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一挙に事が成らなかったからこそ

  • 2017年06月15日(木) 12時00分


◆辛抱の美徳、根気の美徳をみせてくれた両馬

 一挙に事が成るということは稀で、多くは根気が必要になる。この時期の重賞は、大半がそんな情況の中で戦っている。一歩一歩辛抱強く、事をつづけていって、ようやく成し遂げた勝利。これをきっかけに、その後、大きなタイトルを手にしたというケースは多く、それを見届けることができたらと思うのも競馬の楽しみのひとつだ。

 エプソムカップで初めて重賞を勝ったダッシングブレイズは、8度目の挑戦だった。マイルを中心に走ってきて、それまでの6勝すべてが1600米。条件戦から3連勝し一番人気でのぞんだ昨年の東京新聞杯は大きなチャンスにみえたが、直線で最内をついてラチに接触して落馬し、浜中騎手は左手首など4か所を骨折するという憂き目にあっていた。それだけにこの馬で重賞をという思いには、切なるものがあったろう。

 このエプソムカップは初めて戦う1800米、そこをどうこなすかだったが、好スタートを切ったことでリズムに乗れ、自然といい位置につけられていた。4コーナーで3番手にいたダッシングブレイズは、いつものようにエンジンのかかりが遅くじりじり差をつめていたが、それでも坂を上がってからももうひと踏ん張りして、内から先行馬をとらえていた。

 根気よく、一歩一歩、辛抱強くやってきたこれまでの軌跡をたどるような勝利で、人馬ともに、以前の悪夢を払ったことで、この先に向け大きく踏み出せた。1800米で重賞を勝てたことで、秋に備えることができたのだが、一挙に事が成らなかったからこそ、この勝利は貴重な一勝になった。

 いたずらに事をいそがずとも、徐々に力をつけてかち得た成果の方が大きな実りとなるかもしれない。同じ意味で、マーメイドステークスを勝って2度目の重賞勝ちとなったマキシマムドパリにも、今後の夢が大きくひろがった。浮足立つことなく、辛抱の美徳、根気の美徳をみせてくれた両馬が、実りの秋をどう迎えるか。他にも、先を見据えて根気よく、辛抱強く事をつづけ、第一歩を踏み出すものが出てくる。そのひとつでもいいからこの目で確かめることが出来たらと思う。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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