スマートフォン版へ

ディープインパクト×アゼリの最高傑作シルヴァンシャー

  • 2017年07月26日(水) 12時00分
キャットタング(牝 栗東・音無秀孝 父Tapit、母Wile Cat)
 キングシレニアS(英G3・AW6f)を勝ったShumoos(父Distorted Humor)の半妹にあたる。母Wile Catは不出走ながらCat Fighter(04年ラカナダS-米G3)の全妹にあたり、2代母Strategic ManeuverはスピナウェイS(米G1・ダ6f)、メイトロンS(米G1・ダ7f)など4つの重賞を制した名牝。父TapitはA.P.Indy系のトップサイアーで、14年から3年連続で北米リーディングサイアーの座につき、種付料30万ドルは北米ナンバーワン。日本ではフェブラリーS(GI)を勝ったテスタマッタ、UAEダービー(首G2)を制したほかベルモントS(米G1)で3着と健闘したラニ、全日本2歳優駿(Jpn1)2着のタップザット、根岸S(GIII)2着のタールタン、UAEダービー(首G2)3着のゴールデンバローズなどを出している。本馬と同じく母方にStorm Catを持つTapit産駒には、Hansen(11年BCジュヴェナイル-米G1)、Careless Jewel(09年アラバマS-米G1)、Sweet Loretta(16年スピナウェイS-米G1)、テルアケリー(10年デビュタントS-米G1)などがいる。ダート向きのマイラー。

クリームヒルト(牝 美浦・二ノ宮敬宇 父ノヴェリスト、母クロフォード)
 母クロフォードは新馬戦(芝1200m)を快勝したあと新潟2歳S(GIII・芝1600m)に臨み3着と健闘した。父ノヴェリストは現2歳世代が初年度となる新種牡馬。ドイツ血統のドイツ調教馬で、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)を5馬身差でレコード勝ち(2分24秒60)するなど4ヵ国のG1を制覇した。Blandfordにさかのぼる異色の父系で、全体の血統も異系色が強く、基本的には晩成型の中長距離タイプだろうと思われていたが、初年度産駒は先週時点で3頭が勝ち上がり、意外なほど早くから動けている。勝ったヴァイザー、アントルシャ、ニシノベースマンは、いずれも母にサンデーサイレンスとRaise a Nativeをはじめとするアメリカのスピード血統を抱えており、そうした血を入れることが2歳戦から動ける産駒の共通点といえる。本馬はRaise a Nativeこそ持たないが、母にスピード豊かなアメリカ血統とサンデーサイレンスを抱えているので悪くない。芝向きのマイラー。

シルヴァンシャー(牡 栗東・池江泰寿 父ディープインパクト、母アゼリ)
 ロイカバード(16年京都新聞杯-GII・3着、16年きさらぎ賞-GIII・3着)、アドマイヤアゼリ(現4戦1勝)の全弟。母アゼリは現役時代アメリカで24戦17勝、ブリーダーズCディスタフ(米G1)などG1を11勝した女傑で、米年度代表馬に選ばれただけでなく、すでに名誉の殿堂入りも果たしている。09年に米キーンランドのセールで吉田勝己氏が225万ドル(約2億225万円)で落札し、日本に連れてきた。アメリカ時代にWine Princess(13年フォールズシティH-米G2、12年モンマスオークス-米G3)を出しており繁殖牝馬としてもまずまずの成績だ。日本における初子の持込馬アメリ(父Distorted Humor)はダートで3勝を挙げた。つまり、デビューした子はすべて勝ち上がっていることになる。本馬の父はディープインパクト。その最もポピュラーな成功パターンであるLyphardクロスを持ち、Mr.Prospectorやトライマイベストが入るパターンも悪くない。アゼリの子のなかでは過去最高のデキ……との評判が聞こえてくるので楽しみだ。芝向きの中距離タイプ。

ブラックジルベルト(牡 栗東・安田隆行 父ノヴェリスト、母ラッシュライフ)
 母ラッシュライフ(父サクラバクシンオー)は、母方にNijinskyとチャイナロックを併せ持つ好配合馬。サクラバクシンオーはNijinsky、チャイナロックの双方と相性がよく、ラッシュライフには二重のニックスが施されていることになる。現役時代に重賞こそ勝てなかったものの、函館2歳S(GIII)とファンタジーS(GIII)で2着となっている。繁殖牝馬として成功し、新潟記念(GIII)を勝ったアデイインザライフ(父ディープインパクト)を産んでいる。本馬の父は新種牡馬ノヴェリスト。現役時代にキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)を5馬身差でレコード勝ち(2分24秒60)するなど欧州2400m路線で活躍した馬なので、基本的には晩成型の中長距離タイプだと思われるが、初年度産駒は先週時点で3頭が勝ち上がり、いい意味で予想を裏切っている。母方にスピードが欲しいタイプの種牡馬なので、母の父にスプリント王サクラバクシンオーを持つ本馬の配合は好ましい。マルゼンスキーが入ってNijinskyクロスが生じるのも悪くない。芝向きのマイラー。

ラッキーライラック(牝 栗東・松永幹夫 父オルフェーヴル、母ライラックスアンドレース)
 母ライラックスアンドレースは現役時代にアメリカで9戦3勝。アシュランドS(米G1・ダ8.5f)を制した。3代母ステラマドリッドの牝系はこのところ活発に勢力を広げており、NHKマイルC(GI)、マイルCS(GI)など6つの重賞を制したミッキーアイル、NHKマイルC(GI)を制したアエロリットなどが出ている。5代母My Bupersの一族にはハーツクライがいるほか、女傑ジェンティルドンナはMy Bupersの息子リファーズスペシャルを2代母の父に持っている。父オルフェーヴルは初年度産駒の現2歳世代がデビューし、現時点で8頭中1頭が勝ち上がっている。晩成型の中長距離タイプで、いずれクラシック路線に乗る大物も現れるはずだ。母方にスピードが欲しいので、アメリカ血統で固められたライラックスアンドレースは好ましい。母の父Flower AlleyはMr.Prospector 3×3で、母はその父Raise a Native 5・5×4。こうしたアメリカ血統で固められているので、Flower Alleyが持つSadler's Wellsも活きてくるだろう(エレクトロアート≒Sadler's Wells 3×5が生じる)。芝向きの中距離タイプ。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング