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【祝!クラシック初制覇】大舞台での経験に「また一つ引き出しが増えた」

  • 2017年05月22日(月) 18時01分
笹川翼

▲南関東の牝馬クラシック・東京プリンセス賞(SI)を制覇! 前日には通算400勝を達成(撮影:武田明彦)


今回はクラシック初制覇をたっぷりと振り返り! 現在の率直な気持ちから、白熱の攻防となった東京プリンセス賞(SI)の舞台裏を明かします。さらに自身の期待馬・ミサイルマンで敗戦した羽田盃(SI)の反省も。6月には南関東クラシックの頂点・東京ダービー(SI)が控えるなか、この2連戦で笹川騎手が学んだこととは? (取材・文:赤見千尋)

道中で目標切替え「離れ過ぎなければ交わせる」


――SI・東京プリンセス賞制覇おめでとうございます! ものすごい末脚でしたね。

笹川 ありがとうございます。アンジュジョリーが本当に頑張ってくれました。末脚は本当にすごかったですよね。自分でも後でVTRを見てびっくりしました。普通ではちょっと届かないようなところから、よく差し切ってくれたなと思います。馬はもちろん、乗せて頂いたオーナー、いい状態に仕上げてくれた関係者の皆さんに感謝しています。

――ゴール前は接戦でしたけれども、勝ったと思いましたか?

笹川 多分勝っているなとは思ったんですけど、もし負けてたら恥ずかしいので、普通の顔をしていました(笑)。初めてのクラシック制覇だったし、すごく嬉しくてガッツポーズしたかったんですけど、そういう状況ではなかったです。

――22歳という若さで南関東のクラシックレースを勝ちましたね。

笹川 まだあんまり実感はないんですけど、僕がどうとかいうより、馬にとっては一生に一度の大切なレースですし、関係者の皆さんもここを目指して一生懸命やっているので、結果を出すことができて嬉しいです。前日の羽田盃でもいい馬(ミサイルマン/3人気11着)に乗せていただいて、2日連続でクラシックレースに乗れるなんて本当に有り難いです。羽田盃は残念な結果だったんですけど、東京プリンセス賞を勝てて本当に良かったです。

――アンジュジョリーですけれども、1冠目の浦和の桜花賞では6着でしたが、前走のジーナフォンテンメモリアルを快勝、そして東京プリンセス賞も連勝で制しました。

笹川 桜花賞はちょっとキツい競馬だったんですよね。ムリに前につけて行きましたから。6着と負けてしまいましたけれども、それがいい経験になったというか、馬が試練として乗り越えてくれたんです。桜花賞で速いペースを経験した分、前走は楽について行けたし、終いもしっかり伸びてくれました。「これは良くなっているな」っていう感触があって。東京プリンセス賞当日もさらに良くなっている感じで、久しぶりの右回りだったんですけど、返し馬の雰囲気も右回りの方がいいなと感じました。

――レースは好位のインで進みましたけれども、イメージ通りでしたか?

笹川 そうですね。以前はあんなにいいポジションを取れなかったんですけど、馬も良くなって、競馬も勉強してくれて、スタートも出たので楽にいい位置が取れました。前2頭(アップトゥユー、ピンクドッグウッド)が人気していたので、そこをマークする形でちょうどよく後ろにつけられました。

――断然の一番人気だったピンクドッグウッドは、赤岡騎手が向正面から乗りづらそうな恰好をしてましたね。

笹川 ずいぶんササっていたのか、気性の難しいところを出していましたね。3コーナー過ぎくらいから赤岡騎手の手が動いていたので、これは自分にもチャンスあるなと思いました。勝負所ではもう手ごたえがなくなってて、ちょっとびっくりしましたけど……あれだけの馬がこんなところから下がって来るのかって。

――そこから目標を前のアップトゥユーに切り替えて?

