スマートフォン版へ

BTC育成調教技術者養成研修開講式

  • 2017年04月05日(水) 18時00分
BTC開講式集合写真

BTC開講式集合写真


この研修にもう少し密着して追いかけてみたい

 去る4月4日。浦河にあるBTC(公益財団法人・軽種馬育成調教センター)診療所にて、この春より育成調教技術者を目指す若者19名が、晴れて開講式に臨んだ。数えて今期で第35期となる。研修期間は1年間。来春の修了式まで、400鞍以上の騎乗訓練を中心に馬学一般を学び、その後は各地の育成牧場などに即戦力として就職することになる。

 19名は、男子17名、女子2名の内訳で、北海道が2名の他は17名が本州出身者である。年齢別では19名中14名が18歳。その他、19歳、20歳、21歳が合わせて5名。今期は、年齢差がひじょうに小さく、今春高校を卒業したばかりのフレッシュな顔ぶれが中心だ。

 午前11時。開講式の開催される診療所2階にある会議室に集合した19名は、そこで式に先立ち、規律と着席、礼などの予行練習を済ませた。

 開講式開始は11時半。来賓や保護者が見守る中、まず研修生が1人ずつ名前を呼ばれ、紹介された。その後、まずBTCの大平俊明理事長よりの式辞、さらに、来賓各位からも、それぞれ研修生に向けて激励の祝辞が贈られた。

BTC開講式風景

BTC開講式風景

 式典は20分程度で終了し、その後、集合写真を撮影。そして、正午より、隣の部屋に会場を移動しての昼食会となった。

開講式後の昼食会風景

開講式後の昼食会風景

 8つのテーブルに研修生や来賓、保護者などが分かれての立食形式である。ここで少しずつ研修生の表情も緩み、中ほどで、恒例の「自己紹介」が行なわれた。研修生は便宜上、アイウエオ順に番号が付されており、その順番に従って1人ずつ前に進み、1年間どういう研修を目指すか、また将来の夢はどういうものであるかを語るのである。

 ざっと60〜70人の前でマイクを持ち、出席者の視線が集中する中で声を出してスピーチをするのはなかなか勇気の要ることではあるが、まずこれが研修の第一歩というわけだ。

 将来の抱負については、予め用意された開講式のパンフレットにもそれぞれ記されている。「日本だけではなく、海外に通用する馬づくりを目標にしたい」「多くの方から信頼される人間になりたい」「アイルランド研修に参加したい」「自分が手がけた馬で凱旋門賞や海外のレースでも通用するような馬を育てたい」「日本の競馬界を盛り上げて行きたい」「牧場の中核的存在となって活躍する馬を多く育てたい」「GI、三冠馬を育てたい」「厩務員になりたい」「いずれは海外に渡り、馬づくりをしたい」「自分の手で(勤務先を)有名な牧場にしたい」等々、フレッシュで前向きな声が多く聞かれた。

 昼食会の時に、木戸司君と谷内信一君(ともに神奈川県出身の18歳)にお話を聞いた。木戸君は、父親が川崎競馬の河津裕昭厩舎で厩務員として働いており、彼にとって競馬は身近な存在であった。周知のように、河津厩舎は、昨夏の札幌2歳ステークスを制したトラスト(その後中央の中村均厩舎に移籍)や、コスモスを管理する厩舎であり、木戸君は「馬と関わる仕事」がどういうものであるかを知っている立場でもある。自分の手で育てた馬がレースに勝ち、関係者と喜びをともにする魅力を肌で知っているとも言える。

木戸司君

木戸司君

 その点、谷内信一君の方は、家族はもちろん親類縁者にも競馬関係者は皆無の環境で育ち、高校3年の途中までは、漠然とどこかの大学に進学するというような進路を考えていたらしい。

 ところが、SNSで知り合った方からこの研修の存在を教えられ、馬への道を本気で考えるようになったという。「こういう研修制度自体を知らない人が多いと思うので、もっと周知されるべきだと思います」と語っていた。谷内君は競馬を見始めたのが小学校2年生だという。以来ずっと競馬ファンであったわけだが、「競馬の仕事は業界人の子供しか就けないものと勝手に思っていました」ともいう。

谷内信一君

谷内信一君

 もちろんBTCでも、馬の仕事に就きたいという若者に向けてさまざまなアナウンスを実施しているわけだが、谷内君のように、まだまだこの研修制度の存在を知らずにいる若者もいるわけで、今後の広報活動の方法にさらなる一工夫が求められるだろう。

 今年こそ、本腰を入れて、この研修にもう少し密着して、追いかけてみたいと考えている。1年間でまったく馬に触ったことのなかった若者たちが、どういう風に育成調教技術者として育てられていくのかを、節目ごとに取材させていただこうと思っている。

 なお、来週の14日金曜日には、昨春入講した第34期生が晴れて修了式を迎える予定だ。いずれその模様についても触れるつもりでいる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング