重賞レース回顧/柏木集保

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新しい距離で真価を発揮した/エプソムC

2017年06月12日(月)18時00分

注目数:33人


◆浜中騎手とともにリズムを取り戻した

 ダッシングブレイズ(父キトゥンズジョイ)=浜中俊(28)のコンビが見事に立ち直った。5歳牡馬ダッシングブレイズは、これが初の重賞制覇だった。

 2016年の東京新聞杯を1番人気でラチに接触して落馬したこのコンビ、連勝中のダッシングブレイズは完全に勢いが止まってしまった。負傷して長期ブランクの生じた浜中俊騎手は、以前の思い切りの良さ、果敢な騎乗が影をひそめ、ミッキーアイルのマイルチャンピオンSは結果こそ1着だったものの、降着寸前、とても若手のホープ=浜中俊とは思えないラフな騎乗だった。

 ダッシングブレイズは5歳の今年、洛陽S(M.デムーロ)で復調気配をみせていた。浜中騎手もすこしずつ本来のリズムを取りもどし、6月に入り第1週は4勝を記録。好調カーブに乗ったところで、ふっ切りたい「東京コース」で改めてコンビ復活。期待を上回る鮮やかな復活劇で、このあとの展望が広がる出世レースのエプソムCを勝った自信は大きい。

 浜中騎手は、この週は5勝の固め勝ち。今年のJRA成績【34-34-35-202】となり、2年ぶりのランキングベスト10入りがみえてきた。5歳ダッシングブレイズは、ここまで若さもあって1600m以下のレースに出走することが多かったが、彗星のように米種牡馬ランキングの順位をあげ、2013年の米サイアーランキング1位に躍り出たキトゥンズジョイ産駒である。

 キトゥンズジョイの父エルプラドは、サドラーズウェルズ直仔としてアメリカに渡り、珍しく芝向きとして成功した種牡馬。代表産駒のキトゥンズジョイは、2012年以降、過去5年の米サイアーランキング「19→1→3→3→5位」である。自身のビッグレース制覇は芝の9〜10F中心だったが、代表産駒の活躍も大半が芝コースであり、9F前後が多い。代表産駒のうち、2015年のBCフィリー&メアターフG1など北米11勝の牝馬ステファニーズキトゥン(2009年生まれ)は、しっかりノーザンFに購入されディープインパクトが配合されている。

 ダッシングブレイズは、その母方にスピード色が濃いため1600m以下に出走することが多かったが、今回は「前半48秒2-(11秒5)-後半46秒2」=1分45秒9というスローの1800mの流れにスムーズに乗り、上がり「34秒5-12秒1」の長い直線の叩き合いを制したから、これまで中距離に良績はなかったが(1800mは今回初めて)、過去2回は凡走の2000m級でもスタミナ不足を問われることはないのではないかと思われる。

 よみがえった浜中俊騎手と、新しい距離で真価発揮の可能性の生じたダッシングブレイズのこのあとに注目したい。

 4歳有利がささやかれた中、人気のアストラエンブレム(父ダイワメジャー)は最後もしっかり伸びて2着確保。これで1800m【1-2-0-0】となった。この4歳馬はこれで12戦【5-3-1-3-0】となり、デビュー以来すべて4着以内の超堅実派の成績を残すことになったが、重賞レースは「4着、4着、4着、そして今回の2着」であり、課題は今回もちょっとそんなところがあったが、最後の詰めの甘さをいかに解消するかだろう。種牡馬ダイワメジャー産駒のスピード能力も、あと一歩…という死角もストレートに出しているのは、ここまでは優秀性としていいが、これからは父の迫力の成長力を前面に出してパワーアップしたい。

 4歳マイネルハニー(父マツリダゴッホ)は、しぶとい粘り腰はすばらしいものがあるが、「前半48秒2→1000m通過59秒7→」という理想のペースで単騎逃げの形になっただけに、ここは、本当はなんとかしたかった。これで重賞【1-1-1-5】。ベストの1800mで1分46秒0は自己最高を更新しているから、この夏、もうひとまわりスケールアップするだろう。

 ほかで人気になった4歳タイセイサミット(父ダイワメジャー)は、0秒4差の6着。2歳〜3歳春までの重賞路線で「6、7、4、3」着。古馬になってひと回り成長して挑戦した今回が、かつてと同じような印象の残る6着は、陣営も物足りなかっただろう。どうも同じダイワメジャー産駒のアストラエンブレムと似たようなタイプになりつつあるが、これはお互いに決して歓迎したくない共通点である。秋には脱皮したい。

 3番人気に支持されたデンコウアンジュ(父メイショウサムソン)は8着止まりだが、スローに近い流れを早め早めに追走し、0秒5差(1分46秒4)だから、少しも悲観する内容ではない。東京では、メジャーエンブレムを差し切ったアルテミスS1600mが自身の上がり33秒3。一気に突っ込んだ前回のヴィクトリアマイルが、上がり33秒2。だからマイルの方が合うとかではなく、牝馬らしい切れ味がフルに発揮されるのは、うまくタメが利く流れになった際なのである。今回は途中まで楽に追走できるスローだったが、前半800m48秒2で通過のあと「11秒5-11秒7-10秒8-11秒6…」。800m〜1600mの4ハロンが「45秒6」なので、少しピッチを上げながらの追走だった。最後の切れを生かしたい牝馬に、もっとも合わない途中から速くなる流れである。

 これは、ヒストリカルナスノセイカンなどの追い込み方が台頭できるペースでもなかった。5歳クラリティスカイ、7歳レッドレイヴンは、当日の気配がもう一歩だったか。長期休養明けの7歳レッドレイヴンは気負いが目立ち、クラリティスカイはスタートが良くなく流れに乗り遅れたうえ、途中で行きたがってスムーズな追走にならなかった。
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コラムニストプロフィール

柏木集保
柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。