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千載一遇のチャンスを生かしたキタサンサジン/東京スプリント・大井

  • 2017年04月20日(木) 18時00分

撮影:高橋 正和




これからさらにという活躍が期待できるキタサンサジン


 10頭立てという少頭数もそうだが、中央勢は近年ダート短距離路線を引っ張ってきたダノンレジェンドが引退し、昨年のこのレースの覇者コーリンベリーも骨折休養中。実績馬は10歳で58kgを背負うドリームバレンチノと9歳のレーザーバレットだけ。手薄ともいえるメンバーで、準オープン勝ちまでという実績のキタサンサジンが1番人気を背負うことになり、その人気にこたえて見せた。

 キタサンサジンは3月の黒船賞を補欠のまま除外となっており、ここで中央の出走枠5頭の中に入れたのは、まさに幸運と言うべきで、そのチャンスを見事に生かした。そもそも黒船賞の結果が、勝ったブラゾンドゥリス、2着のキングズガード、ともにオープン勝ちまでという実績で、ダート短距離路線は世代交代の過渡期にある。

 キタサンサジンに初騎乗となった内田博幸騎手に迷いはなかった。「(スタートで)トモを滑らせて他の馬より半馬身くらい遅かった」(内田博幸騎手)が、それでも気合を入れて大外枠(といっても10番枠)からハナをとりに行った。結果的に、これが最大の勝因といっていいだろう。

 中距離を使われていた当時は逃げていたこともあるダノングッドが一旦は先頭に立ったものの、キタサンサジンの行く気を見てすぐに控えた。先行争いにはならず、キタサンサジンがハナに立ったところで隊列が落ち着き、前半3F通過は35秒4。前半34台もめずらしくない大井1200mのダートグレードとしてはスローな流れとなった。

 集団の後方を追走していたブライトラインがメンバー中唯一となる36秒台の上がりで迫ったが、ハナを奪ってからひと息入れられたキタサンサジンには、しのぎ切るだけの余力が残っていた。

 中団を追走していたレーザーバレットは、勝ち馬から2馬身ほどの差で3着。地方を使われるようになってからはコーナーを4つ回る1400m戦で結果を残してきた同馬にとって、決して得意とはいえない大井1200mの舞台で、9歳という年齢も考えれば好走といえるだろう。ダノングッドは中央馬で唯一単勝オッズが10倍以上だったという人気どおりの結果。ドリームバレンチノは、58kgを背負ってスローペースではさすがに出番はない。

 そう考えると、結果論とはいえ、キタサンサジンにはさまざまに条件が味方しての勝利だった。ここまで21戦して3着以内を外したのはわずか4回だが、1000万条件での足踏みが長かった。それでも準オープンは2戦で卒業、オープンを2戦して重賞初挑戦での勝利となった。

 キタサンサジンの父サウスヴィグラスは、7歳の引退レースとなったJBCスプリントがGI初制覇だったように、短距離馬としてはめずらしくじわじわと力をつけ、息長く活躍。産駒にもそのようなタイプがめずらしくなく、キタサンサジンにもこれからさらにという活躍が期待できる。秋の大一番、JBCスプリントに向け、この路線の中心馬となっていくようなら、今回の東京スプリントはキタサンサジンにとって活躍のきっかけとなるレースだったと評価されるようになるだろう。

 中央5頭が掲示板を独占し、地方馬最先着はレアヴェントゥーレ。高齢馬ばかりだった地方馬の中ではもっとも若い7歳。スタートでタイミングが合わなかったのか、大きく出遅れたのが痛かった。中央では5歳時に1000万条件で頭打ちになっての浦和転入だけに、その後、勝つときは圧勝、負けるときはあっさりというレースを繰り返しながらも確実に進化している。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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