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10歳馬ドリームバレンチノの挑戦/東京スプリント

  • 2017年04月18日(火) 18時00分


6歳の秋にダート路線に転向


 4月19日(水)、大井競馬場で行われる『第28回東京スプリント』。以前は「東京シティ盃」という名称で行われていましたが、2009年にダートグレード競走に格付けされ「東京スプリント」という名称になった春の短距離重賞です。

 スプリント王ダノンレジェンドの引退で混戦模様となったスプリント戦線。10頭立ての今年のメンバーを見てみるとJRAから5頭、浦和から3頭、大井から2頭。年齢別では10歳1頭、9歳4頭、8歳2頭、7歳1頭、5歳2頭と高齢馬が多い顔ぶれになりました。

 力関係の考察の前に、注目が集まる10歳馬ドリームバレンチノのこれまでの蹄跡を簡単に振り返りましょう。

 ドリームバレンチノは2007年2月22日生まれ。父ロージズインメイ、母コスモヴァレンチ、母父マイネルラヴの青毛の牡馬。2009年10月に京都の新馬戦(芝1200m)でデビューするも3着。鞍上は先日アルアインで皐月賞を制した松山弘平騎手。続く2戦目も松山騎手とのコンビで未勝利戦(京都・芝1400m)を勝ち、初勝利を挙げます。

初勝利は2009年11月の2歳未勝利戦だった


 その後は2010年3歳で500万下、1000万下を1勝ずつで2勝。2011年4歳では降級もあり1600万下を2勝してオープン入り。ゆっくりと一歩ずつクラスを上げていきました。

 躍進が始まったのは2012年5歳になってから。4月の福島民友C(OP・芝1200m)、5月の安土城S(OP・芝1400m)を連勝すると続く函館スプリントSを3連勝で勝利し重賞初制覇。キーンランドCでは2番人気7着でしたが、GI・スプリンターズSでロードカナロアの3着に健闘します。

2012年のスプリンターズSではロードカナロア(右)の3着と健闘(ドリームバレンチノは左端)(撮影:下野雄規)


 2013年、6歳になったドリームバレンチノは1月、休み明け初戦のシルクロードSで重賞2勝目を挙げ、高松宮記念ではロードカナロアの2着とGIに手が届く位置まで来ていました。連覇を狙った函館スプリントSが7着、セントウルSは3着、スプリンターズSでは6着と続き、この年の11月、ダート路線に転向。初めてのダート戦に選んだのはJBCスプリント(金沢・ダート1400m)。芝の実績馬とはいえ初ダートの不安から5番人気でしたが、王者エスポワールシチーの2着に好走し、競馬ファンをあっと言わせます。

 ダート転向2戦目の兵庫ゴールドトロフィーを快勝。その後は短距離のダートグレード競走になくてはならない存在となり、2014年7歳でついにJBCスプリント(盛岡・ダート1200m)を制覇。JpnIホースに輝きます。

 2015年8歳時は勝ち鞍こそありませんでしたが、黒船賞2着、東京盃2着、兵庫ゴールドトロフィー2着など全国各地の競馬場で活躍。昨年2016年には9歳で東京盃を制覇。不良馬場の大井で直線一気の差し切り。コーリンベリー、ダノンレジェンドらを相手にしての見事な勝利で「古豪健在」を見せつけました。

2016年の東京盃で差し切り勝ち、健在ぶりを示した(撮影:高橋正和)


 デビュー以来50戦12勝。重賞5勝(うち芝2勝、ダート3勝)のJpnIホース。今年10歳を迎え、まだまだ元気な姿を見せてくれています。10歳馬の平地重賞勝利は2008年に小倉大賞典を勝ったアサカディフィート、2012年にステイヤーズSを勝ったトウカイトリックの例があり、地方馬ではオースミダイナーが2000年12歳(当時の年齢表記では13歳)で北海道スプリントCを制覇し、13歳でホッカイドウ競馬の重賞・エトワール賞を制しています。歴史に名を残す1頭として、10歳馬ドリームバレンチノの戦いをしっかりと見届けたいと思います。

実績ある古豪たちと地方重賞初挑戦の5歳馬2頭


 今年の東京スプリント出走馬の顔ぶれを改めて見てみると、ドリームバレンチノの実績を考えれば恐れるメンバーは不在と言ってもいいでしょう。ロードカナロア、エスポワールシチー、ダノンレジェンドなどこれまで戦ってきた相手と比べると今回はかなり楽なメンバー。年齢を考えなければ断然の1番人気でもおかしくありません。今回1頭だけ58kgですが、59.5kgや59kgでも戦ってきたことを思えば、昨年東京盃を勝った時と同じ58kg(この時も1頭だけ58kg)で挑めるというのはむしろ好材料。今まで何度も我々をビックリさせてくれた古豪が、再び嬉しい驚きをくれることを期待します。

 相手筆頭はこちらも高齢馬、9歳のレーザーバレット。2015年、7歳でテレ玉杯オーバルスプリントを制し重賞初制覇。2015年のJBCスプリント4着(ドリームバレンチノは5着)ののち兵庫ゴールドトロフィー1着(ドリームバレンチノ2着)。さらに昨年のJBCスプリント4着(ドリームバレンチノ10着)と、近走一緒に走ったレースでドリームバレンチノに先着しています。昨年、テレ玉杯オーバルスプリントを勝って重賞3勝。1200mより1400mの方が好成績な点は気になりますが、ドリームバレンチノにとって一番怖い存在です。

レーザーバレットは2016年のテレ玉杯オーバルスプリント(写真)の覇者(撮影:武田明彦)


 JRA勢の残る3頭は皆初めての地方競馬参戦。8歳馬ブライトラインは3歳時にファルコンS(芝1400m)を制し、日本ダービー(17着)にも出走した素質馬。4歳でダートに転向し、2013年のみやこSを制しています。とはいえその後なかなか勝ち星を挙げられず、昨年4月のオアシスS(東京・OP・ダート1600m)で久しぶりの勝利。前走・夢見月S(中京・OP・ダート1400m)では59kgを背負って2着。56kgの今回はさらなる前進があるかもしれません。

芝ダート両方で重賞を制覇しているブライトライン(写真は2012年ファルコンS、(C)netkeiba)


 キタサンサジンはサウスヴィグラス産駒の5歳馬。今年の1月、羅生門S(京都・1600万下・ダート1400m)を勝ってオープン入り。ブライトラインが2着だった夢見月Sでは5着、前走・コーラルS(阪神・OP・ダート1400m)3着。1200mは[3-4-2-2]で連対率63.6%。初めての地方競馬場ですが、鞍上に大井を知り尽くした内田博幸騎手を迎えてどんな走りを見せてくれるか目が離せない1頭です。

昨年の羅生門S(写真)を勝ってオープン入りしたキタサンサジン(C)netkeiba


 ダノングッドはElusive Quality産駒の5歳馬。前述した夢見月Sで6着。昨年6月に安芸S(阪神・1600万下・ダート1400m)を勝ってオープン入り。こちらも初めての地方競馬。1200mで勝ち鞍が無いのが気になります。

 地方勢で注目はサトノタイガー。こちらも9歳の古豪。2014年の川崎マイラーズ、アフター5スター賞を制し、同年盛岡で行われたJBCスプリントでドリームバレンチノの2着、続くカペラSでもダノンレジェンドの2着とダート短距離路線で実力上位を見せつけました。2015年10月の大井・'15インタラクションCの勝利以来勝ち星がありませんが古豪復活をかけての挑戦、見せ場を作って欲しい1頭です。

2015年10月の'15インタラクションC(写真)以来の勝利を目指すサトノタイガー(撮影:高橋正和)


 ダートのスピード自慢が揃う東京スプリント。実績のある馬たちがドリームバレンチノ(10歳)、レーザーバレット(9歳)、サトノタイガー(9歳)、ブライトライン(8歳)と古豪揃い。ここに新顔の5歳馬たちが若さと勢いでどこまで迫ることができるか?!という様相で、現時点での力の比較が難しい一戦。私は古豪たちの実績にかけてみようと思いますが、ナイター競馬初参戦の馬たちもいて当日の状態チェックも重要になってきます。今年のスプリント戦線を占う戦い、皆さんもぜひご自身の目で各馬の力比較をしてみてください!

※次回の更新は5月2日(火)18時。名古屋競馬場で行われる「かきつばた記念」のコラムをお届けします。


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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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