◆波乱の最大の要因は馬場コンディションか 近年、もっとも難しい結果の多い波乱重賞の伝統はストレートに受け継がれた。それどころか、「馬連」も、「ワイド14-15」も、「馬単」も、「3連複」も、「3連単」も、函館記念史上最高の払い戻し金額だった。
あくまで波乱の目安にすぎないが、レース検討で「7番人気〜13番人気の穴馬」が、最近10年間の馬券に絡む馬の半数以上に達しているなどと強調したら、ホントに7番人気の
ヤマカツライデンが粘り、繰り返される穴馬よりもっと人気のない14番人気の
タマモベストプレイが差し返すように2着に台頭、波乱の函館記念の伝統は見事に守られた。
最初から難しい結果が予測されていたところに、予報を上回る雨の影響が加わり、芝は午後になると「重馬場」。そのわりにレース全体の流れは「前半60秒6-後半60秒6」=2分01秒2。数字の上ではきれいな平均ペースになった。しかし、切れ味を生かしたいタイプの「差し=追い込み」の利きにくい馬場コンディションになったのが、大波乱の最大の原因か。
勝った6歳馬
ルミナスウォリアー(父メイショウサムソン)は、騎乗停止明けの柴山雄一騎手の以前とはひと味異なる、強気で、絶妙な好騎乗が非常に大きかったが、詰めの甘さをカバーするために洋芝の函館記念を選んだ陣営のレース選択もまさにドンピシャだったろう。
渋馬場の経験はなかったが、メイショウサムソン(その父オペラハウス)産駒ならタフな芝コンディションが合わないわけはない。これに柴山騎手の積極策がプラスとなり、ちょっと足りないいつものルミナスウォリアーとは勝負どころからの行きっぷりが違った。絶好の仕上げにより、これで休み明け【3-3-0-0】である。ムリに巴賞をたたき台にしないステップも大正解だった。
現2歳世代を入れるとすでに6世代の産駒がデビューしている種牡馬メイショウサムソンにとって、デンコウアンジュ(アルテミスS)につづく重賞2勝目。これではあまりに物足りないのは確かだが、ルミナスウォリアーのように、しだいにパワーアップして5歳になってついにオープン入りし、6歳時に初重賞制覇する馬が出現したのは素晴らしいことである。オペラハウスの父系は典型的な欧州系なので遅咲きなどということは全然ないが、大事に適クラ、合ったコースのレースを選ぶなら、底力あふれるタフなタイプに成長することがルミナスウォリアーによって示されたのである。周期としてヨーロッパ系の種牡馬が見直されているところでもあり、交配数の減っていたメイショウサムソンの評価上昇につながるかもしれない。
7歳タマモベストプレイ(父フジキセキ)の台頭には、みんな決して「フロックではない」の思いが重なったから、買い切れなかったファンは悔しいところがある。本当は2000m級のほうが馬自身に合っているはずだが、しかし、あまりにも3000m級のレースに慣れ過ぎてしまっている。久しぶりの2000m級のレースでは、「たぶん流れに乗れないだろう」とみんな考えた。ところが、予想外の重馬場となりこのペースだから先行できてしまったのである。重馬場の巧拙ではなく、タフなレースに慣れている強みが、ゴール寸前の差し返すような台頭につながった。
勝ち馬もそうだが、タマモベストプレイも、さらには上位に食い込んだ馬に共通するのは、今回の内容が「次のレースに生かされる(反映する)」とは思えないところが難しい。6歳以上のベテラン馬同士の「1着、2着」は、2011年の「8歳-10歳-8歳」のワンツースリーを含め、この10年で5回目である。といって、秋を展望できるような力関係にはない。「ベテラン侮れず」は大きな教訓になっても、次走でルミナスウォリアー、タマモベストプレイがまたまた快走する可能性は低いだろう。サマー2000シリーズの有力馬となったルミナスウォリアーの新潟記念(予定)は期待したいが、この函館記念のような結果は次に結びつけにくいところが大きく、この次のレースまで難しくなる。あと一歩で、今年も2着に食い込みそうだった7歳
ケイティープライド(父ディープインパクト)も同じ。
3歳
サトノアレス(父ディープインパクト)は、1番人気に支持されて6着。おそらく得手ではないはずのこの日の馬場で、6着に押し上げたのは悪くないとすべきなのか。それとも、3歳とはいいながら、巴賞が同時期の他の条件戦と比較しあまりに平凡だったから、引き続き54キロの軽いハンデが妥当とされ、実際に勝ち負けとはあまり関係なかった。もう2歳時のG1(これも著しくレベルが低かった)を忘れたほうがいいのか、そろそろ難しい判断が求められている。
3歳以上のレースになると、別定戦の負担重量では2歳G1の記録はカウントされないのがふつうであり、サトノアレスにさすがG1馬という評価がもどるのは、グレードレースで快走してからのことだろう。
一旦は2着確保かとみえた3番人気の
アングライフェン(父ステイゴールド)も、こちらも巴賞2着ではあったが、55キロと負担重量が軽くなりながらの4着止まりだった。今年の場合、巴賞はとても洋芝とは思えない高速馬場のわりにレースレベルに疑問があった。サトノアレス、アングライフェン(1キロ減)、7着
ナリタハリケーン(2キロ減)は、「近年、巴賞組は日程のうえから有利ではない」とされるのとはちょっと理由が違い、そろって善戦止まりに終わったあたり、やはりレースレベルの問題だったように思える。