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明暗の分かれ道

  • 2017年04月20日(木) 12時00分


◆それぞれがおかれていた立場が微妙にちがっていた

 そのひと山を乗り越えれば、大きく展望が開け、さらにその器をひとまわり大きくできる、皐月賞を見てそんな思いが頭に浮かんだ。

 明と暗の分かれ道は、どこにあったのか。

 大荒れと言っても、そんな簡単な決めつけはできない。コースレコードタイの決着の上に、勝ちタイムから1秒以内に15頭もがひしめく大接戦。69年ぶりの牝馬の優勝をと期待されたファンディーナは7着に終ったとは言え、その着順でも、アルアインから0秒5しか負けていないのだから、高野調教師の言うように「今日に関しては力負けだった」としか言い様はない。それぞれがおかれていた立場が微妙にちがっていたので、そこにこそ明暗の分かれ道があったと思う。

 常にマークをされる立場では、普通に走っているようでもどこか窮屈な思いをしている。ファンディーナの岩田騎手は、内側の4番手につけていたのだから、上手に戦っていたのだ。まわりの牡馬たちもそれぞれの位置で動けずもがいているのだから、たまたまどこの、どういうところにつけていたかで明暗が分かれていた。いく分でも前にいた一番人気馬は、4角手前で外へ動き、いったんは先頭に立ったが、全体に紛れの生じやすい中山コースだから、これが一番の安全策に見えた。ところが、それまでの周囲からのプレッシャーがこたえたことと、出走馬のレベルが平均的に上がっていることもあり、その為に伸びを欠いてしまったというのだろう。

 人の生き方は正念場をどうしのぐかで明暗は分かれるが、競馬は、力関係に裏打ちされた人気という立場の違いがあるから、簡単ではない。勝ち馬アルアインは、4角でちょっと抑圧されて前に壁ができたが、前を行くファンディーナが先に抜け出したのを見て、一瞬開いたところを一気に出ていくことができた。松山騎手も自分のことだけを考えて気負わず走らせていたのがよく、2着のペルシアンナイトは、2度、3度とごちゃつく中でスムーズさを欠いていた。それぞれがどう戦い、どういう課題を抱いたか。全体に拮抗した面々だから、ダービーに向って全く新たな戦いが始まる。久々に、高いレベルでの戦国ダービーと呼びたい。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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