スマートフォン版へ

ファシグティプトン・ジュライ・イヤリングセール開催

  • 2017年06月28日(水) 12時00分


◆注目の新種牡馬の産駒がマーケットでどんな評価を受けるかを見る上でも、無視は出来ない市場

 JRHAセレクトセール2日目が行われる7月11日(火曜日)、アメリカのケンタッキー州で、ファシグティプトン・ジュライ・イヤリングセールが開催される。

 北半球で行われる主要な1歳市場としては、前日の10日に開催されるJRHAセレクトセール・1歳セッションに次ぐ第2弾となり、欧米を開催地とするマーケットとしては、今季最初の主要な1歳市場となるわけだ。市場の規模においても、マーケットとしての重要性においても、もはやセレクトセールの方が遥か上位にあり、その陰に隠れた存在になっているファシグティプトン・ジュライだが、今後の欧米1歳市場の推移を占い、なおかつ、注目の新種牡馬の産駒がマーケットでどんな評価を受けるかを見る上でも、無視は出来ない市場と言えそうだ。

 今年のカタログ記載馬は300頭。昨年が347頭だったのに比べると、大幅な減少となっている。実はファシグティプトン社は、9月10日に、「ターフ・ショーケース」と銘打った、芝向きと思われる馬たちを集めた新たな1歳馬セールを開催することを決めており、おそらくはそちらに廻る馬が相当数出てくることが、ジュライの上場馬が減った主たる要因と見られている。

 種牡馬別に見ると、イントゥミスチフとフェドビズが、それぞれ10頭ずつを送り込んで、最大勢力となっている。イントゥミスチフは、13年・14年とG1BCダートマイルを連覇したゴールデンセンツや、2歳時の昨年2つのG1を制し、今春にG1ケンタッキーダービーに駒を進めたプラクティカルジョークらを輩出している、実績ある種牡馬であるのに対し、フェドビズは、今年の1歳世代が初年度産駒となる新種牡馬である。

 これに続くのが、これも今年の1歳世代が初年度産駒となるカイロプリンス、12年の全米2歳牡馬チャンピオンで、今年の2歳が初年度産駒となるシャンハイボビー、そして、10年の全米2歳牡馬チャンピオンで、昨年3歳の初年度産駒からいきなりG1ケンタッキーダービー勝ち馬ナイクィストが出現したアンクルモーの3頭で、それぞれ9頭ずつを上場させている。

 フェドビス(その父ジャイアンツコーズウェイ)は現役時代、西海岸を拠点に2歳から5歳まで4シーズンにわたって19戦し、3つの重賞を含む6勝。4歳8月に当時はオールウェザーだったデルマーでG2パットオブライエンS(7F)を制した時に、1分21秒12というトラックレコードを樹立。更に5歳7月、同じくデルマーでG2サンディエゴH(AW8.5F)を制した際にも、1分41秒0というトラックレコードを樹立と、2度にわたって記録を更新したスピードが売り物の新種牡馬である。

 15年にケンタッキーのウィンスターファームで種牡馬入りし、初年度の種付け料は1万2500ドルであった。16年春に初年度産駒が生まれ、昨年秋に北米で開催された当歳市場には22頭の初年度産駒が上場され、このうち20頭が売却されて、平均価格は種付け料の5倍以上に相当する6万5200ドルだったから、マーケットの評価も上々だったと言えそうだ。

 カイロプリンス(その父パイオニアオヴザナイル)は、東海岸を拠点に2歳10月にデビュー。メイドン、G2ナシュアS(d8F)を連勝し、無敗の重賞制覇を果している。続くG2レムゼンS(d9F)は2着に敗れたものの、3歳初戦のG2ホーリーブルS(d8.5F)を快勝。この段階では、ケンタッキーダービーの最有力候補との呼び声も掛かったが、続くG1フロリダダービー(d9F)で4着に敗れると、故障を発症してケンタッキーダービーを回避。結局そのまま引退することになった。

 15年にケンタッキーのエアドリースタッドで種牡馬入りし、初年度の種付け料は1万ドルだった。そして、16年春に北米で開催された当歳市場には、24頭の初年度産駒が上場され、このうち20頭が平均価格8万7850ドルという、種付け価格の8倍以上という高値で購買されている。マーケットにおける高評価を反映し、今年の春は種付け料が1万5千ドルに上昇している。

 個別の馬で見れば、G1マザーグースS2着、G1フリゼッタS2着、G1BCジュヴェナイルフィリーズ3着などの実績を残したワンダーギャルの半弟にあたる上場番号69番の牡馬(父ティズナウ)、G1ヴォスバーグS勝ち馬ジョーキングの半妹にあたる上場番号120番の牝馬(父リーガルランソム)、母がG1テストS勝ち馬スワップフリッパルーという上場番号132番の牡馬(父ミッドナイトルート)、G1マザーグースS勝ち馬インクルードベティの半弟にあたる上場番号198番の牡馬(父プラウドシティズン)らが、血統的に注目を集めることになりそうだ。

 100万ドルを越えるような価格の馬は出そうにないが、どんなマーケットが展開されるのか、注目に値するセールと言えそうである。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング