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ダート界に新星誕生!? ヴァローア号の藤懸騎手&奥村豊厩舎を取材しました!

  • 2017年06月06日(火) 18時00分
藤懸騎手1

ヴァローア号の藤懸貴志騎手&奥村豊厩舎を取材しました!




奥村豊師「あんなに強烈な末脚を使える馬はそうはいない」


 安田記念で東京競馬場5週連続GIの締めくくり! 皆さんはどんな体験をされましたか?

 春のGIを振り返って…皐月賞を初制覇した松山弘平騎手は平成生まれなんですよ。すごいなー!

 GIに昇格した大阪杯、連覇を果たした春の天皇賞は、まさにキタサンブラックの強さを証明したレース。

 ダービーでもすごいドラマが生まれましたね。藤沢和雄先生の重賞レース100勝の中にはダービー制覇がなかったとは! でも、見事に「レイデオロ」の1勝が刻まれました。ポロリの涙に感動しましたね。ルメール騎手も日本ダービー初制覇。そして3週連続GI制覇の記録もあり感動の渦。

 安田記念は東京の芝マイル王決定戦らしく激しい戦い。5着までクビ差が続く激戦を制したサトノアラジン。大型馬(528kg)でとびが大きく良馬場に強い馬だったので、重馬場などで中々実力を発揮できていませんでしたが、今回は川田騎手の手綱さばきが見事にはまりました。

サトノアラジン

激戦を制したサトノアラジン。川田騎手の手綱さばきが見事にはまりました


 アラジンとともに騎手も最後の1ハロンは、見ごたえありました。最強の対決って感じでしたね。昨年の覇者ロゴタイプも負けて強しの力量発揮でした。

 池江厩舎が数々のGIを制覇している中でも悲願の1勝。「おめでとうございます!」。池江先生は「この馬で勝てなかったら調教師失格と思っていたくらいなので本当にうれしい!」と話されていました。

 前日の土曜日も池江厩舎が鳴尾記念を3連覇され、まさに池江厩舎ウィーク。サトノ冠名馬も大活躍。ダイヤモンドの凱旋門挑戦の秋も楽しみです。

 ダービーからダービーへという言葉があるように、夏競馬とともに、2歳馬が早くもデビューしてきます。競馬ってやっぱおもろいわー! 切り替えて夏競馬の対策を皆さんとともに練っていきましょう。どこかの競馬場で会ったら声をかけてください。

***

 さて、今週の僕のコラムは、ダービーの日に京都競馬場で行われた最終レース「與杼特別」を制覇したヴァローア号と、鞍上の藤懸騎手を取材してきました。

常石 藤懸騎手、ヴァローア号での2勝目おめでとうございます。この馬にとっては3勝目になりますよね。ヴァローア号の勝利で取材をお願いするのは2度目ですね。よろしくお願いします。

藤懸 ありがとうございます。ヴァローアが勝つと常石さんに会えますよね(笑)。この馬の魅力を分かってもらえてうれしいですね。

藤懸騎手2

ヴァローア号で2勝!奥村厩舎の馬で好成績を挙げている藤懸騎手


常石 去年の10月2日の阪神6Rで2勝目を挙げてからずっと上位をキープしていたので「次のレース勝つかな?」ってずっと期待していたんですよ。レースの勝因を振り返ってください。

藤懸 とにかく強かったです。4・2・5着と掲示板を外さなかったので楽しみにしていたんですが、ちょっと東京への輸送の疲れが残っていたので心配しました。でも、しっかりとケアをしてくれて力を出せる状態に仕上がっていました。厩舎力がすごいなーと思いました。

 早めに他の馬が動いてくれたのも、ヴァローアにとっては好都合でした。この馬は末脚がすごいので、後ろから行って4角前からじわっと上がっていきました。ゴール前では、力強かったですね。乗せて頂いていて、いつも調子がいいので安心して騎乗できます。奥村厩舎に感謝です。

常石 距離がいろいろ変わっていますがその辺りはどうですか?

藤懸 新馬の時は1400mを後藤浩輝騎手でデビューし、初勝利の時は1200mで藤田伸二騎手でした。競馬の歴史というか、馬の命の大切さを感じます。

常石 そうですね。お二人ともついこの間まで馬に乗っていたなーと思いますね。いろいろ距離を試され適正な距離を見つけることができたんですね。

藤懸 奥村厩舎はケアがとっても丁寧で、乗るたびに「馬に変わったことはないか?」と僕たちの意見もよく聞いてくれます。精神面では幼い面があり馬群の中に入るとちょっとひるむようなところがあったんですが、その辺りが大きく成長してきました。馬房では大人しくまじめなんですが、競馬に行くとしっかり末脚を使ってくれるので、勝負所で力を発揮できる、乗り易い馬です。乗せてもらえるのはありがたいですね。

常石 ケアもしっかりされているそうですね。

藤懸 東京で使った後、疲れが出ていたんですが、いろんなことを試行されケアをしてくれています。そこまでするのっていうくらいです。その結果が出ているんでしょうね。

常石 そうそう。藤懸君に会う前に奥村厩舎へヴァローア号を見に行ったら、厩舎スタッフが担当者の岡本厩務員を呼んでくださってびっくりしました。岡本さんが「ちょっと待ってね」と言って、馬にブラシをかけ手綱を交換し馬房から出してくれたんですよ。そんなことありえへん…と思いつつ写真を撮らせていただきました。カメラ目線になるように馬に合図を送ってくれて、馬主気分でした。

ヴァローア1

ヴァローア号と担当の岡本厩務員


藤懸 そうなんですよ。皆さんすごいと思います。これも先生の指導というか方針なんですよね。あの日はダービーだったでしょう。ダービーをまず見届けて、すぐに駆け付けて騎乗しました。装鞍所で奥村先生が「俺たちの京都ダービーや。思いっきり乗って来い!」と送り出してくれました。なんか…うれしかったですね。「よっし!勝ってくるぞー!」という思いになりました。

 でもいざ馬場へ行くと、アドバイスをしてくれたり、リラックスして乗れるように競馬に関係ない笑い話などをしてくれたりします。僕なんかを乗せてくれて感謝の気持ちで一杯です。勝った時も厩舎スタッフ皆さんが「ありがとう」と言ってくれるのですごくうれしいです。厩舎スタッフが1つのチームになってるなーと感じます。

常石 いやいや。藤懸騎手も素直だし一生懸命さが伝わってくるから、先生も期待してくれていると思いますよ。

藤懸 ありがとうございます。松山先輩が平成生まれのGI騎手になりましたからね。僕たちの年代も頑張ろうと思います。

常石 何歳でしたっけ? 同期は?

藤懸 25歳です。同期はあまりいないんですよ、森一馬と花田君ですね。

常石 それはさみしいな。でも関係者はみんなつながってるからね。

藤懸 はい、特に平田厩舎の方にはお世話になっています。

常石 平田先生も、頼りになりますよね。

藤懸 平田厩舎の馬も頼りになります。ヴァローアは(ターファイト)クラブの馬ですが、同じクラブの馬が平田厩舎に入ってるので乗せていただくことになっています。アデュラレッセンスといいます。この馬も応援よろしくお願いします。

常石 それはいい結果を出してるからでしょうね。その馬も期待してますね。

藤懸 次に乗る馬があるってうれしいですね。ヴァローアも強烈な脚が武器になるので、上のクラスヘ行っても戦えると思います。楽しみです。その時はまた取材してくださいね。

 今年の初勝利も奥村厩舎だったんですよ。相性がいいですね。攻め専の上野さんや阿南さんや野村さんも馬の状態や乗り方のアドバイスもくれますし「カッとなる馬でも並足で噛み合ったら勝つからな」など、いつも色んなことを教えていただいてます。皆さん上手いですよー。

常石 助手の方ってほんまに上手いですよね。どんな馬でも乗りこなしていますもんね。

藤懸 そうなんですよ。教えてもらうこと一杯です。

常石 最後にこの馬の魅力をファンの人に伝えてください。

藤懸 やっぱり最後に強力な末脚を使えることですね。応援よろしくお願いします。

常石 ありがとうございました。応援してます。次は函館ですね。

藤懸 はい、頑張ってきます。

 藤懸騎手は小柄なんですが、体を一杯に使ってガッツでぶつかっていく、明るく爽やかな青年です。

***

 奥村豊厩舎にも行ってきました。

常石 ヴァローア号「與杼特別」優勝おめでとうございます。奥村先生はこの馬と藤懸騎手との相性をどう感じますか?

奥村 この馬のことをよく理解して、末脚が出せるように乗ってくれてるなー、と思うな。末脚がよくても、最後にそれを出せる状態に持ってこないと出せないからね。距離も1800mまで延ばして、落ち着いてきましたね。東京へ行ったときは疲れが残ってたけど、與杼特別の時には疲れもなく、カイバ食いもよくなってます。騎手もよかったね。この馬のことをよく理解して、考えて乗ってくれているのがよく分かる。だから次があるんですよね。担当の岡本厩務員もよくケアをしてくれています。

奥村調教師

藤懸騎手も信頼を寄せる、ヴァローア号の奥村調教師と


常石 ケアは具体的にどんなことをされていますか?

奥村 走った後の脚のチェックはもちろんのこと、冷やしたり、電気を当ててマッサージをしたりしています。ブラッシングもよくしていますね。傷などの早期発見につながるだけではなく循環もよくなるからね。ブラッシングは時間と力がいるんだよね。でもまじめにしっかりしてくれるので助かっています。

常石 ダービーの日に勝ったでしょう。藤懸騎手が「『俺たちの京都ダービーやな』と言ってくれてうれしかったしやる気満々になった。助手の方にもいろいろアドバイスをもらったり、出走前にリラックスするように声をかけてくれるのもとっても嬉しいし緊張もほぐれるから、奥村厩舎には感謝してます」と言っていましたよ。

奥村 なんにもしてないで。

常石 厩舎の方もみなさん親切ですね。ヴァローア号を馬房から出すときも「見栄えも大事やからな」と言いながらきっちりブラシをかけていました。日々何気ないことが馬を強くしているんだなー、と実感しました。

奥村 あまり結果を出せていませんがこれからですね。頑張ります。ヴァローアは京都の馬場が一番合ってると思い、そこを目標に仕上げてきました。距離の適性もあるんですよね。1800mでも落ち着き、後ろからでも強い競馬をしてくれました。騎手が馬の力を信じて、馬をいじめないで乗ってくれたらいい結果がついてくるので、上のクラスでも戦っていけると思います。いい脚を使いますね。あんなに強烈な末脚を使える馬はそうはいないよね。

 馬体はそれほど大きくないが後ろの腱が張っているので、自分から馬体を大きく見せられるのがいいところでしょうね。牝馬だから体力面を考えながら使っていきたいと思います。無事に帰ってくれると次があるので、出走するときはまず無事にと思いますね。無事に結果を出していくと競馬がつながっていきますからね。

ヴァローア2

強烈な末脚が武器のヴァローア号、奥村調教師も期待を寄せる


常石 楽しみです。與杼特別はちょうどダービーデーでしたね。ダービーについてどう思いますか?

奥村 馬に関わる人間としてはやっぱり、ダービーに出せるような馬を作っていきたいですね。参加できるように頑張ります。でも馬には無理をさせない。無事に結果を出していくと馬が変わっていくのが楽しみです。人も馬も無事にですよ。そこから始まってくると思っています。

常石 そうですよね。「無事これ名馬なり」という格言がありますよね。

奥村 難しいこと知ってるね(爆笑)。

常石 実は坂口先生の受け売りです(笑)。

奥村 でもそのとおりだと思います。常ちゃんも無事名騎手になってや。乗馬頑張ってるそうやね。

常石 ありがとうございます。最後にファンの方にメッセージをお願いします。

奥村 まだまだ初心ですが頑張ります。応援よろしくお願いします。

常石 ありがとうございました。またお邪魔していいですか?

奥村 あぁ、いつでも馬を見に来てください。よろしくね。

***

 とってもさわやかでテキパキと話される奥村先生はスタッフからも信頼が熱く、それでいて和やかな雰囲気のある厩舎でした。

つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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