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全日本馬場馬術3連覇の北原広之さんに、騎座の心得を教わりました!

  • 2017年07月04日(火) 18時00分
北原広之さん1

JRA馬事公苑所属・北原広之さんの「馬術講習会」のお話です




技・幹・根がしっかりしていると馬の推進力につながる


 夏競馬で、暑さもじめじめも吹っ飛ばしましょう!

早くも台風接近で大雨模様ですが皆さんのお住まいはいかがですか?先週末には地震もありちょっと不安な日々です。僕はマンションに住んでいますが結構ゆらりゆらりとブランコに乗ってるような感じで揺れるんですよ。揺れるほうがいいそうなんですが、気持ちが悪いですよー。

 7月に入り中京ではプロキオンS。福島では七夕賞。函館では函館記念が16日に行われますね。この時期に活躍する馬たちに注目するのも秋の重賞レースにつながってくるので是非チェックしてください。

 特に、プロキオンS(GIII、ダート1400m)には有力馬が出走。まずは、エイシンバッケンです。前走と同じ左回りコース。もともとすごい切れ味のある馬で折り合いに少し不安がありましたが、精神面が大きく成長し、コンスタントに力を出せるようになってきています。状態もさらに上向いています。

 ライバルは、カフジテイクでしょう。安定した末脚が武器になっていて、ドバイ遠征以来、順調に調整されています。そこへ絡んでくるのが清水久詞厩舎のアキトクレッセント。面白いレース展開になりそうです。

 新馬戦ではロードカナロア産駒が1日に2勝を挙げ、盛り上がってきました。この新馬を調教するのが調教助手や騎手の方たちですが、かなり手ごわい馬もいて苦労されています。

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 いつものように取材歩きをしているとスタンドの張り紙に目が止まりました。JRA馬事公苑所属の北原広之さんが乗馬苑で「馬術講習会」として、実技披露してくれるというので、参加しました!

 北原さんは、全日本馬場馬術選手権大会を3連覇されています。2010年には世界馬場馬術選手権日本代表になられた方です。

北原広之さん2

全日本馬場馬術選手権大会3連覇!世界選手権日本代表にもなられた北原広之さん


 調教師の方もたくさんお見えになっていて、助手の方など中心に100人くらい参加していました。僕もその中の一人だったんですが、目の前で実技指導をしていただいてとっても参考になり、乗馬で注意すべき個所が具体的にわかりました(できるかどうかはわかりませんが…)。

◆騎座って本当に必要なのか?

 マナーをきちんとしつけられている良馬が増えてきたから、騎乗面での技術の向上が必要になってきます。乗馬の基本は、まず座ることがとっても大切。馬上では動く馬に影響されないフィジカルと、馬のタイプを見極めることをその都度求められる扶助の組み合わせと、力加減が必要。それによって馬のメンタルや体勢まで大きく変化してきます。

 馬の動きにスムーズについていける乗り手と、馬が走りづらくなりそうなくらいに邪魔をしてしまう乗り手がいます。騎乗スタイルは、鐙の2ポイントだけで乗るか、騎座を加えた3ポイントで乗るかに分けられる。競馬関係者は騎座を加えた3ポイントで乗る必要がないとも思われますが、やはり正しく習得する必要があると思います。馬の動きを邪魔することなく、馬の反応を最大限に感じて調教するために、3ポイントの乗り方を考えてほしいと思います。

北原広之さん3

「馬の反応を最大限に感じて調教するために、3ポイントの乗り方を考えてほしい」


 正反動をしっかり受けて鞍に座る練習をしてきたと思いますが、こうして鐙に立ってバランスをとることを覚えていくことで、馬の動きを邪魔せずに楽に乗っていくことが身に付けられます。騎座を扶助の中心として乗っていくことが有効になります。

 騎座が安定し、馬の動きと同調して随伴できれば、馬にとって「人が自分と一緒に動いている」という認識になります。馬の動きに合わせてシートを前にスイングするように推進すれば、馬の動きをスムーズに誘導できるようになります。馬の背中に対して背筋をまっすぐ垂直に立て、騎座を構えて芯を作り、こぶしの操作と連携することによって、指示が明確になります。

 腕の拳が“技”、騎手の上半身が“幹”、幹を支える騎座と脚が“根”となる。しっかりとした根があり、幹がそびえたち、そこから馬の口につながっていく技が生まれるイメージを作っていきましょう。

北原広之さん4

「腕の拳が“技”、騎手の上半身が“幹”、幹を支える騎座と脚が“根”」


 馬の持っているエネルギーを馬体に充満させながら減速することによって、加速するためのパワーを温存しながら、ゴーサインで爆発させる準備を整えることができます。騎座扶助の効用が多岐に渡り、パワーを有効に使うことができます。

 正しい骨盤の構えは、骨盤を立てるようにまっすぐ垂直にし、脚部を馬の重心に沿うようにし、体全体に芯を通しながらもしなやかに柔軟性を持った構えです。体を点ではなく面で捉えます。

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 丁寧に馬の状態を見せながら説明をしてくれたのでとってもわかりやすく、馬の動きに合わせて動くことがいかに大切か。それによって馬の持つ力とパワーを引き出すことができるかが理解できたように思いました。

 分かっていてもできないのが現状でしたが、技・幹・根がしっかりしていると、推進力につながることが理解できました。馬を自由自在に操りしっかり座って、騎座の大切さを一つ一つ丁寧に見せながら指導してくれました。細かく色んなことを実技で見せながらの指導でした。続きはまたの機会にお知らせします。

 僕が中山グランドジャンプ(J・GI)を勝ったビッグテーストはとってもやんちゃで顔を横向きにして走る馬でしたが、自厩舎の先輩である松本達也助手がとっても丁寧に馬を作ってくれました。騎座がしっかり保たれていたんだと思います。いつしか横向きに走る癖が治っていました。馬場に出るとすぐにキャンターで走り出していた馬を、常歩(なみあし)で馬場を1周するくらいに、落ち着いた素直な馬に仕上げてくれました。そうすると馬場を眺めながら馬と会話する時間が生まれ、信頼関係を作ることができます。

 ファンの皆様にはあまり興味のないことだったかもしれませんが、パドックや調教VTRを見た時に上記に書いたようなことをチェックされるのも、馬券攻略のヒントになると思いますし、夏競馬の楽しみ方の一つです。ゆっくり観戦しながらそのあたりのチェックをして、プロのファンを目指してください。競馬場は、快適な癒しスポットになるでしょうね。

P.S. umajoカフェで缶バッチを作ったりして活躍中の阪上久美子さんの個展「LOVE HORSE」を見に行ってきました。競馬という枠を超えて馬の持つかわいさとたくましさを見事に描かれていました。残念ながら3日で終了しましたが、缶バッチが発売されていますので、ぜひ探してみてください。

つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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