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平沢健治騎手(最終回)『16年目での重賞初制覇 歓喜とは真逆のクールすぎる対応』

  • 2017年05月01日(月) 12時01分
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▲16年目での重賞初制覇に歓喜…かと思いきいや?平沢騎手の意外すぎる性格が明らかに!


昨年の小倉サマージャンプで重賞初制覇を果たした平沢騎手。相棒は、障害練習から共にしてきたマキオボーラー。自身にとっても馬にとっても初めての重賞制覇で、さぞかし感慨深いものがあったのかと思いきや…周りも驚く? 意外な反応を見せたとかで。「僕が冷めすぎているんでしょうけど…」と自己分析する平沢騎手。その独特な素顔がどんどん現れてきます。(取材:東奈緒美)


(前回のつづき)

馬に乗ることとお金は大好きでも(笑)、名誉とかには興味がないんです


 栗東に移籍されて以降、一気に重賞への騎乗機会が増えましたよね。そのなかで出会ったのがマキオボーラー(今年1月に引退)。未勝利戦から騎乗されて、昨年の小倉サマージャンプでは、人馬そろってうれしい重賞初制覇となったわけですが、そもそもどういったきっかけで騎乗されるようになったのですか?

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▲2016年7月30日の小倉サマージャンプで人馬ともに重賞初制覇 (C)netkeiba


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平沢 厩舎の方から、「(障害の)練習をしてくれないか?」と依頼をいただいたのがきっかけです。障害試験までは僕で受かったんですけど、最初の3戦はケガをしていて乗れなかったんです。でも、復帰したときに「仕込んでくれたのはお前だから」ということで、また声を掛けていただいて。

 そうだったんですね。平沢さんとって思い入れの深い1頭かと思いますが、マキオボーラーはどんな馬でしたか?

平沢 最初はちょっと非力なところがあったんですが、もともと普通のキャンターでもバランスのいい馬でした。飛越も上手で、「未勝利は勝てるな」という手応えは最初からあったんですが、正直、重賞まで勝つとは思わなかったです。レースを重ねるごとに力を付けていって、時計も出るようになって。思った以上に成長を見せてくれた馬でしたね。

 2015年の中山大障害では、GI初出走ながら4番人気に支持されて。平沢さんも手応えがあったのではないですか?

平沢 はい。もっとやれると思っていました(11着)。レース自体は巧く乗れたんですが、途中でバテて、どんどん下がっていってしまって。競馬場を問わずに結果を出してくれた馬ではありますが、やはりスピードタイプでしたからね。スピードよりスタミナが要求される大障害だけは合わなかったのかもしれません。

 ちなみに、マキオもそうですが、平地の短距離を走っていた馬が障害で出世するケースを見るたびに、なぜ短距離タイプの馬が3000m級の障害レースを走れるんだろう…と、不思議に思っていました。

平沢 もちろん飛越が上手い長距離馬もいますが、長距離馬はどうしてもゆったり走る馬が多いので、障害を跳ぶときに脚を上げ切れなかったりするんです。その点、短距離馬はストライドが小さくて細かい動きが得意なので、脚を上げるのが上手いし、タイミングも合わせやすいんです。

 なるほど〜。すごく納得しました。

平沢 とはいえ、障害はやはり特殊なので、一概には言えないですけどね。やはり、実際に跳ばせてみたときの感覚とバランスが大事なので。

 マキオには最初からそのバランスの良さを感じていらしたということですね。重賞初制覇の瞬間はどんなお気持ちでしたか?

平沢 もちろんうれしかったんですけど、あまりにもアッサリ勝ちすぎて、正直こんなものかと(苦笑)。馬の頑張りに対しては「ありがとう」という気持ちになりましたけど、僕自身でいえば、初めて重賞を勝って気持ちが高ぶって…とか、そういうのはなかったですね。

 そうなんですね。キャリア16年目での重賞初制覇ですから、さぞかし感慨深いものがあったのかと…。

平沢 メンバー的に展開が読みやすいレースでしたし、そういった意味では楽だったので。というか、重賞を勝つと、みんな気持ちが高ぶったりするんですか? こんなことをいうのは僕だけですかね(笑)?

 そんな平沢さんにビックリです(笑)。みなさん、大きいレースを勝ちたいと思ってやってらっしゃると思うので。

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▲重賞を初めて勝ったのに冷静すぎる「そんな平沢さんにビックリです(笑)」


平沢 ん〜、馬に乗ることとお金は大好きですけど(笑)、名誉とかそういうものに興味がないんですよね。だから、大きいレースを勝って涙している人とかを見ると、なんか不思議な気持ちになります(笑)。まぁ、そのあたりの感情は、僕が冷めすぎているんでしょうけど。

 冷めているというかなんというか…(苦笑)。うれしくて涙が込み上げてくることってありませんか?

平沢 ないですねぇ。悲しいときは普通に泣けるんですけど、僕にとって、うれしくて泣くということは難しいことで(苦笑)。だって、うれしいときは笑顔になるじゃないですか。笑うことと泣くことは、僕のなかでは真逆の現象なんですよね。まぁもともと、「楽しい!」とか「うれしい!」という感情が人より乏しいのかもしれません。ひねくれてますよね(笑)。

 テン乗りならともかく、マキオボーラーはご自身で作ってこられた馬ですから、なおさらうれしかったんじゃないかなぁと思ったんです。

平沢 マキオは大好きでしたよ。ただ、未勝利戦だろうが重賞だろうが、馬が頑張ってくれるから勝てるのであって。

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▲「未勝利戦だろうが重賞だろうが、馬が頑張ってくれるから勝てるので」


 あくまでも主役は馬。

平沢 そうです。馬が頑張ってくれなければ勝てませんからね。だから、未勝利戦だろうが重賞だろうが、勝てば同じくらいうれしくて、そこに僕の感情の差はないんですよね。

 わかるようなわからないような…(笑)。では最後に、これからの目標を教えてください。

平沢 最初にも言いましたけど、まずは(同期の)石神には負けたくないので、彼の存在が大きな目標になっています。あとは、技術的にまだまだなので、踏み切りにしてもバランスにしても、普段から意識を強く持って取り組んでいきたいです。もちろん、うまくいく日もあればそうではない日もありますが、努力することを諦めずに、もっともっと高いレベルを目指していきたいと思っています。

(文中敬称略、了)

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東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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