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海外1歳セールにアルマンゾル全弟やソウルスターリング近親など良血馬が登場

  • 2017年07月12日(水) 12時00分


◆全米リーディングサイヤーのタピット産駒は良血揃い

 8月7日と8日に北米ニューヨーク州で開催される「ファシグティプトン・サラトガ1歳セール」と、8月19日から21日まで仏国のドーヴィルで開催される「アルカナ・ドーヴィル1歳セール」の上場馬が出揃った。

 それぞれの国で生まれた最良の1歳馬たちが上場される上に、開催場所のサラトガとドーヴィルはいずれも有数のリゾート地として知られる街だけに、非常に華やかな雰囲気の中で行われる点でも、この2つの市場は似通っている。

「ファシグティプトン・サラトガ1歳セール」出身馬と言えば、エピカリスが無念の取り消しをした北米3歳3冠最終戦のG1ベルモントS(d12F)を制したタップリット(牡3、父タピット)が、一昨年のこのセールにて120万ドルで購買された馬だった。当セール出身馬によるベルモントS制覇は、過去10年でタップリットが5頭目だから、同競走と当市場の間には強い「ニューヨークつながり」が存在する。

 この他、現役最強古牝馬のソングバード(牝4、父メダグリアドロー)、2年前の北米3冠馬アメリカンフェイローらも「ファシグティプトン・サラトガ1歳セール」で購買された馬たちで、大物を輩出する市場としての伝統がしっかりと受け継がれている。

 日本では、昨年のJpn1全日本2歳優駿の勝ち馬で、今年の春にはG1NHKマイルCで2着となったリエノテソーロ(牝3、父スパイツタウン)が、一昨年のこのセールにて25万ドルで購買された馬であった。

 今年のカタログ記載馬は223頭。先月、ファシグティプトン・ジュライセールの展望をお届けした時にも書いたが、ファシグティプトン社は芝向きの馬を集めた「ザ・ターフ・ショーケース」という新しいセールを、9月10日にケンタッキーで開催することが決まっており、そちらに廻る馬が出ていることから、サラトガの上場馬は前年より10%ほど少なくなっている。

 種牡馬別に見ると、15年の全米フレッシュマンサイヤーチャンピオンのアンクルモーが、牡馬11頭、牝馬5頭の合計16頭を送り出し、最大勢力となっている。中でも、上場番号150番の母ブルヴィルベルの牡馬は、G1シガーマイル勝ち馬コネクトの半弟という良血で、購買者たちの視線をおおいに集めることになりそうだ。

 3年連続全米リーディングサイヤーの座にあるタピット産駒は、牡馬4頭、牝馬6頭の合計10頭がスタンバイしている。上場番号48番の牝馬は、母レディオヴフィフティがG1クレメント・L・ハーシュS勝ち馬。上場番号75番の牝馬は、母スイートルルがG1テストS勝ち馬。上場番号80番の母タップユアフィートの牡馬は、G1ジャストアゲイムSなど2つのG1を制しているダイヤモンドレラの半弟。そして上場番号226番の母レリシの牡馬は、G1ロデオドライヴS勝ち馬アヴェンジの半弟と、タピット産駒はさすがに良血揃いである。

 日本の競馬ファンの皆様には、リエノテソーロの半弟となる上場番号116番の母アキリーナの牡馬(父スーパーセイヴァー)の動向も、気になるところである。



◆フランスセールでソウルスターリング近親2頭がどんな評価を受けるのか

「アルカナ・ドーヴィル1歳セール」出身馬も、フランス国内だけでなく、広く欧州全域で活躍している。

 例えば、6月3日にエプソムで行われたG1英ダービーを制したウィングスオヴイーグルス(牡3、父プルモワ)は、一昨年のこのセールにて22万ユーロで購買された馬だった。仏国を代表するセリ会社のアルカナだが、出身馬が英国のダービーを勝つのはこれが初めてのことで、近年の上場馬の資質向上を象徴する出来事となっている。

 今年のG1仏ダービー勝ち馬ブラムト(牡3、父ラジサマン)もアルカナ出身馬で、アルカナは英仏ダービー連覇の快挙を達成したのだが、ブラムトが購買されたのは当セールではなく、同馬が当歳時に上場されたアルカナ12月ミックスセールだった。

 ドーヴィル1歳セール出身馬は、昨年の欧州チャンピオン・アルマンゾル(牡4、父ウートンバセット)が、2014年の当セールにて10万ユーロというお手頃価格で購買された馬である。同じく、2014年の当セールで購買されたのが、5月にシャンティーで行われたG1イスパーン賞を制したメクタール(牡4、父シーザスターズ)で、価格は30万ドルだった。

 今年のカタログ記載馬は334頭。前年の375頭に比べて、ここも10%ほど少ない頭数となっているが、品揃えの良さは目を見張るものとなっている。

 まずは、前述したウィングスオヴイーグルスやアルマンゾルを兄に持つ1歳馬がスタンバイしている。

 上場番号101番の母イゾルディーナの牝馬が、ウィングスオヴイーグルスの半妹で、父はキングマンに変わった。キングマンはこの世代が初年度産駒となる新種牡馬だが、現役時代は鋭い瞬発力を武器にG1サセックスSなどマイルG1を4勝した馬で、筆者がかねてから日本向きと睨んでいる種牡馬である。

 そして、上場番号143番の母ダルコーヴァの牡馬が、アルマンゾルの弟で、同馬は父がウートンバセットだから、昨年の欧州最強馬の全弟にあたるわけである。

 種牡馬別に見ると、注目のフランケル産駒が10頭スタンバイしている。中でも、上場番号57番の母ルーモアドの牡馬は、11年の欧州2歳チャンピオン・ダビルシムの半弟で、世界中から集まるバイヤーの注目を集めそうだ。

 フランスは、昨年の日本の2歳牝馬チャンピオンで、5月にオークスを制したソウルスターリングの母スタセリタが生まれた国である。今年の「ドーヴィル1歳セール」における上場番号73番、母ソイエの牝馬(父インヴィンシブルスピリット)は、母がスタセリタの5歳年下の全妹で、従って本馬はソウルスターリングのいとこにあたる。

 更に、上場番号60番の母サリコルネの牝馬(父ロペドヴェガ)もまた、母がスタセリタの3歳年下の半妹で、この馬もソウルスターリングのいとこにあたる。

 彼女等がマーケットでどんな評価を受けるか、市場の動向をフォローしていきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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