+ハナ」差しか負けてないキタサンブラックだ。

サトノクラウンはともかく、マカヒキが万全かはまだ未知数だし、ヤマカツエースは勝ちに行く競馬ではまだ力が足りない可能性もある。

つまり、勝ちに行く馬たちが激突しあったら、おこぼれをちょーだいできるスキが生まれる可能性もあるってことだ。

勝つのはキタサンブラックかサトノクラウンか、復調したときのマカヒキかなと思いつつも、馬券的には3着狙いの競馬をしてきそうな馬を狙いたくなる。

アンビシャス
ミッキーロケット

この2頭は勝ちに行く競馬ではなく、勝ちに行く馬たちの後ろにつけて、あわよくば…ゴチに……授かりたい……。そんな競馬をしそうに思える。前走、ともに人気(アンビシャス1人気、ミッキー2人気)で4着に負けていることがよりそう思わせてくれる。

と、マルターズアポジー。
前記したようにマルターズアポジーとキタサンブラックの間にロードヴァンドール入ってくれると、少し期待したくなる。馬体を合わせられることなく、直線に向けたら、うむ、少し期待したくなる。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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