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【JRA通算500勝】柴山雄一騎手(4)『あと10年乗るためにはどうしたらいいか』

  • 2017年04月03日(月) 18時01分
おじゃ馬します!

▲最終回のテーマは、「あと10年乗るため」に柴山騎手が人知れず努力していること


今回が柴山騎手のインタビュー最終回。今年で39歳の柴山騎手。ジョッキーとして浮き沈みを経験して、流れを取り戻した今、できるだけ長く馬乗りを続けていたいと言います。そのために努力していること、騎乗で気をつけていることをお聞きしました。さらに、意識している騎手仲間や、皐月賞を目指すエトルディーニュの手応えなど、最後まで本音満載でお届けします。(取材:赤見千尋)


(前回のつづき)

刺激になっている柴田大騎手や北村宏騎手の存在


赤見 ジョッキーになって丸19年。今年はいよいよ30代最後の年ですね。

柴山 年取ったよねぇ(苦笑)。あれ? 赤見ちゃんも同じでしょ?

赤見 はい。同級生ですから(笑)。たくさんの経験を積んだ今、騎乗するうえで一番大事にされているのはどんなところですか?

柴山 最近意識しているのは、周りのジョッキーにもっと“嫌がられる乗り方”をしたいということ。何をするのかわからなかったり、「コイツ、またいい位置にいるよ」みたいなね。言葉でいうほど簡単ではないんだけど。

赤見 なるほど。逆に柴山さんがそう思うのは誰ですか?

柴山 誰だろう……あ、田辺かな。

赤見 わかる、わかる!

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▲先月の日経賞をシャケトラで制した田辺裕信騎手(撮影:下野雄規)


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柴山 俺がほしかった位置によくいるんだよなぁ。「あ、また田辺に取られた」みたいなね(笑)。そのあたり、田辺は本当に巧いと思う。あと、納得できる競馬をしたいなと思うね。大事にしていることといったら、最近はそれが一番かな。

赤見 同じ負けるにしても…ということですよね。

柴山 そうそう。今は乗り替わりが多いでしょ? そんななかで、勝っても負けても、ある程度自分のなかで納得できていれば、たとえ次走でチェンジとなったとしても自分のなかで許せるというか。ミスして替えられるのは当たり前なんだから、せめて最低限、自分が納得できる騎乗をしたい。もちろん、本当はどの馬も取られたくないけどね。

赤見 柴山さんに限らず、一人のジョッキーがずっと乗り続けるなんて今はレアケースですものね。その点でも、アルビアーノは特別だったんじゃないですか?(デビュー戦からマイルCSまで8戦連続騎乗)

柴山 本当になかなかできない貴重な経験をさせてもらいましたから。アルビアーノにも関係者の皆さんにも感謝してます。しかも乗り替わったとき、周りの人が「ネットに“柴ちゃんがいい”っていう書き込みがあったよ」って教えてくれたりして。「マジかー! いいこと書いてくれるねぇ」なんて話してたんだけど、やっぱりそういうのは嬉しいもんだよね。でも、あのときは乗り替わったのがクリストフで(2016年3月5日・オーシャンS5着)。ある意味、納得したというか。

赤見 やはりルメール騎手は、同業者から見てもそういう存在なんですね。影響を受けたりしていますか?

柴山 もちろん。俺が乗っていた馬に乗る機会が多いからね。ま、簡単にいうと、それだけ取られてるわけやけど(苦笑)。でもクリストフの騎乗は本当に勉強になるから、納得できるんだよね。当たりも違うし、違った乗り方を見せてくれるから。さすがに乗り替わってすぐに勝たれると、「それはアカーン!」ってなるけどね(笑)。

赤見 ですよね(笑)。そのほかに影響を受けている方はいますか?

柴山 普段の取り組みでいえば、(柴田)大知とか(北村)宏司の存在は刺激になるね。

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▲北村宏司騎手と柴田大知騎手 (C)netkeiba


赤見 そうなんですね。具体的にはどんなところが?

柴山 二人ともとにかく真面目。大知なんて、本当に毎日同じことをしてる。人より早くトレセンにきて、決まったストレッチをやって、それから調教に行く。それはもう、きっちりきっちり。そういう姿勢を見ていると、「頑張ってるなぁ。俺も頑張らな!」っていう気持ちになる。普段はこんな真面目な話はしないけど、そういう姿勢は見習いたいなっていつも思ってるよ。

赤見 では、最後にこれからの目標を教えてください。

柴山 目標はやっぱりGIを勝つこと。今はGIに乗ること自体が難しいけど、そのなかでもなんとかチャンスを生かしたい。今の目標はそれだけやね。

赤見 共同通信杯2着のエトルディーニュの皐月賞出走は、賞金的にボーダーラインのようで…。(※エトルディーニュは皐月賞の登録を見送りました)

柴山 そうみたいやねぇ。出走できたらいいんやけど。あの馬、本当に頑張り屋だから。

赤見 どんな馬なんですか?

柴山 最後までしぶとい馬。俺が「頑張って!」って言ったら、ずっと頑張ってくれるような。

赤見 なんて健気なの!

柴山 共同通信杯の直線でそう思ったよ。クリストフ(タイセイスターリー4着)が前にいて、“これはダメかな、たぶん変わらねぇなー”と思っていたら、最後の最後に差してくれたからね。勝ち馬(スワーヴリチャード)はもう抜けていたからどうしようもなかったけど、“すっごいな、この馬”って感心した。

赤見 そうだったんですね。レース後、(エトルディーニュを管理する)小桧山先生がものすごく喜んでいらしたのが印象的です。

柴山 そうそう、俺のほうがビックリした。「2着でこんなに喜ぶ調教師いないだろ! ワハハハ!」って(笑)。

赤見 みなさん楽しそうで、すごくいい雰囲気だなと思って見ていました。

柴山 もちろん勝てれば最高だったけど、ああやって喜んでもらえるのは本当にありがたいよね。騎手をやっていて、周りが喜んでくれるのが一番うれしいよ。毎週その気持ちを味わいたいなと思うけど、なかなかねぇ。39歳にもなって怒られてばっかりで(笑)。

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▲「周りが喜んでくれるのが一番うれしい。39歳にもなって怒られてばっかりで(笑)」


赤見 でも、今回お話をうかがって改めて思いましたけど、39歳にしてすごく濃い人生ですよね。ジョッキーになるまでも大変だったし、なってからもいろいろあって…。

柴山 それはみんな同じでしょ。浮き沈みがないジョッキーなんて、ほんの一握りだと思うよ。たぶん、上にいる人は、俺とはまた違う悩みを抱えているはずだし。

赤見 確かにそうかもしれませんね。

柴山 GIを勝ちたいのはもちろん、最近は長く乗りたいなと思ってね。あと10年乗るためにはどうしたらいいかを考えて、体作りや競馬前後のケアに、真剣に取り組むようになった。

赤見 でも筋トレはほどほどに…。すぐムキムキになっちゃうから(笑)。

柴山 それは自分が一番よくわかってます(笑)。俺自身、まだまだ叶えたい目標がたくさんあるし、お世話になっている人たちにももっと喜んでもらいたいので、取り戻した流れを止めないように今年も頑張ります!

(文中敬称略、了)

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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