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日本より激しい!?欧米のフレッシュマンサイヤーランキング

  • 2017年08月02日(水) 12時00分


◆現時点で一歩リードの欧米新種牡馬とは?

 ヨーロッパではキングジョージが終わり、アメリカでは既にサラトガやデルマーの夏開催がスタートしている。雰囲気的には、シーズンの折り返し点を過ぎた感があり、後半戦モードが色濃くなっている。
 
 この機会に、JRAではロードカナロアがロケットダッシュを決めて首位を走るフレッシュマンサイヤーランキングが、欧米ではどのように展開されているかをご紹介したい。
 
 ヨーロッパのフレッシュマンサイヤーランキングで、勝ち馬数の部門でも収得賞金の部門でも首位を走っている(7月末現在)のが、ソサエティロック(父ロックオヴジブラルタル)だ。
 
 ニューマーケットのジェームス・ファンショウ厩舎からデビューし、2歳9月にニューマーケットで行われたタタソールズのボーナスレース(芝6F)で勝利を挙げるなど、早くから短距離戦で活躍したのがソサエティロックだ。

 3歳6月にG1ゴールデンジュビリーS(芝6F)で2着となった後、4歳6月にG1ゴールデンジュビリーS(芝6F)を制し、G1で重賞初制覇。5歳9月にはG1スプリントC(芝6F)に優勝。そして6歳時にも、G1ダイヤモンドジュビリーS(芝6F)2着、G1ジュライC(芝6F)2着の実績を残すなど、トップスプリンターとして息の長い活躍を見せた馬だった。
 
 14年に愛国のタリーホースタッドで種牡馬入りし、初年度産駒が今年2歳を迎えたわけだが、ここまで43頭がデビューして13頭が勝ち上がり、このうちの1頭であるアンフォーチュネートリー(牡2)が、7月23日にメゾンラフィットで行われたG2ロベールパパン賞(芝1100m)を制し、既に重賞勝ち馬の父となっている。
 
 前述したように、ソサエティロックは古馬になっても活躍を続けた馬で、産駒からは年齢を重ねて強くなる馬も出ることが予測されており、とても楽しみな若手種牡馬が出てきたと、本来であれば喜ぶべきところなのだが、実は非常に残念なことながら、ソサエティロックは16年5月に蹄葉炎のため亡くなっており、今年の当歳を含めてわずか3世代しか産駒を残せなかった。遺児たちの中から、後継馬が現れることを祈りたい。
 
 ヨーロッパのフレッシュマンサイヤーでもう1頭、大きな注目を集めているのがダビルシム(父ハットトリック)である。
 
 ケンタッキーで種牡馬入りしたハットトリックを受胎した牝馬ルーモアドがフランスに渡り、09年2月にフランスで産んだ馬がダビルシムだ。クリストフ・フェルラン厩舎からデビューした同馬は2歳時、5戦して、G1モルニー賞(芝1200m)、G1ジャンルクラガルデル賞(芝1400m)など3つの重賞を含む無敗の5連勝をマーク。欧州2歳チャンピオンの座に輝いている。
 
 3歳春はちぐはぐな競馬で2連敗した後、脚部不安で戦線を離脱。復帰することなく、14年にドイツで種牡馬入り。16年からフランスに繋養場所が移されている。

 初年度産駒が今年2歳となったわけだが、ここまでデビューした22頭のうち、実に10頭が勝ち馬となり、45.45%という極めて優秀な勝ち上がり率をキープしていることが、関係者の間で話題となっている。そして、勝ち馬の1頭が、ロイヤルアスコットのG3オルバニーS(芝6F)を含めて3戦3勝の成績を残しているディファレントリーグ(牝2)で、同馬の快進撃がどこまで続くかにも注目が集まっている。
 
 3歳以降の成績がないダビルシムだが、その父ハットトリックはデビューが3歳の5月と、むしろ遅咲きだった馬で、4歳秋に本格化してG1マイルCSやG1香港マイルを制している。ダビルシム産駒の中には、時間をかけて良くなる子もいるであろうし、サンデーサイレンス系だけに、日本の競馬にも合う仔を出すことが期待できる若手種牡馬と言えそうだ。
 
 アメリカに目を転じると、出走頭数、勝ち馬数、収得賞金の全ての部門でフレッシュマンサイヤーランキングのトップに立っている(7月末現在)のが、オーバーアナライズ(父ディキシーユニオン)だ。

 トッド・プレッチャー厩舎からデビューし、2歳時は5戦し、G2フューチュリティS(d6F)、G2レムゼンS(d9F)という2重賞を含む3勝。そして、3歳4月にG1アーカンソーダービー(d9F)を制し、待望のG1初制覇を果している。しかし、G1ケンタッキーダービー(d10F)11着、G1ベルモントS(d12F)7着と、3冠戦線では振るわず、秋には距離の短い路線に戻ったものの勝ち星は挙げられず、3歳一杯で現役を退いている。
 
 14年にケンタッキーのウィンスターファームで種牡馬入り。初年度産駒が今年2歳となって、北米ではここまで26頭がデビューして9頭が勝ち上がっている他、メキシコでも1頭勝ち馬が出ていることが確認されている。まだ重賞勝ち馬は出ていないが、7月22日にサラトガで行われたG3サンフォードS(d6F)で、産駒のサイコアナライズが3着に入っている。
 
 ヨーロッパで言えば、12年の英国2冠馬キャメロット、12年の欧州2歳チャンピオン・ドーンアプローチ、13年の古馬チャンピオン・デクレラーションオヴウォー、アメリカならば、11年のケンタッキーダービー馬アニマルキングダム、13年のケンタッキーダービー馬オーブ、12年の全米2歳チャンピオン・シャンハイボビーらが、初年度産駒が今年2歳となっている大物たちで、シーズン後半の競馬で彼らの産駒がどこまで巻き返してくるか、あるいは、鳴りを潜めたままで終わるのか、注視していきたいと思う。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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