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勝ったサンライズノヴァの強さは、これは本物/ユニコーンS

  • 2017年06月19日(月) 18時00分


◆「東京ダート」の経験が手がかりになることが改めて浮かび上がった結果に

 4馬身差の独走を決めたのは、2番人気のサンライズノヴァ(父ゴールドアリュール)だった。

 その母ブライトサファイヤ(父サンダーガルチ)は、2007年のフェブラリーSを勝ったサンライズバッカス(父ヘネシー、母リアルサファイヤ)の2歳上の半姉になる。珍しいサンダーガルチ産駒なのは、1999年に1年間のリース契約で日本で供用されたときの産駒のため。サンダーガルチは注目を集めながらあまり活躍馬は送れなかったが、期待のリアルサファイヤの交配相手に選んだのは、やがて訪れるダート新時代を読んだ日高のヤナガワ牧場の見事な展望だった。

 つづいてリアルサファイヤの相手に選ばれたヘネシー(この馬も1年間のリース種牡馬)の産駒サンライズバッカスがいきなり成功したのにつづき、その前にサンダーガルチを配合して生まれた姉ブライトサファイアが、今度はサンライズノヴァの母になったのである。

 日高のヤナガワ牧場は、現在の日本のエース=キタサンブラックの生産牧場であり、コパノリッキーの生産牧場でもある。東京ではこの日、6レースの新馬でミヤビフィオーラ(中舘厩舎の牝馬)がゲートで頭を上げ、乗っていた大野騎手が顔面を強打し、ユニコーンSの1番人気リエノテソーロなどに騎乗できなくなった。乗り替わった津村騎手のミヤビフィオーラは、直線外から伸びかけて勝機かと思えた瞬間、左ムチに驚いて急斜行。落馬してしまった。

 人騒がせな馬がいたものだと、ミヤビフィオーラの血統をみたら、その祖母は中舘騎手が乗って引退レースの京都牝馬特別を勝ったシスティーナだった。代を経てミヤビフィオーラの生産牧場は異なるが、システィーナは日高のヤナガワ牧場の送った活躍牝馬の代表馬である。

 システィーナの孫がゲートで立ち上がりかけて大野拓弥騎手が騎乗できなくなり、内田博幸騎手に替わったのは人気のリエノテソーロ(父スペイツタウン)。素晴らしい状態で好位追走となったが、直線の競り合いで抜け出そうとしたものの伸びる余力がなかった。急な乗り替わりは、まったく関係ない(大野騎手からしてテン乗りだった)。

 快調教をみせながら、血統通りの「ダート巧者」ではないのか、と13番人気にとどまった芝1600mのNHKマイルCを1分32秒5の快時計で2着した能力は、素直に素晴らしい。それで今度は得意なことは間違いないダート戦。大きな期待を集めるのは当然である。しかし、少々きついペース追走になったとはいえ、案外の7着だった。1分37秒4の中身は「60秒0-37秒4」であり、坂もこなし、ハイペースもこなして2着した芝のNHKマイルCの1分32秒5「58秒5-34秒0」とは別馬の感さえある失速だった。

 レース後の陣営も大きなショックで、騎乗した内田騎手は「グッとくるものがなく、なんとなく…で終わってしまった」。武井調教師は「敗因は距離なのか…。休ませたあと、次はダートの短距離か、芝に戻すか…」と落胆を隠せなかった。体調には不安はなかったと思えるから、敗因を推測するのは難しいが、ダート得意は衆目一致でも、2歳10月のエーデルワイス賞(門別の稍重ダート1200m)の1分12秒8の快勝、12月の川崎の全日本2歳優駿(ダート不良1600m)の1分42秒8の快走に(とくに川崎ダート1600mの馬場差は大きいから)、歴代のエース級と互角の中身があったのかどうか、むずかしいところがあった。少なくとも川崎の時計は速くない。「ダート巧者のはずが→芝1600mの好時計」に幻惑され、期待の大きさが、過大評価になったかもしれない。芝のマイルを1分32秒5で乗り切り、ダートのマイルも男馬相手に速い時計で快走するなら、それは牝馬版「クロフネ」になってしまうではないか、という見方もあった。

 たぐいまれなスピード能力を持った牝馬であるのは間違いないだけに、オーバーホールしてぜひ立ち直って欲しいものである。昨年のNHKマイルCを1分32秒8で快勝のメジャーエンブレムは、そのあと復活することなくすでに引退したように、3歳の早い時期に、東京マイルを快時計で激走した馬のその後の不振はずっと以前から知られている。リエノテソーロ、その時勝ったアエロリットにはそんなことが当てはまらないことを願いたい。

 勝ったサンライズノヴァの強さは、これは本物。中団の外に位置した同馬は、3コーナー過ぎに「12秒3-12秒8-12秒7」とラップの落ちた個所でも鞍上の戸崎圭太騎手は自信満々。あえて動かず、メンバー中抜けて最速となった「35秒4」の爆発力につなげてみた。前2走は切れをなし崩しに使って勝ち切れなかったが、新馬の東京ダート1600mを時計の速い日とはいえ、新馬戦とすれば破格の上がり「36秒3」で楽勝の能力を、2度目の騎乗となった戸崎騎手はフルに引き出してみせた。

 昨年、1分35秒8で快勝した同じゴールドアリュール産駒のゴールドドリームは、今春のフェブラリーSを制している。今春、残念ながら急死した種牡馬ゴールドアリュールは、スマートファルコン、エスポワールシチーなど、すでに後継種牡馬が「ゴールドアリュール系」を築きはじめている。前出のコパノリッキー、ゴールドドリーム、エピカリス、そしてこのサンライズノヴァなど、後継種牡馬候補は多い。さらに残る世代からもエース級が出現するはずである。

 出負けしたハルクンノテソーロ(父ファスリエフ)は、4馬身も離されたから完敗には違いないが、ダートで後手を踏んだときの田辺裕信騎手はすごい。道中、ムダに動かない。さらにコースロスを最小限にとどめ、4コーナーから直線に向いてコースを決定すると、その馬の秘める最大級の切れを引き出してみせる。この最後方追走からの「タメた爆発力」発揮には、ベテラン横山典弘騎手に通じるところがある。とくに昨秋あたりから、田辺騎手の直線勝負は冴えている。

 東京ダート1600mに好走記録のあったサンライズノヴァ、ハルクンノテソーロ、さらに3着サンライズソア(父シンボリクリスエス)の好走が示すように、コース経験の乏しい馬がそろうこのレースでは、手がかりになるのは古馬のレース以上に「東京ダート」の経験であることが改めてはっきり浮かび上がった。だから、注目されながら凡走に終わったグループには東京ダート1600mの経験なしが非常に痛かったとすることができる。リエノテソーロも、サヴィサンオークランドウォーターマーズなども。

 JRAの競馬場でダート1600mが行われるコースは限られている。コーナー2回だけで直線の長いコースは、3歳馬にとって思われるより難しいコースなのである。まして芝からのスタートでもある。大半の馬が次走は1000万条件からの再出発になる。この日の東京9Rでは、ユニコーンSを除外された馬が2着、3着だった。今回負けた馬の評価を落とす必要はない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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