スマートフォン版へ

友を選ばば書を読みて、六分の侠気、四分の熱

  • 2017年07月06日(木) 12時00分


◆競馬は人馬への思いが一体になれば、ゆるぎない

「言うは易く行うは難し」だが、友だちづき合いでも、侠気、つまり男気が重視される。与謝野鉄幹は、「友を選ばば書を読みて、六分の侠気、四分の熱」と歌っている。そこまでいかなくとも、侠気は三分ぐらいあった方がいいと古書には書かれているが、この侠気、友だちとのつき合いだけでなく、他に応用が利くのではないか。

 例えば、どれだけその馬に侠気を感じているか。理非の判断を超えて、一頭の馬に思い入れるということ、競馬なら、よくある。また、そうでなければ、そのレースに熱中できない。度が過ぎるのもよくないが、参加するなら、その三分ぐらいの気の入れ方はあった方が楽しい。これはレースを検討する際、大きな力になっている。くりかえし考えているうちに、最後の決め手になる侠気だから、出走馬の周辺事情を知るのが大切だ。

 ラジオNIKKEI賞を勝ったセダブリランテスには、その侠気を呼ぶ要素がいくつか報じられていた。つまり、気を引く出来事なのだが、元々関東期待のホープとして2014年にデビューした石川裕紀人騎手にとってデビュー4年目にして初重賞制覇の大きなチャンスになっていたこと。「期待を持って臨めます」と本人が言っていたと知れば、心は動く。それに、その馬セダブリランテスのこと、昨年12月のデビュー戦を勝ちながら骨折で長期休養を余儀なくされ、クラシックシーズンを棒に振っていた。復帰した新潟戦で1番人気に応えて2戦2勝、これなら肩入れしてもいいという気になったのも頷けたのだ。

 ブリランテスも応援するが、石川騎手に花を持たせたいの思いが強くなる。競馬は人馬への思いが一体になれば、ゆるぎない。レースはそうした多くの思いを背に受けた人馬が、自身の強い決意を見せつけるように積極的に動き、直線の短い福島を乗り切っていた。確実に良くなってセダブリランテスのこの次への期待は大きい。重賞を勝つのが少し遅かったと言う石川騎手ともども、今後も三分の侠気ぐらいは持ち続け、この人馬との交友は長続きさせたい。「言うは易く行うは難し」でも、これだけは別ものにしよう。三分の侠気を忘れずに。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング