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JDDの前哨戦としてのダービーシリーズ

  • 2017年07月11日(火) 18時00分


◆「喝っ!」とまでは言えないものの、ちょっと無理がある

 明日(12日)行われるジャパンダートダービー。3歳ダートのチャンピオンを決めるレースではあるが、エピカリスは海外遠征、リエノテソーロはユニコーンSで思わぬ敗戦と、この世代のダート路線を牽引してきた2頭が残念ながら不在となってしまった。ユニコーンSで強い勝ち方を見せたサンライズノヴァが人気になりそうだが、リゾネーターやローズプリンスダムに負けた経験もあり、JRA勢は勝ったり負けたりという混戦のメンバーとなった。

 対する地方勢は、東京ダービーの上位3頭が揃って出走。地元南関東勢は役者が揃ったが、他地区からの遠征は名古屋から2頭だけ。それも地元の東海ダービーは2、3着の馬で、南関東以外からは、今年リニューアルされたダービーシリーズの勝ち馬の出走はない。

 ダービーシリーズの前身、ダービーウイークのスタートは2006年。当初はダービーウイークを勝ってジャパンダートダービーへ出走という地方馬も何頭か見られたが、近年では中央馬との実力差もあり、残念ながら他地区からの出走はそう多くはない。

 今年から全国で8つのダービーがシリーズ化されたわけだが、その勝ち馬から1頭でも多くジャパンダートダービーに参戦してもらえるよう、今年からダービーシリーズの優勝馬がジャパンダートダービーに出走した場合、その馬主に100万円の奨励金を支給されるということが発表されていた。が、しかし、残念ながら(地元南関東以外は)その効果はなかったということになる。

 とはいえそれが失敗だったということではなく、今年だけを見て判断すべきものでもない。ダービーシリーズをさらに盛り上げるべく、こうした施策は積極的に行っていくべきと思う。

 さてここからが本題。先にも触れたとおり、ダービーシリーズは、その先のJpnI、ジャパンダートダービーへつながるというレースでもあり、『ダービーシリーズ2017』特設サイトの「ダービーシリーズとは?」のページにも、「ジャパンダートダービーに向けて、全国の3歳馬たちが鎬を削るダービーシリーズ2017にご期待下さい。」とある。ところが、そうは書いてあるものの、ダービーシリーズの勝ち馬がジャパンダートダービー出走へ向けて、どのような優遇があるのかは明記されていなかった。

 ジャパンダートダービーへ向けてということでは、ユニコーンSの1着馬、関東オークスの1着馬(いずれも地方所属馬に限る)、羽田盃の1着馬、東京ダービーの1、2着馬には、ジャパンダートダービーへの優先出走権が与えられるということは、南関東の要項として発表されていた。しかしそれ以外のダービーシリーズの勝ち馬について、昨年までのダービーウイーク同様、指定馬としての資格が得られるのかどうかについては、結局発表がなかった。

 念のため説明しておくと、「指定馬」もしくは「指定競走の勝ち馬」とは、優先出走権こそ得られないものの、「同一地区からの出走希望馬がいたときに、それらの馬よりも優先して出走馬として選定される」というもの。ダービーシリーズだけでなく、JBCでも同様に指定競走が設定されている。

 ちょっと前のことだが、ダービーシリーズについての文章を某所に書こうとしたところ、「ダービーシリーズからジャパンダートダービーへ」という概念はたしかにわかるものの、東京ダービーを除く各ダービーの勝ち馬が指定馬となるのかどうか、ダービーシリーズの特設サイトには明記がなく、結局そのことには触れることができなかった。

 後日、尋ねてみると、ダービーシリーズの初戦、佐賀の九州ダービー栄城賞(5月28日)が始まった時点で、ダービーシリーズの勝ち馬が指定馬となることを、すべての主催者から了解を得るのが間に合わなかったとのことのようだ。

 さらに言うと、ファンには直接関係ないことなのかもしれないが、今年新たに設定された100万円の奨励金のことも、『ダービーシリーズ2017』特設サイトに明記すべきではなかったか。

 結果的に南関東以外のダービーシリーズの勝ち馬はジャパンダートダービーに1頭も出走の申込みがなかったので問題にはならなかったが、2017年のダービーシリーズの勝ち馬が、果たしてジャパンダートダービーの指定馬だったのかどうか、記録としてはわからないままになってしまう。

 さらに、可能性としてはかなり低いが、問題となりそうなことがもうひとつ。現在、ジャパンダートダービーの出走枠は、JRAが7頭となり、JRA所属馬がフルに出走すれば、地方馬の枠は9頭。羽田盃の勝ち馬と東京ダービーの1、2着馬が重ならなかった場合、南関東所属馬では3頭が優先出走権を有することになる(ユニコーンS、関東オークスを地方馬が勝っていればさらに優先出走権は増える)。そして南関東以外のダービーシリーズの勝ち馬は最大で7頭。合計すると10頭で、地方馬の出走枠を超えてしまう。

 もちろん指定馬は優先出走権があるわけではないので、そのうちのどれかが除外対象になっても文句は言えない。しかし先にも触れたように、今年からダービーシリーズの勝ち馬がジャパンダートダービーに出走すれば100万円の奨励金が支給される。もしそれで除外されたとなれば、馬主としては「100万円くれるというからジャパンダートダービーに出ようとしたのに、出られないのかよ」と心証を悪くしないだろうか。たしかにそういう可能性は今のところ限りなくゼロに近いとは思うが。

「喝っ!」とまでは言えないものの、しくみとしてはちょっと無理がある。

 近年、地方馬と中央一線級の能力差があまりにも開いてしまったことが原因ではあるのだが、その溝を埋め、双方のトップホース同士が対戦する、真の意味での交流レースとして盛り上げようとするのは、なかなかに難しい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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