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兄に続けとばかりの強さ、トウケイタイガー/かきつばた記念・名古屋

  • 2017年05月04日(木) 18時00分

撮影:高橋 正和




地方年度代表馬ということも夢ではない


 トライアルの東海桜花賞でカツゲキキトキトを6馬身ちぎったトウケイタイガーの強さはやはり本物だった。それを思えばカツゲキキトキトは、必ずしも得意とはいえない短距離戦での2着ということで評価を落とす敗戦ではなかったといえそうだ。

 逃げ争いは内枠の2頭。好スタートはドリームキラリだったが、すぐにトウケイタイガーが交わしてクビほど前に出た。ドリームキラリはムチを入れたがハナを奪い返せず。ダッシュ力の違いもあっただろうが、トウケイタイガー52kgに対して、ドリームキラリは56.5kgという斤量の差もあっただろう。トウケイタイガーの勢いにドリームキラリは控えざるをえず、替わって外からタイニーダンサー、ラブバレットがトウケイタイガーの外にぴたりとつけた。トウケイタイガーにとっては決して楽なレースではなかったはずだ。

 タイニーダンサーは3コーナーあたりから後退、そしてラブバレットは1馬身と離れずトウケイタイガーをぴたりと追走。さらに前半は7、8番手あたりにいたタムロミラクルも外からまくってきた。しかし4コーナーあたりでもトウケイタイガーの川原正一騎手の手ごたえにはまだ余裕があった。直線で後続を突き放し、2着のタムロミラクルに4馬身差をつけての圧勝。相手は違うが、東海桜花賞の再現を見ているかのようだった。

 勝ちタイムも、東海桜花賞と同じ良馬場でコンマ1秒遅いだけの1分26秒8。上り3Fでは、東海桜花賞が37秒2に対して、今回は37秒7と少しかかった。東海桜花賞よりも、それだけ前半の流れが厳しかったということ。

 中央勢に一線級のメンバーがいなかったとはいえ、それにしてもトウケイタイガーは強いレースをした。今年からハンデ戦になったこともトウケイタイガーには味方となった。地方競馬には1400mのJpnII、JpnIIIがいくつもあり、今後の活躍が楽しみになった。これから出てくる2歳馬は別として、正直なところ現状で地方馬が中央勢を相手にGI/JpnIを勝つのは相当難しく、まだまだ雲をつかむような話ではあるものの、トウケイタイガーが全兄のソルテに続いて、もしJpnIIのさきたま杯で兄弟制覇ということになれば地方年度代表馬ということも夢ではない。トウケイタイガーのスピードは、ともすればそのレベルにあるということ。

 この距離に実績がなく4番人気だったタムロミラクルが2着に入り、準オープンからオープンを連勝して1番人気となったショコラブランがクビ差で3着と、2、3着は明暗が分かれた。

 何度か書いているように、中央と地方の短距離〜中距離のダート戦では、単純に距離の適性よりも、コーナー2つなのか4つなのかという適性のほうが大きいように思う。タムロミラクルは、3走前のポルックスS(3着)でも、2走前の佐賀記念(2着)でも、好位のうしろや中団追走から、追って追ってという競馬で持ち味を発揮している。地方のコーナーを4つ回る1400m戦では道中で息が入る流れになることが多く、そうしたタイプの馬に向いている。

 対してショコラブランは3歳春以降、一気に駆け抜けるコーナーが2つのレースばかりを経験してきた。最後の直線が200m弱という名古屋コースでデムーロ騎手が追い出したのは、タムロミラクルを先に行かせたあとの3、4コーナー中間から。直線を向いても馬が集中していない感じで、実力を出し切ったとは言い難い。ショコラブランは中央のダートコースでこそというタイプのような気がする。そうであれば大井や盛岡の1200m戦なら、という可能性はあるのだが。

 タイニーダンサーは、前走船橋のマリーンCが57kgを背負っての4着で、今回53kgならというところもあった、しかし2歳時を別とすれば、ダートグレードで牡馬との対戦はこれが初めてということでは厳しかった。

 岩手のラブバレットは4コーナーでもトウケイタイガーのぴたりと直後で、もしや地方馬のワンツーか、という場面もあった。しかしゴール前ではタイニーダンサーにまで差し返されての5着。根岸Sは10着とはいえ直線あわやと思わせる場面があり、地元とはいえクラスターCでは短距離路線でチャンピオン級のダノンレジェンドを相手に2度の3着。ラブバレットもコーナー2つのコースのほうが力を発揮するタイプなのかもしれない。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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