笹川 そうですね。ただ僕の馬も3,4コーナーで少しもたもたするところがあるので、慌てて追いかけるというより、離れ過ぎなければ前は交わせるかなと思っていて、なるべく経済コースを通ることを重視しました。

――直線を向いた時には、アップトゥユーの楽勝かと思いました。

笹川 僕も一瞬はそう思ったんですけど、直線の半ばで馬と馬の間に入って、前がパッと開いた時に、グンと伸びてくれたんです。そこからはもう必死でした。本当によく差し切ってくれましたね。

笹川翼

▲残り1ハロンから猛追を見せ、最後はアタマ差で差し切り勝ち


――アンジュジョリーはどんな馬ですか?

笹川 とっても素直で乗りやすい馬です。最初に跨った時から特に気になるような癖はなかったですね。強いて言えば少し馬を怖がるところがあったみたいなんですけど、それもだんだん解消されていますから。とにかく末脚がすごくて、そこが一番の武器ですね。

羽田盃敗戦の裏に引くに引けない心理


――今後が本当に楽しみですけれども、前日の羽田盃は残念な結果でした。

笹川 ミサイルマンは賢過ぎて、ちょっと前向きになり過ぎてしまいました。まだ成長途上の馬なので、レースに向けてあそこまで仕上がったのは今回初めてだったんですけど、その分気負ってしまって、道中ずっとハミを噛んで引っ掛かってしまいました。3コーナーくらいまでずっと噛んでいたので、さすがにキツいですよね。前走は休み明けで、まだちょっとスイッチが入っていないという感じだったんですけど、今回は真逆の敗因なので、改めて馬って難しいなと思いました。

笹川翼

▲羽田盃の敗戦に「改めて馬って難しいなと思いました」(撮影:高橋正和)


――キャプテンキングが、まさか逃げ切るとは思いませんでした。

笹川 そうですね。人気の2頭(キャプテンキング、ヒガシウィルウィン)も前にいたし、だから引くにも引けないし、僕の心理的にはすごく難しいところでした。ただ、着順というより、敗因がすごくはっきりしているのでそこを反省しつつ修正していければ。まだキャリアの浅い馬で、それがもろに出てしまいましたけど、その分伸びしろもまだまだありますから。簡単ではないですけど、ダービーで巻き返したいです。

――そしてご自身は400勝達成、おめでとうございます。

笹川 ありがとうございます。いろいろな方が支えてくれたお陰で、これまで順調に来られました。本当に感謝しています。たくさん乗せてもらって、チャンスも頂いている中で、まだまだ取りこぼしも多いので満足はしていないです!

笹川翼

▲達成直後には「話題を持っていってしまうので、的場さんの7000勝より先に達成できて良かったです(笑)」


――現在デビュー5年目の22歳、400勝も達成してクラシックも勝って、“俺って、すげー”とか思わないですか(笑)?

笹川 ないですよ(笑)。いい厩舎に所属させてもらえて、たくさんチャンスを頂けているおかげですから。

――若くして結果を出すと、天狗になってしまう人もいると思うんですけど。

笹川 所属の米田先生から、『感謝』と『挨拶』が大切だってずっと言って頂いていて、僕自身もそこは大切にしています。もちろん、心の中で喜ぶのはいいと思うし、天狗というか、ちょっと強気な方がジョッキーとしてはプラスに出る場面もありますけど、それを表に出すと勘違いされてしまうので。まだまだ若手ですし、上にはすごい方がいっぱいいますから。

――では、今回のクラシック2連戦を踏まえて一言お願いします!

笹川 はい。2レースともにとてもいい経験を積ませていただきました。悔しい想いもしたし、嬉しい想いもして、ちょっと複雑ですけど、今後のジョッキー人生に活きてくると思います。去年グランユニヴェールでクラシックを戦って教えてもらったことが、今すごく活きていますし、また一つ引き出しが増えたかなと。来月は東京ダービーがあるので、また注目して頂けたら嬉しいです!

1994年7月17日生、新潟県出身。2013年4月7日に米田英世厩舎(大井)からデビューすると初年度から43勝を挙げ、NARグランプリ優秀新人騎手賞を獲得。重賞勝利に勝島王冠(15年)、船橋記念(16年)、ハイセイコー記念(16年)。

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