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波乱必至のハンデ戦は珍しく順当な結果だった/中京記念

  • 2017年07月24日(月) 18時00分


◆次走の敵は「人気」か

 この時期の1600mに移って過去5回、難しい馬場状態が多いため、これまで上位3番人気までに支持された計15頭の成績は【0-0-2-13】という波乱必至のハンデ戦だった。

 もちろん今年も簡単な結果ではなかったが、上位5着までに入線した馬はみんな5番人気以内の人気馬であり、4着した牝馬アスカビレンの負担重量54キロを、牡馬のそれに換算し56キロ以上に相当と考えるなら、上位5頭はみんな56キロ以上で、かつ、支持率の高い馬ばかり。珍しくほぼ順当な結果だったことになる。

 1番人気ブラックムーン(父アドマイヤムーン)が3着にとどまったため、2000m当時から通算し中京記念の1番人気馬は、継続中の記録として断然1位の18連敗【0-1-3-14】となった。毎年、中京の1600mに好走例のない馬が大半の組み合わせになる重賞であり、今年も、中京芝1600mを勝った記録があるのは、ウインガニオンピークトラムの2頭だけだった。かつて、「1番人気馬26連敗」の記録を誇りのひとつにしていた七夕賞ではないが、こういう記録は受けつがれたほうが愉快な一面もある。

 勝った5歳牡馬ウインガニオン(父ステイゴールド)は、これで8勝目(3歳時に2連勝、4歳時に3連勝、そして5歳時に3連勝)となったが、惜敗の多かった父ステイゴールドとはまったく逆に、2着など1回もない。3着も2歳時に1回あるだけで通算【8-0-1-13】。すがすがしい先行一手型であり、全8勝のなかに、1番〜2番人気は1回もない。ここまで22戦、1番人気に支持されたことは1回、2番人気に支持されたことも1回あるが、「12着と14着」だった。

 初重賞制覇にすっかり気を良くした西園調教師=津村騎手のコンビは、サマーマイルシリーズチャンピオンを目標に8月13日の「関屋記念1600m」出走を予定している。全8勝のうち7勝までが得意の夏の「6〜8月」。マイル戦は10戦5勝。距離も季節も、谷川岳Sを勝っているコースも大丈夫だが、敵は「人気」か。最近は先行一手だけに、人気の中心になるとライバルの格好の目標になる死角が生じる。

 距離1400mも含め、全8勝の上がり3ハロンベスト2は「33秒9と、33秒7」。1600mの最高勝ちタイムは今回の「1分33秒2」。この数字は外回り新潟の1600mとしてはやや物足りないだけに、逆にウインガニオンには、また「人気の中心にはならないかも…」の期待がふくらむ。

 タフなことで定評のあるステイゴールド産駒。母方も文句なしにタフな血を伝える日本を代表する牝系のひとつ「マンナから輸入牝馬フラストレート(1900年)」にさかのぼる伝統のファミリーであり、ウインガニオンの全兄シルクメビウス(JRA→公営)は、9歳まで走ってダート戦を中心に【8-3-3-14】。3つのダート重賞を勝っている。関屋記念は、発表は良馬場でもみんな内を避けたような、今回と同じようなちょっと渋り気味の芝の方が有利か。

 2着の5歳牡馬グランシルク(父ステイゴールド)は、これで通算21戦【4-6-5-6】となった。こちらはウインガニオンと同じステイゴールド産駒でも、まるで4〜6歳時(現表記)の父を連想させるかのように、最近は2着、3着の連続。これで、勝てなくても堅実に2着〜5着の掲示板確保は13回目となった。案外、あと一歩で1着という惜しい2着はなく、2〜3着争いでは勝負強いから、「2着と、3着にマークする」巧妙な馬券ファン向きになった印象があったり、さらには、その狙いは重賞ではなく「3着、3着、6着、2着、2着」のオープン特別にある、などとするファンもいたりする。実は、まだオープンを勝ったことのない馬なのである。7歳時にとうとう本物になり、G1〜G2を3勝もした父ステイゴールドの本当の良さが受けつがれていることを期待したい。

 人気の中心になった同じ5歳牡馬ブラックムーンは、太め残りの印象こそなかったが、夏場に前走比10キロ増は心もち立派すぎたかもしれない。前半、後方の位置取りになるのはいつものことだが、今回は馬場を気にしたのか行き脚がつかず、気合をつけながらの最後方追走になってしまった。「下がゆるいためか、前回とはちがった(M.デムーロ)」。いかにも残念そうなレース後のコメントがあった。父アドマイヤムーン、母の父ジェネラスからくる印象は、今回の実質稍重程度の芝は平気と思えたが、鋭さが最大の持ち味だけに柔らかい馬場は合わなかったのだろう。

 直線、ウインガニオンと同じように内ラチ沿いに入ったが、津村騎手のウインガニオンはレース前から狙っていた強気な作戦通りの、ファインプレー。一方、デムーロ騎手のブラックムーンはちょっと苦し紛れだった。地力で2着確保か、とみえたシーンもあったが本来の追い込みではない。負けはしたが、追い込み一手型が馬場を気にしてしまったと考えれば、中身そのものは悪くはない。すぐに巻き返したい。

 4着の5歳牝馬アスカビレン(父ブラックタイド)、5着だった5歳牡馬ダノンリバティ(父キングカメハメハ)は、ハンデ、芝コンディション、ローテーションを考えると凡走したわけではなく、ともに評価通りだったのだから、次走こそ真価発揮としたい。とくにダノンリバティは、最終追い切りで素晴らしい時計を出して仕上がっていたが、本来のストライドはもっと鋭い。完調になるのはこの次ではないかと思えた。復活を模索するワンアンドオンリー(父ハーツクライ)は、ひさしぶりに長距離戦とは異なる流れを経験したことで、気力を取りもどせるだろうか。58キロでいきなりマイルを1分33秒そこそこで乗り切れというのはムリだが、これが契機にはなりえる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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