◆レベルの高い、内容のあるレースだった
ものごとをしっかり見極め、最後の最後まで気を抜かず、キチンと止めを刺す、そんな七夕賞のゼーヴィントの勝ち方だった。もうひと息というところをいいかげんにせず、心をゆるめない、これはひとつの作法と言っていいだろう。
貴重な成果も、99パーセントまで来ていても残りの1パーセントで台無しにしてしまうことだってある。もう少しのところで、始めから無きに等しいことになってしまうのだから、心くばりが如何に大事か、目の前のレースはよく見せてくれるのだ。
それにしても福島の芝2000米は、スローペースになりにくい。小回りで4つのコーナーがあり、しかも直線が短いときているから、どの馬も早めに動こうとする。
予定どおり先頭に立ったマルターズアポジーは、実は、スタートして内にいるフェイマスエンドに絡まれてペースを速めていたのだった。武士沢騎手はそれは分かっていても、この馬は行くしかないと逃げていた。
前半の1000米通過馬が58秒0のハイペース。それなのに多くが早めに動く3角手前でマイネルフロストが並びかけてきたのだから、マルターズアポジーの惨敗は仕方なかった。むしろ、2着に残したマイネルフロストの柴田大知騎手の判断が、今回は正解だったということだ。
ゼーヴィントの戸崎圭太騎手は、最初から先行馬の後ろにと考えていたが、速いペースで動いて行くのに忙しかった。それでも、きっちり勝ち切るには自ら動いて捉えに行かなければならない。しかし、福島コースは安定して走るし、この馬との相性は抜群によく、迷うことなく追い続けていた。
この馬が福島でいいのは、ペースが速くなってあまり切れる脚のない脚質に願ってもない展開になっているからだろう。正に、今回もそんな戦況になっていた。
最後の最後まで気を抜かず、止めを刺したゼーヴィントは4歳馬、先を見すえて脚へのケアーをしながらの調整だったが、この勝ちタイムは立派だ。また、1秒以内に10頭がなだれ込んだのだから、レベルの高い、内容のあるレースだった。だからこそ、勝ち馬のこの先が楽しみなのだ。