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控える競馬も想定内、鮮やかに差し切ったコパノリッキー/かしわ記念・船橋

  • 2017年05月06日(土) 18時00分

撮影:高橋 正和




GI・10勝という日本記録にあと1勝と迫った


 コパノリッキーが1番枠に入ったのを見て、ハナを奪って逃げ切るしかない、と思った人は多かったのではないだろうか。少なくともぼくはそう思った。そして、もし出遅れて馬群に包まれるようなことがあれば、“終了”とも。

 しかし武豊騎手は、そうは考えていなかったようだ。もちろん好スタートを切れば逃げただろうが、もともとスタートがあまりよくないこともあって、互角以下のスタートなら一旦下げて外に持ち出すことも選択肢と考えていたようだ。選択肢というより、レース後の話からはほとんどその可能性大と考えていたようだった。それは、隣の枠が先行タイプのインカンテーションだったからということもあっただろう。

 果たしてコパノリッキーは、出遅れというほどではなかったものの、伸び上がるようなスタートでダッシュがつかず。この瞬間、武騎手は下げて外に持ち出す決断をしたと思われる。他の中央5頭を先に行かせ、砂をかぶらないような位置まで下げて外に持ち出した。ただこれは10頭立てという少頭数に加えて、地方の4頭とは能力差が大きいからこそできたこと。実質6頭立てのレースだ。これが能力差があまりない中央馬ばかりで、多頭数のレースであれば、内枠から下げて外に持ち出すのはかなり難しい。仮にできたとしてもかなりのロスになる。またこの日は内を空けて走る馬が多く見られ、ラチ沿いの砂が深かったようで、そもそもラチ沿いを走りたくなかったということもあったかもしれない。

 それにしてもコパノリッキーが縦長の6番手追走というレースはあまり見たことがない。8着に負けたデビュー戦と、出遅れて馬群の中に突っ込んでいって惨敗となった2014年のチャンピオンズCがそうだった。いわば負けパターン。

 控えて勝った例としては、3歳時の伏竜Sと3年前のかしわ記念があるが、伏竜Sのときは15頭立て14番手からのスタートで、そもそも先行しようとすれば無理に行くことになり、むしろ砂をかぶらない外々を回ってスムーズにレースを運ぶことができた。3年前のかしわ記念は躓くようなスタートで順番的には5番手だが、すぐに外に持ち出し、先頭を射程圏にとらえる好位といえる位置どりだった。

 先頭から離れた6番手は、逃げたモーニンが緩みのないペースでレースを引っ張ったがゆえのこと。3コーナー過ぎから中央6頭が徐々に凝縮したあたりでは、他の5頭の鞍上が懸命に手を動かし、ムチが入る馬もいるなか、外から一気に位置取りを上げていったコパノリッキーの手応えは抜群。直線を向いて外から他馬を抜き去っていくところなどは、たしかに5番手追走から差し切った3年前の再現を見るようだった。

 これで、かしわ記念は3勝目となり、盛岡の南部杯も昨年制していて、地方のマイル戦は4戦4勝。さらにフェブラリーSの2勝でマイルのGI(JpnIも含む)は6勝。そのほかのGI勝ちは、盛岡のJBCクラシック、大井のJBCクラシックと帝王賞。やはり能力を発揮できる舞台は左回りのマイル戦といえそうだ。逆に相性がまったく良くないのがチャンピオンズCで、これまで3回出走して12、7、13着。中央の競馬場としては小回りコースで、コーナーを4つ回るために馬群がごちゃつきやすい。厳しい展開のレースは対応が難しいのかもしれない。これでホッコータルマエのGI・10勝という日本記録にあと1勝と迫った。

 コパノリッキーの話に終始してしまったが、今回のレースは、これまで勝ったGIとは違って、それほどインパクトがあった。

 2馬身離れての2着がインカンテーションで、逃げたモーニンがクビ差3着。インカンテーションは4番手の内でじっくり溜め、直線を向いて馬群を捌いて抜けてきた。前のモーニンはとらえきったものの、コパノリッキーに離れた大外から一気に来られては仕方ない。モーニンは粘りきれずの3着。緩みのないペースとはいえ、2ハロン目の11秒8以外は12秒台中盤のラップを続けてという、決して速い流れではなかった。フェブラリーSを制した頃と比べるとまだ少し物足りない。

 マイル戦では抜群の安定感を誇り、1番人気に支持されたベストウォーリアは、モーニンから1馬身半差の4着。勝ったコパノリッキーからは0秒8差。伝えられていたように中間、挫跖の影響はあったのだろう。最終追い切りも坂路で馬なりの調整、万全の仕上げとまではいかなかったようだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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