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セレクトセール2017

  • 2017年07月12日(水) 18時00分
セレクトセール初日の撮影風景

セレクトセール初日の撮影風景



次々に出てくる高額馬に振り回されるような忙しさを味わった


 すでに多くの媒体で報じられているように、今年のセレクトセールは、両日とも異例の売れ行きを示し、もはや単に驚いたなどという安易な表現では追いつかないくらいの強い衝撃を受けた。

 屋上屋を重ねるだけなので、結果についてはここで改めて詳細に触れずにおく。歴代二位の362番「イルーシヴウェーヴの2017」(父ディープインパクト、牡)の5億8000万円(税抜き)を筆頭に、2日間で億を超える落札馬が昨年の23頭から一気に9頭も増え、32頭に達した。

362番の記念撮影、近藤利一氏、大魔神佐々木氏の姿も

362番の記念撮影、近藤利一氏、大魔神佐々木氏の姿も

 これに象徴されるように、総じて高額落札馬が多く、写真撮影班として現場に居合わせた私などは、次々に出てくる高額馬に振り回されるような忙しさを味わった。

 高額馬ばかりではない。10日当歳セッションでは、今年初産駒の誕生した、キズナ、エピファネイア、ゴールドシップなどの二世たちが数多く上場されたことにより、それらにもまた注目が集まった。分厚い名簿を繰って、あらかじめ付箋を挟み、要チェック馬をピックアップしてみたところ、あっという間にその付箋が足りなくなった。話題の馬のオンパレードで、とてもチェックしきれないほどであった。

 セリは普通、開始当初は模様眺め気分が支配的で、日高のセリなどでは概してスロースタートである。番号が進むうちに会場内が少しずつ暖まって、その後徐々にヒートアップしてくるという流れだ。あたかも車のエンジンのように、暖気運転から始まるのだが、ここでは、初日の最初から、いきなり“エンジン全開”のフルスロットル状態であった。

 1番「ラルケットの2016」(父ルーラーシップ、牡)が5200万円。その後も、主取りになることなく、次々に4000万円台、5000万円台で落札されて行く。そして13番目に登場したのが「シルヴァースカヤの2016」(父ディープインパクト、牡)だ。

 ノーザンファーム生産のディープ牡馬となると、高額になる条件が揃っている。案の定、ここでさっそく2億6000万円という超高額まで競り上がった。

最初のミリオンホース13番落札場面

最初のミリオンホース13番落札場面

最初のミリオン13番立ち姿

最初のミリオン13番立ち姿

 通常の感覚では、これだけの高額馬が誕生すると、もうその日の仕事のかなりの部分は終わったかのような錯覚に陥るが、ここだけは違う。後にもどこまで価格が上昇するか予測できない上場馬がたくさん控えているからである。

 両日とも、ひたすらセリ会場内の一角のプレスセンターと立ち写真撮影場所を往復した。

会場内の一角に設けられたプレスセンター

会場内の一角に設けられたプレスセンター

 昨年までは、1頭撮ると次の馬まで余裕があったのだが、今年は立て続けにミリオンホースが誕生したために、セリ会場内に戻る間もなく次の馬が立ち写真場所にやってくるというようなこともしばしば起こった。

当歳セッションパレードリンク

当歳セッションパレードリンク

当歳セッション展示風景

当歳セッション展示風景

 基本的にはオフィシャルの白ベストを着用したカメラマンが全馬撮ることになっているのだが、撮影場所の混雑はだいたい落札価格と比例する。つまり、高額になればなるほどどこからかカメラを片手に取材陣が集まってきて、ズラリと人垣ができるのだ。

 そのピークは、冒頭で記した362番「イルーシヴウェーヴの2017」がセリ会場から出てきた時であった。2006年の「トゥザヴィクトリーの2006」(父キングカメハメハ、牝)以来の高額落札馬の誕生とあって、撮影場所も一気にヒートアップした。

歴代二位の高額馬362番の撮影風景

歴代二位の高額馬362番の撮影風景

362番の立ち姿

362番の立ち姿

 セレクトセールでは、立ち写真のみならず、落札者との記念撮影もまたセットになっていることがひじょうに多い。金額に関係なく、多くの購買者が会場から出てきて、つい数分前に落札した馬と対面し、カメラに収まるのである。一様に笑顔を浮かべ、愛馬の手綱を握る光景は、さながら後々のレースでの口取り写真の予行演習のようにも映る。日高のセリでもこうした光景がないわけではないが、ほぼ特定の購買者に限られる。だがセレクトセールではこの光景をかなりの数見たような気がする。

 日高から訪れた友人知人たちがみな一様に「ここにいると金銭感覚が狂ってしまう」とぼやくほど、高額落札馬が続出したセールであった。友人の1人も初日の1歳セッションに生産馬を上場し、1500万円で売却した。セレクトセールでは1500万円は最も安い価格帯の取引馬だが、「でも他の市場に出したらせいぜいこの半値くらいのものだと思うから、やはりここに連れてきて正解だったよ」と大変な喜びようであった。

 一方では、高額落札馬が相次いだことによって、セリに参加することを半ば諦めた購買者もいた。日高のセールでは有名なある大手バイヤーは、「新たな人がここに参入してきているので、我々の予算の範囲ではもう買えなくなった」とお手上げの様子であった。「競馬の賞金でペイさせるためにはちょっと価格が上がり過ぎていて手が出せない」というのである。「でも、お金を持った新たな層がここで高額馬を買ってくれているのも事実で、販売する側の中には絶対その恩恵を存分に受けている牧場も現にいるはず。そういう流れを見極めてうまく商売ができるとまだまだ日高の牧場でもやっていけるね」とも言うのであった。

 ここで一度狂った金銭感覚が来週の新ひだか町静内の北海道市場で開催されるセレクションセールで一気に現実に戻される。八戸、セレクトと好況が続いており、来週のセレクションにも多くの期待がかかる。とりわけ日高の生産者にとっては来週からいよいよ“ホームグラウンド”での戦いが始まる。

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岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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