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近年にない混戦模様のケンタッキーダービー展望

  • 2017年04月19日(水) 12時00分


◆乱世が収束しないまま本番を迎えようとしている

 17日(月曜日)に海外ニュースとして配信したように、先週末をもってケンタッキーダービーへ向けたポイント指定競走の全日程が終了。5月6日にチャーチルダウンズで行われる第143回ケンタッキーダービー(d10F)出走馬がほぼ固まった。

 今年の北米3歳戦線は、随所で波乱が起こり、近年にない混戦模様と言われている。3月半ばまでに見られた「波乱」については、3月29日付けの当コラムをご参照いただきたい。

 その後も、東海岸で2重賞を制していたエルアリーブ(牡3)が右前膝に剥離骨折を発症して戦線離脱。G3サウスウェストSを含めて3戦3勝だったワンライナー(牡3)も、出走を予定していたG1アーカンソーダービーへ向けた追い切りの動きが芳しくなくて放牧へ。そして、8日に行われた地元ケンタッキー州における最終プレップのG2ブルーグラスSで、ブービー人気だった未勝利馬が優勝するという大番狂わせが起こるなど、乱世が収束しないまま本番を迎えようとしている。

 ブックメーカーの多くが1番人気に推すのがオールウェイズドリーミング(牡3、父ボードマイスター)だが、ついているオッズが7〜8倍というあたりにも、戦線の混迷ぶりがよく表れている。

 G1スピナウェイS(d7F)勝ち馬ホットディキシーチックの半弟で、今年1月にデビュー3戦目のメイドンで初勝利を挙げると、そこから一気の3連勝で4月1日にガルフストリームパークで行なわれたG1フロリダダービー(d9F)を制したのがオールウェイズドリーミングだ。それも、3連勝中に2着馬につけた着差の平均が6.3/4馬身で、G1フロリダダービーも5馬身差の楽勝という快進撃を見せている。

 そのオールウェイズドリーミングと横並びで1番人気にしている社もあれば、オッズにわずかの差をつけて2番人気にしている社もあるのがクラシックエンパイア(牡3、父パイオニアオヴザナイル)だ。

 2歳時の戦績5戦4勝。G1BCジュヴェナイル(d8.5F)、G1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F)という2つのG1を含む3重賞を制し、全米2歳牡馬チャンピオンに選出されたクラシックエンパイア。ところが、今季初戦となった2月4日のG2ホーリーブルS(d8.5F)で、パドック、馬場入場、ゲート入りまで終始ひどいイレコミを見せ、勝ち馬から8.3/4馬身遅れの3着に敗退。その後、右前脚の蹄に膿腫を発症したこともあり、じっくりと時間をかけて立て直しを図られ、戦列に戻ったのが4月15日にオークローンパークで行われた「ダービー最終便」のG1アーカンソーダービー(d9F)だった。そして、ここではイレコミも見せずに本来の競馬をして快勝し、復活をアピールしている。

 ブックメーカー各社が8〜10倍のオッズを掲げ、差のない3番人気に推しているのが、アイリッシュウォークライ(牡3、父カーリン)だ。イザベル・ハスケル・ドトマソ女史(86歳)による、ニュージャージーにおける自家生産馬。母も祖母も曾祖母もドトマソさんの生産所有馬であった。昨年11月のデビューから無敗の3連勝でG2ホーリーブルSを制した後、G2フォンテンオヴユースS(d8.5F)では7着に敗れて連勝が止まったものの、4月8日にアケダクトで行われたG2ウッドメモリアルS(d9F)では再び強さを見せて3.1/2馬身で快勝。G1初制覇を果たしている。ひと桁台のオッズがついているのは、ここまで。

 11倍〜15倍のオッズで4番手評価なのが、マクラケン(牡3、父ゴーストザッパー)だ。デビューからG2ケンタッキージョッキークラブS(d8.5F)まで、チャーチルダウンズで無敗の3連勝。今季初戦となったタンパベイダウンズのG3サムデイヴィスS(d8.5F)も白星で通過後、左前脚の球節を傷めて予定をしていたG2タンパベイダービー(d8.5F)を回避。8週間ぶりの出走となった4月8日にキーンランドで行われたG2ブルーグラスS(d9F)で3着に敗れて、5戦目にして初の黒星を喫した。

 一頓挫があった後だけに、この敗戦は致し方ないとの見方がある一方、前述したようにブルーグラスSの勝ち馬はブービー人気だったアイラップ(牡3、父ティズナウ)で、このクラスに負けているようではダービー制覇など覚束ないとの見方もあり、評価が定まっていない。

 5番手以下には、3月25日にメイダンで行われたG2UAEダービー(d1900m)をエピカリスとの接戦の末にモノにし、G3UAE二千ギニー(d1600m)に続く2冠を達成したサンダースノウ(牡3、父ヘルメット)。4月1日にフェアグラウンズで行われたG2ルイジアナダービー(d9F)を制し、前走のG2リズンスターS(d8.5F)に続く重賞連勝を飾ったガーヴァン(牡3、父テイルオヴエカティ)。G2フォンテンオヴユースSを5.3/4馬身差で制して3度目の重賞制覇を果たした後、4月1日のG1フロリダダービーが3着だったガナヴェラ(牡3、父ダイアルドイン)。昨秋のG1BCジュヴェナイル(d8.5F)3着馬で、今季初戦のG2フォンテンオヴユースS2着、前走G2ブルーグラスSも2着だったプラクティカルジョーク(牡3、父イントゥミスチフ)。4月8日に行われたG1サンタアニタダービー(d9F)で3度目の重賞制覇を果たしたゴームリー(牡3、父マリブムーン)までが、オッズ15〜21倍の間にひしめきあっている。

 現段階では下位人気の馬の中にも、一発ありそうな馬もおり、目の離せないケンタッキーダービーとなりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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