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4月のレース回顧 “エンパイア”との縁“ワンダー”との相性

  • 2017年05月09日(火) 18時01分
小牧太

今回は4月のレース回顧をジョッキーならではの視点でじっくり振り返ります


前回に引き続き、4月前半のレース回顧です。内をロスなく立ち回ったワキノハガクレ、出遅れから一気のマクリで圧勝したワンダーアビルマン、そして危なげなく逃げ切ったワンダーレアリサルでの勝利について、それぞれジョッキーならではの視点でじっくり振り返ってくれました。
(取材・文/不破由妃子)


エンパイアメーカーはホンマに難しい…

──今回も4月前半のレースを振り返っていきたいのですが、まずは4月1日の阪神7R(4歳上500万下)を勝ったワキノハガクレ。1番人気に応えての順当勝ちでしたね。

小牧 ワキノハガクレはね、今年に入ってから僕が乗ったレースでは、いつもこれ以上ないというようないいレースをしてくれてた。この前もね、スタートを決めて、インで我慢してね。

──そうですね。最後の最後に出し抜けを食らったりして、惜しいところで勝利を逃してしまうレースもありましたが、先日はその鬱憤を晴らすかのような快勝でした。去年の3月にも小牧さん騎乗で500万を勝っていて、これまでの3勝2着5回のうち、2勝2着2回が小牧さんの手綱。小牧さんでこそ、という成績です。

小牧 いやいや、そんなことない。前は走ったり走らんかったり、ムラがあったでしょう。それはなぜかというと、外を回るような普通のレースをするほうが難しいタイプやから。僕はたまたまスタートを決めて、いいレースができているから、たまたま走ってくれているだけで。

──とはいえ、前走の3〜4コーナーのロスのない立ち回りなど、ジョッキーの腕だなと感じましたよ。

小牧 腕というか、せこく乗れたからね。あの馬は、ああいう内から抜け出すような競馬が合ってるねん。そういう意味では展開に注文が付くけど、相手なりに力が出せる馬なんでね、上に行ってもやれるかもしれんね。

──続いて、出遅れから一気にマクるという大胆な競馬でファンを沸かせたのが、ワンダーアビルマン(4月2日・阪神6R・4歳上500万下)。

小牧 ああ、あれはちょっと発走員に迷惑を掛けてしまった。ゲートに入った時点で後ろに座ってしまって、態勢が整うまでちょっと待ってもらったんですわ。

──後ろに座ってしまうというのは?

小牧 後ろの扉にもたれてしまって。せっかく待ってもらったのに、きっちり出遅れてしまった(苦笑)。

──馬群が固まったのを見計らったように、一気に動いていきましたね。

小牧 この位置じゃ絶対に無理だと思ったから、思い切って動いて行ったんやけどね。出遅れてああいう競馬になったけど、あそこはメンバー的に勝たなアカンと思っていたレースやったから。終わってみれば4馬身差やったけど、最後は止まっていたから、こっちはもう必死やった。あんなレースをして負けたらカッコ悪いからね(苦笑)。見た目以上に、必死に獲りにいった1着ですわ。

小牧太

見た目以上に、必死に獲りにいった1着ですわ。


──上のクラスに行くと、より一層、ゲートが課題になってきますね(4月29日の昇級初戦は、和田騎手が騎乗して12着)。

小牧 練習しているらしいけどね。あとは、持ち味のひと脚をどう使うか。いい脚を持っているけど、そのあたりの難しさもあるね。そういえば、あの馬はエンパイアメーカーやったな。エンパイアはホンマにみんな難しい…。

──この馬も、小牧さんが騎乗してから4着→4着→3着→1着と走りが安定して。

小牧 ああ、デビュー戦以来、久々に騎乗したときにたまたま出遅れて、ジックリ行ったのが良かったんですわ。それでいい脚を使って着にきてくれたから、ジックリ行けばひと脚はあるなと。そのつもりで乗ってきたから、成績が安定したのかもしれんね。

──もう1頭のワンダー(レアリサル)は、圧倒的1番人気に応えての逃げ切り勝ち。危なげのない勝利でしたね。

小牧 あれはもう順当勝ちやね。この馬もエンパイアで気性が難しいんですわ。初戦はゲートが悪くて、2走目は暴れるかもしれんなぁと思って注意してたんやけど、思った以上に中間でよく練習してくれていて。落ち着いていたおかげで、スタートも決まったね。でもちょっと走りや息遣いが重かったかな。もっと楽勝すると思ってたから。

──十分、楽勝に見えましたが。

小牧 いや、最後は2着の馬(サンキャッチャー)に追い詰められました。今日は追うところないやろくらいに思っていたのに。それくらい楽勝できる自信があったからね。体重はともかく、もうちょっと乗り込めば、まだまだ変わってきそうな馬やね。

小牧太

「(ワンダーレアリサルは)もうちょっと乗り込めば、まだまだ変わってきそうな馬やね」(写真は未勝利優勝時、(C)netkeiba)


──それにしても、エンパイアメーカーに縁がありますね。

小牧 よう乗ってるねぇ。でもホンマに難しいんやで。僕で2つくらい勝っていて、小崎くんが2月の小倉でひっくり返ったあの馬もエンパイアや。

──ワンダーピルエットですね。

小牧 あ、そうそう。今度のスイートピーSもエンパイアガール(15着)やからね。なんやエンパイアづいてるなぁ。

──エンパイアメーカーもそうですが、“ワンダー”での活躍も目立ちます。馬主の山本信行氏と特別なご縁があるのですか?

小牧 特別な縁はないんやけどね。相性がいいだけ。そういえば、小崎さんにも「またワンダーで勝ったね」っていっつも言われるわ。かつてはワンダースピードで勝ちまくったからねぇ(小牧騎手で8勝)。そのイメージを持ってくれているのかな。なんにせよ、チャンスをもらえるのは嬉しいこと。これからも期待に応えていきたいね。
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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