◆長距離戦こそ、レベルの差は時計に出ることが多い 波乱のつづく理由はある。めったなことでは大崩れなどない底力を備えた本物の長距離型が少なくなったからである。かつて、厳しい3200mになる東京の天皇賞・秋は負けたが、流れの落ち着くことが多い京都3200mなら勝てた馬がいっぱいいた時代があった。
京都の天皇賞・春3200mは負けたが、東京の天皇賞・秋3200mを勝った馬などまずいなかった。
しかし、時は流れ、3200mの天皇賞は京都だけになるのと歩調を合わせ、マイル〜中距離指向が進むと、本物の長距離型が減った。よって、順当に決着することが多かった京都の天皇賞・春3200mが波乱の歴史を受け継ぐことになったのである。
ディープインパクトの勝った2006年を最後に、最近10回の天皇賞・春の1番人気馬【0-0-1-9】は驚愕の記録。ハンデ戦ではない。定量戦で2着にもとどまれない完敗が続いている。これは1番人気馬が信用できないとか、たたられているとか、そういうことではないだろう。慣れない3200mになると、どの馬の信頼性も著しく低下するということである。
昨年の後半からここまで、春の天皇賞に関係するレースの中に、納得できるレベルの高いレースはあったか。ジャパンCの2分25秒8は、渋馬場を含めてさえ、過去10年で8番目に遅いタイムだった。少なくともレベルは高くない。有馬記念の2分32秒6も速くはない。これをいうと「競馬は時計ではない」とされることが多かったが、あれは50年以上も前のシンザンに対して用いられた名言であり、いま、重馬場を別にすると、ヨーロッパでも時計勝負の時代である。理由は明快。別に時計は遅くてもいいが、弱い馬は速く走れないことが改めて分かっただけのこと。
自分の国ではいいかもしれないが、世界で相手にされない。高い評価を受けることが不可能になっては、サラブレッドビジネスが成立しないのである。
そんな中、阪神大賞典3000mは「61秒5-60秒4-60秒7」=3分02秒6。ふつうはありえないが、みんな息を入れたいレース中盤の1000mが最も速い厳しいペースになり、コースレコードと0秒1差。京都の3000mと比較すると時計を要する阪神で、
サトノダイヤモンドは菊花賞の時計を0秒7も短縮してみせたのである。「長距離戦こそ、レベルの差は時計に出ることが多い」。サトノダイヤモンドは菊花賞より、さらには有馬記念よりパワーアップしている。この3000mのハロンラップ平均は「12秒17」である。ジャパンCを快勝した
キタサンブラックの2分25秒8は、ハロン平均「12秒15」であり、200mで「0秒02」は本当の微差である。
サトノダイヤモンドは、距離が600m長い阪神大賞典を、キタサンブラックのジャパンCの速度を保ったまま乗り切ったに等しい。そういう、ちょっと乱暴な換算をしてみたい。サトノダイヤモンドは長距離適性がありそうである。
ただし、サトノダイヤモンドにも死角はある。有馬記念で負担重量差2キロの利があって、クビしか先着できなかったキタサンブラックに、定量58キロで先着できるだろうか。この距離では枠順の有利、不利など小さな要素と思えるが、欧州のインにこだわる競馬育ちのC・ルメールは、この枠順を大きな不利と考えすぎていないだろうか? キタサンブラックも本当は2000〜2400mくらいがベストと思えるが、サトノダイヤモンドも本当は2400mくらいを理想とする中距離タイプではないのか?
キタサンブラックの死角は、昨年、カレンミロティックと叩き合った3分15秒3のレースレベルが低いだけでなく、ジャパンCも前述のように10年間で8番目の時計レベルも気になる。一段とたくましくなって強くなった印象とは逆に、モリモリの540キロ前後になった馬体は長距離OK型とはいえないのではないか?
阪神大賞典を評価して、サトノダイヤモンド、
シュヴァルグランを中心。例年の穴馬のパターンに入っている(日経賞か、阪神大賞典で悪い内容ではないのに、一気に人気の下がった)
アドマイヤデウス、途中からハナに行く手もある
ゴールドアクターを絡めた馬券も買いたい。